未知に挑む越境に、AIが最強パートナーなワケ
「越境体験の質が、AIによって変わってきている」。
一見、まったく接点がなさそうな「AI」と「越境学習」。しかしいま、「レンタル移籍」の現場では明らかな変化が起きています。未知の環境に挑むとき、「わからないから動けない」状態から、「AIを活用して一定の仮説を素早く立てることで、行動できる」状態にシフトしているのです。本記事では、レンタル移籍者のメンターであり、企業向けにバイブコーディング研修を手がけているTEKION Group CEOの泉水亮介さんと、ローンディール・大川との対談から、「越境 × AI」がもたらす行動変容の正体を探ります。
※ レンタル移籍とは・・・大企業の人材が半年から1年程度ベンチャー企業で働き、価値創造や事業開発に取り組む仕組み。
※バイブコーディング・・・コードを書くことなく自然言語でAIと会話していくことで、アプリケーション開発やシステム構築ができる新しい開発手法。プログラミング知識不要のため、非エンジニアでもスムーズに開発に参画することができる。
目次
AIがあるから、安心して越境・チャレンジができる
ーー今回は、越境とAIの関係について伺っていきます。いきなり本題ですが、AIと越境、何か関連はあるのでしょうか。
大川:めちゃくちゃあると思います。
ここ1年ほどのレンタル移籍した人を見ていると、ベンチャー企業で未知の環境に挑むとき、「AIを土台にチャレンジする世代になってきたな」と感じます。やったことないこと、知らないことでも、AIに聞けばある程度情報を教えてくれるため、仮説を持った状態でチャレンジできる環境ができた。その先のチャレンジの質は、やはり高いです。
「AI登場以前のチャレンジの仕方ってどうだったんだろう?」と思うくらい、AIによって得られる経験密度も上がっていると感じています。

早稲田大学大学院にて機械工学を専攻後、富士ゼロックスにSEとして入社。SOL営業、新規事業開発、人材開発など企業内での越境を経験。社外では、約50社の大企業若手有志1000名を巻き込んだ任意団体「ONE JAPAN」の共同発起人/副代表として、挑戦する個人の覚醒、組織風土変革、価値共創に挑んだ。それらを通じて人の行動の起点となる「WILL(意志)」の重要性を体感し、「越境」の可能性に共鳴したことから、2018年、ローンディールに最高顧客責任者(CCO)として参画し、2024年には「WILL-ACTION Lab.」を設立。2025年、代表取締役就任。また、WILL-ACTION Lab.の所長としても、「意志ある行動」を電動アシストする三人娘の父。国際コーチング連盟認定コーチ/中小企業診断士。
泉水:共感します。AIって、“呼んだらいつでも来てくれる家庭教師”みたいなもの。移籍者にとっても、そのサポートがあるとないとでは、全然違うと思います。
僕自身、これまでのキャリアでマーケティングやウェブサイト制作をやったことはありませんでしたが、今はAIを活用して自分でできている。AIを通じて僕自身のできることが広がっているんですよね。
新しいことに臨むマインドも「やったことないから誰かに頼もう」ではなくて、「たぶんできるから自分でやってみるか!」と、一歩目の踏み出し方が変わりました。
レンタル移籍者も、ベンチャー企業では守備範囲を広く持つことが求められ、経験のない業務にアサインされる場面がほとんどだと思います。右も左もわからないと、一歩目を踏み出すハードルは高いけれど、そこに「AIというサポーター」がいるだけで、かなり踏み出しやすくなるのでは。
僕自身もメンターとして、レンタル移籍をする方のメンタリングを担当していますが、少し前は「とりあえず最初の3か月はがむしゃらがんばれ!」という声かけだったのが、最近は「とりあえず、AIを使って作ってみたら?」と行動を促す声かけに変わってきました。

武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 Vibe Coding研究員 /株式会社CyberneX CSO 1990年生まれ。新卒で入社した富士ゼロックス株式会社を退職後、2016年より紛失防止IoTスタートアップのMAMORIO株式会社に参画し取締役COOに就任。同社 では事業企画、提携、広報、ブランディングまで幅広い領域を管掌。 2020年からは株式会社TEKION Groupを創業し、SUNDREDでのCBDOやCyberneXのCSOなど、スタートアップ経験を活かした活動を行う。2022年よりAIを活用したVibe Coding に取り組み、現在では日本における最初の大学単位認定講義を持ち、経営者や企業において非エンジニアに特化したVibe Codingスキルの活用を推進。Vibe Coder Bootcampを主催。趣味はタコスと車。
ーー未知な環境でも「まず動いてみよう」という決断がしやすくなっている、と。未知の環境で「AIを使わざるを得ない」という場面も多いかもしれません。そういう点でも相性が良いと言えそうですね。
大川:AIを活用し始めて、移籍者は行動量が圧倒的に増えたと思います。未知の環境でわからないことだらけだと、悩み葛藤するはず。それもすごく大事だけど、何もせずただ葛藤しているよりはAIを使ってどんどん仮説を作り、動いた方がトライアンドエラーの回数を増やせます。AI登場以後、この回転数は圧倒的に増えたんじゃないかと思います。
泉水:「まずインプットしてからアウトプット」ではなく、「走りながらアウトプットする」が基本になってきましたよね。それまでは「あれがないとできない」「これも勉強しないとわからない…」と躊躇していたことをAIが思考のガイドをし、手を動かしてくれる環境が整ってきた。「やるかやらないか」だけの世界に変わりましたよね。
大川:どんな環境に置かれてもまずは行動してみよう、自分なりにやってみよう、と走り出しがスピーディになる。この点で、レンタル移籍とAIの相性はすごく良いと感じています。
ーー行動の方法や量、スピードに加え、「質」にも影響がありそうです。
大川:AIを使えば、その場でアウトプットを作りながら議論できる。だから議論が空中戦にならず、常に成果物をベースに会話が進み、仮説を立てて物事を動かす速度が上がるんです。
「AIは定型化された仕事と相性が良いから、業務効率化に使おう」といったイメージが一般的ですが、そうではなく“行動を生むためのツール”になっているわけです。
つまり、ツールの使い方を学ぶのではなく、ビジネスの文脈の中で使いこなすのが大事。ベンチャーでは、自社では導入されていないAIツールも当たり前に使用されていますし、レンタル移籍を通じて、事業の中で最適な活用方法を、スピーディーに習得することができます。
WILLの探求にも、CANの加速にもAIが伴走
ーー行動を加速させるという意味では、個人の「WILL」の実現とも相性が良さそうです。ローンディールでは、個人の「WILL」を見つけ、それを実現するための「CAN」の解像度を高めながら、自分の所属する会社や組織の「MUST」と意味付けをしていく取り組みも実施していますが、「WILL」をうまく言語化できなかった人が、AIを通じて見つけていくケースもあるのではないでしょうか。
大川:そういう方もたくさんいます。ローンディールのWILL発掘ワークショップでは、自分のWILLを深堀しますが、一連のプログラムが終わった後、参加者に僕の分身AIロボットを共有しています。AIと一緒にWILLの仮説を作り、次のアクションにつなげてほしいなと。ここでもAIの登場によって、それまでWILLを言語化できず行動につながらなかった人の制約を、一気に取っ払えるんですよね。

ーーWILLを見つけたその先の行動変容にも繋がりそうですね。
大川:自分のWILLがわかっている人は、AIを使ってどんどん自分のCANを拡げています。WILLの次に向き合う「CAN」の壁が低くなり、WILLさえあれば実現手段は何とでもできる、というマインドが持てる環境に変わりました。
たとえば、「◯◯の良さを世界に伝えたい!」というWILLがあるとします。「伝える方法は?」と聞けば、世の中にある方法や考え方をおしえてくれるので、あとはやってみるだけ。行動するための障壁(わからないからできない)は、格段に下がっています。
AIがWILLのためのアクションを後押しし、その回数が増えていくことは、本当にイノベーションだなと思います。
泉水:まさに僕もWILLの実現にAIをフル活用している一人です。僕は今、バイブコーディング(AIに自然言語で指示を出す、コードを書かないサービス開発手法)を教える研修も提供していますが、ちょっと前だったら資料を作るのも、集客方法を考えるのもめんどくさがって、講師業なんてやらなかったと思います。
でもどちらもAIを使えば自力で簡単にできるとわかったら「やりたい!」に変わった。やりたいことがあっても、リソースやスキルがないからハードルが高いと躊躇していたことが、AIで一気に解決されてしまうと、もう動くしかないですよね。
ローンディールで研修を受講し実感した、「自分でなんとかできる」という自信
ーー大川さん自身も、泉水さんの影響でバイブコーディングを始めたんですよね。なぜ興味を持ったのでしょう?
大川:そうなんです。泉水さんがSNSで「バイブコーディングがすごいから、みんな使った方がいい!」と投稿しているのを見て気になって(笑)。
AIは世界を変えるイノベーションだ!という認識は前々からありつつ、僕はエンジニアでもないし、それまでAIとの距離が遠かったんです。だけど、同じく非エンジニア、かつベンチャー経営者の泉水さんがハマっている姿を見て、経営という観点でもやっぱり魅力があるんじゃないかと興味がわきました。
泉水:ベンチャーの経営者だったら「これがあったら全然違う!」と共感してくれる人が多いんじゃないかと思っていました。そこにたまたま大川さんが反応してくれて。ねらい通りにハマってくれました(笑)。

大川:初めてバイブコーディングにトライした時、簡単にホームページが作れたんです。その感動はかなり大きくて。事業をやっていて、ホームページがあった方いいなと思っても、お金も時間もかかるし…と後回しにしていました。それが、自分でできるならやっちゃえばいいじゃん!と、悩みの解決に一気につながった感覚がありました。体感的にも、これを使うとビジネスの生産性が十倍になるなという確信がありましたね。
ーーその後、他のローンディールメンバーも一緒に、泉水さんが提供されるバイブコーディング研修を受講されたとか。
大川:バイブコーディングでSNSサービスを作る研修に、ローンディールメンバー6名で参加しました。自分だけができるようになるのではなく、ローンディールのメンバーみんなで使えるようになったら、生産性も上がるし、個人も会社もハッピーなんじゃないかと思って。
泉水:僕の提供する研修では、あえて受講者にSNSサービスを作ってもらっています。業務に直結する「提案書の作り方」を教えてほしいと言われることも多いのですが、重要なことはツールの使い方ではなくて、AIとの対話の仕方や、アウトプット起点の思考法です。それを体感して欲しいという意図を大川さんにも説明し、今回の研修に至りました。
ーー参加したメンバーの反応はいかがでしたか。
大川:あるメンバーは、「バイブコーディングに出会えたことが、今年経験したことの中でも圧倒的な宝です!」と話すくらい、大きな価値を感じたようです。それまで、自分で作りたいサービスはあったけれどスキルがなく、人にも頼みづらい…と悩んでいたようですが、それが「できそうだ!」に変わり、研修から時間が経った今も引き続きアプリを作っているみたいですよ。
泉水:素晴らしいですね!
この半年ほどバイブコーディング研修をいろんな企業で実施していますが、皆さんの様子を見て改めて感じるのは、やりたいことはある、けれど技術的なボトルネックで実現できなかったという人たちに、バイブコーディングがとてもハマっているということ。
彼らにとって、この技術は渡りに船なんだと思います。「翼が生えたみたい」と表現される方もいましたが、「なんでも自分でできるんだ!」という全能感が得られるんでしょうね。
大川:僕としても、バイブコーディングでホームページやSNSサービスを作れたことはまさに越境的な体験で、「無理だと思っていてもなんとかなる!」という自信につながりました。できないと思っていたことが自分の手のなかでできるようになると、一気に景色が変わる。新しいことに自信を持って臨むことってやはり大事なんだなと、再認識する機会になりましたね。

40代こそ、AIを使って輝ける!?
ーーここまでAI活用の価値を聞いてきましたが、「越境人材に限らず、みんなAIを使った方が良い!」と思いますか。
大川:AIをパートナーにすることで行動も経験速度も上がることは間違いないので、越境に限らず、挑戦したい人にはめちゃめちゃおすすめです!
バイブコーディングを通じて「AIがなかったら見えなかった景色」を知る“越境体験”をした者として、ここは声を大にして言いたいです。
泉水:僕も、できることがどんどん広がっていくのが純粋に面白いし、皆さん使ってみて!と言いたいです。AIを使って挑戦することで、意図せずとも越境体験に近い、景色の広がりを感じられると思うので。
一方、少しシビアなことを言うと、今後はAIを使わずにキャリアを築いていくこと自体が、すごくリスクなんじゃないかと思っています。AI技術はすごく進化が早い。例えば、大企業がリスク回避を意識し慎重にAI活用を進めている間に、世界も周りのユーザーのリテラシーもずっと先に進んで、気づいたら追いつけなくなっている可能性もあります。少なくともビジネスをやっていく上では、よっぽど「AIを使わないこと」に価値がある業種でない限り、なりふり構わず使った方が良いと思います。

ーー「挑戦をしたい人」の他にも、マッチすると考える層はありますか。
大川:最近、「AIを活用するのに一番いい世代ってどこだと思う?」という話を周りとよくするんですが、僕は40代が一番AIと相性が良いんじゃないかと感じています。
AIは聞けばなんでも教えてくれるけれど、その前段で聞き方がわからず、AIとうまくコミュニケーションできない人もいます。一方である程度物事を知っていて、AIとの対話で厚みを持てるのは、40代・50代ミドルシニアが最強説なんじゃないかなと。
「新しい技術は若い人のもの」というイメージがありますが、実は「経験」があるミドルシニア層こそ、AIで圧倒的にアウトプットが出せるんじゃないかなと考えています。
泉水:確かにそうですね。AIも「良い入力」をしないと「良い出力」は出てこない。良い入力とは、その人が培ってきた経験やWILL、業界知識だったりするわけです。
AIの出力は、基本的に「当たり障りのないこと」で構成されるので、入力に深みがないと一般論しか返ってきません。そこから価値のあるものを見極める審美眼が持てるかどうかは、人生でいろんな経験をし、磨き込まれてきたミドルシニア世代の方が、相性が良い気がしますね。
大川:「ミドルシニア層の輝くキーはAIなのである!」と、僕は本当に思っています。そんな視点も持ちながら、ぜひミドルシニアの皆さんにも、AIを通じて“越境に近い体験”をしてほしいですね。
ーー越境体験との相性の良さを軸に、今日は新しいAIの魅力にハッとさせられることばかりでした。貴重なお話を、ありがとうございました!
Fin.
協力:株式会社TEKION Group
文:大沼 芙実子




