ひとりの挑戦が、あなたを変える。
「ローンディールという会社が、今、社会に対して大きな声で伝えたいことは何だろう?」
そんな問いに端を発して半年以上、ああでもないこうでもないと話し合って、私たちはこんなメッセージにたどり着きました。
「ひとりの挑戦が、あなたを変える。」
わかるようなわからないような…ですかね?
今日は、そのメッセージにたどり着いた背景や、そこに込められた想いをご紹介したいと思います。お付き合いいただければ嬉しいです。
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2019年10月、メッセージが決まった瞬間の写真。そこからステートメントを作ったりサイトリニューアルを進めたり、長い道のりでした。
大企業に勤める人が一定期間ベンチャー企業で働く「レンタル移籍」という事業を始めて、もうすぐ5年が経とうとしています。少しずつ賛同をしてくださる企業が増え、実際にレンタル移籍をしてくれた人(以下、移籍者)はもうすぐ100名に達します。大企業で働く人にとって、ベンチャーで働く経験は圧倒的な成長機会になるんだと信じて、事業に向き合ってきました。そしてその成長を、今まで移籍してくれたみんなが証明してくれていて、本当に感謝をしています。その一方で、この5年を振り返ってみると、私たちが想定していなかった意外な事実が浮かび上がってきます。それは、このレンタル移籍という取り組みが、移籍者だけではなく、周囲に少なからぬ影響を与えているということです。
例えば、大企業の人材を受け入れたベンチャー企業の社員の方々に対して。そもそもベンチャー企業にとって、1年という期間限定でしか働かない人材は果たして価値を発揮できるのか? という疑問がありました。ところが、ふたを開けてみると、「周りにとても良い刺激を与えてくれた」という評価をいただきます。それはなぜか。移籍者たちは「受け入れてくれたベンチャー企業のために何としても結果を出したい」「機会を提供してくれた会社に何かを持って帰りたい」という強い思いを持って取り組んでくれます。しかし、与えられた時間は泣いても笑っても1年だけなのです。この「限られた時間」であることが彼らのモチベーションと集中力を高めます。ベンチャー企業で働く人たちは、ある意味でゴールのないマラソンを走っているようなものです。一方で、レンタル移籍者は100m走のような状況で全力疾走ができる。そういう覚悟感や必死さが周囲に伝播し、受け入れたベンチャー企業の経営者からの「刺激を与えてくれた」という評価につながっています。
また、レンタル移籍を終えて大きな組織に戻った移籍者たちは、外で得てきた経験・知見を活かして、組織に影響を与えていこうと行動を始めます。もちろんそこには少なからず戸惑も障壁もあります。ただ、移籍者たちが必死に現状を変えようとする姿を見て、上司や同僚の方々に変化が生じていきます。大企業の管理職の方々から「〇〇さんをレンタル移籍に出して本当に良かった。彼の仕事のスタンスに、私もとても刺激を受けています」「〇〇さんが社外に行ってくれたおかげで、私も外に目を向けるきっかけをもらいました」といった感想をいただくことが少なくありません。何万人も何十万人もいる組織を変えていくことなんて、途方もないことだと思っていましたが、そこで働く人たちの中には、現状に課題を感じ、組織をもっとよくしていきたいと考えている人がたくさん存在していたのです。そして、そういう人たちと移籍者が繋がっていくことで、変化は確実に起こせるのだという手応えを感じています。
このように移籍者が周囲に影響を与えていくとは、事業を始めた当初は想定できませんでした。改めて考えてみるに、レンタル移籍が実現するまでにはたくさんの障壁があり、それが影響力と関係しているのかもしれません。そもそも、大企業の人事の方が、社員にもっと成長機会を提供したいと願って導入を検討する。そこには反対意見もあったかもしれません。それを押し切って進めてくれたおかげで、機会が生まれました。そして、移籍者の不在を上司や同僚がカバーしてくれるから、後顧の憂いなくベンチャー企業に行くことができます。一方で、起業家がまだ見ぬ世界を描いて事業を立ち上げ、それに共感した投資家や社員が集まり、組織が出来上がった。そうやって、いろいろな場所で挑戦してくれた人たちが存在して、レンタル移籍という舞台が整うのです。その経緯や背景そして想いを先人たちから受け継いで、移籍者たちの覚悟はより強固なものになるのです。だからこそ、ベンチャー企業で働く人たちにも影響を与え、移籍を終えた後も、大企業の上司や同僚たちにその熱量を伝えていけるのです。
これらの事象から、挑戦をすることには、その挑戦によって「目的地にたどり着く」「成果を出す」という結果以外にも、とても重要な意味があるのだということに気づかされました。それは、誰か一人の挑戦が確実に周囲に影響を与え、繋がっていくということです。ベンチャー企業という、不確実性の高い環境に飛び込む以上、常に期待した結果が出るわけではありません。さらに人の成長は数値化することができませんから、定量的に成果を測ることは難しい。それでも、挑戦するという行為自体には絶対に意味があるのです。なぜなら、その挑戦は確実に周囲に影響を与え、次の挑戦者を生み出すからです。
そして、裏を返せば、誰かの挑戦が意味を持つかどうかは、その周囲がそれを受け継いでいけるかどうかにかかっているのです。例えば有名なアスリートでもよいし、学生時代の友人でもよいし、誰かが挑戦する姿に勇気をもらって自分も一歩を踏み出すことができた…そんな経験をしたことがある人は少なくないと思います。実はあなたが「一歩を踏み出すことができた」という時点で、その挑戦には新しい意味が加わっているのです。さらに言えば、人はいつでもリスクをとれるわけじゃないし、挑戦しつづけられるわけじゃないと思います。そんなときでも、挑戦する人たちの姿を目に焼き付け、応援したり、周りに共有したりすることはできるはずです。そういう繋がりを生むという行為だけでも、誰かの挑戦に、成否を超越したところで意味を持たせることができるのです。
今、挑戦をすることは、少し難しさを伴うかもしれません。それでも、私たちは確信を持っています。すべての挑戦は繋がっていて、絶対に受け継がれていく。だから“挑戦そのもの”に、絶対に意味があるのだ、と。
ひとりの挑戦が、あなたを変える。
あなたの挑戦は、だれかを変える。
私たちはこれからも、挑戦を波紋のように広げていけるように、事業と向き合ってまいります。
(文=ローンディール代表 原田未来)
【レンタル移籍とは?】
大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2015年のサービス開始以降、計36社95名のレンタル移籍が行なわれている(※2020年5月実績)。