個と組織の成長の好循環を生み出す「働きがい改革」 ーパナソニックの導入ご担当者に聞くレンタル移籍のリアル
オープン・イノベーション推進が高まる中、越境活動による人材育成・組織開発に取り組む企業が増えています。その一方、「社外に出すと転職の危険性が高まるのではないか」「自社で取り入れることは難しそう」といった懸念の声も。
そこで、「レンタル移籍」プログラムを提供するローンディールでは、5月半ばに、パナソニック株式会社のレンタル移籍導入ご担当者をゲストにお招きしたオンラインセミナーを開催しました。
2年間のトライアル期間を経て本格導入が始まったレンタル移籍の導入背景、社内でのエントリーから復帰までのプロセス、事務局としてのサポート体制などを伺いました。ローンディール代表取締役社長の原田とのトークセッションの一部をお届けします。
●ゲスト
重房志保さん パナソニック(株)A Better Workstyle編集局 主幹
1999年 青山学院大学卒業後、パナソニック入社。B2B営業部門にて北米・欧米向けSCM関連業務に従事の後、2005年中国の販売会社へ出向。プロセス標準化、新システムの導入などを行い、納入営業部隊の組織マネジメント、後任マネジャーの育成を実施。2009年帰国後は、海外のSCMリーダーを支援するプロジェクトマネジメントを行う。また、2013年よりパナソニック保険サービスに出向。異なる業界でのBPRの実現にむけ、社内業務の集約、後継マネジャーの育成を実施。現場のマネジャーたちを広く支援したいという志のもと、 2018年 4月より ABetterWorkstyle編集局に着任。全社の働きがい改革の一環として、社外留職・社内複業の立ち上げ、推進を担当。社員が挑戦し成長することが起点となって会社が発展する、その循環のムーブメントが起こるよう、絶賛奮闘中。
目次
ー「働きがい改革」としてのレンタル移籍
ーーパナソニック内での重房さんの役割は、社員の働きがい改革。2017年、パナソニック100周年の記念事業として、「働き方ではなく『働きがい』をどうしていくかを考えることが、次の100年を作っていく」という考えのもと「A Better Workstyle編集局」(以下、ABWs)という部署が発足しました。2018年4月に着任した重房さんは、レンタル移籍(パナソニック社内の呼称は「社外留職」)の導入を検討。2018年10月に第1期生5名が、2019年10月に第2期生4名がレンタル移籍を開始し、2年間のトライアルを経て正式導入が決まり、現在、第3期に向けて準備を進められています。
原田:まずはレンタル移籍の狙い、期待をすることについて、改めて教えてください。
重房さん(以下、重房):社員一人ひとりが持っているものを全て発揮して、さらに成長したら、それは会社に戻ってきて会社が発展する。そういう循環を生み出すことこそが働きがいであり、次の100年でそこを目指したい、という思いがベースにあります。その「働きがい改革」の施策のひとつとして「レンタル移籍」を導入しました。自組織への理解と、外部の組織を経験することで身につけることができる能力の掛け合わせで、イノベーションを推進することができるようになることを期待しています。
ー2年間のトライアルを通して見えてきた3つの効果
ーー1期生・2期生をサポートする中で、レンタル移籍には「既存事業に変革を起こす力が身につく」「自発的な共創を生み出す力が身につく」「眠っている個人の能力が開花する」という3つの効果があると感じられたそうです。
原田:まずは1点目の「既存事業に変革を起こす力が身につく」について聞かせてください。1期生や2期生のどのような姿を見てそう感じられたのでしょうか。
重房:1期生の5名には、技術系もいれば営業系もいて、挑戦した事業や業界も全然違います。それでも全員が口を揃えて言うのは、間近で経営者から発せられる熱いパワーを浴び、自分のやっていることに”腹落ち”できたたことが、自分が進む原動力となっているということです。この”腹落ち”は魂として宿っていて、既存事業を変革していく力になるだろうと感じています。例えばそのうちの1名は、移籍先で学んだOKRというツールを自分の課に持ち込み、上司にも協力してもらいながら、メンバーの”腹落ち”を目指して業務に取り組んでいるようです。(詳しいストーリーはこちら)
原田:社長と顔を合わせて話すなんて、パナソニックではなかなかないでしょうからね(笑)。それが、毎日真横にいるみたいな状況で働けるというのは大きいかもしれないですね。次に2点目の「自発的な共創を生み出す力が身につく」について。外に出たことで組織へのエンゲージメントが高まり、戻った後に周囲と共に動こうとする力になるということだと思いますが、なぜ外に出るとエンゲージメントが高まるのでしょうか。
重房:外を見ることで「やっぱりパナソニックってすごい。パナソニックでできることはいっぱいあるな」と感じるようですね。パナソニックは「ものづくりで社会に役立ちたい」というメッセージを発信してはいるのですが、普段の業務で体感はできていない。それを実際にベンチャーでものを作って社会貢献をしてみることで、「僕がやりたいことって、ものづくりで社会貢献だ。それってパナソニックがやっていることだった!」と気づいて帰ってきてくれるんです。
原田:ベンチャー企業で、決まったプロセスもなく、リソースも経営資源も少ないという大変な中で、どうにか何かを成し遂げようとしている経営者の姿に触れる。何もかもゼロから始めなければならないという状況です。一方で、パナソニックで、100年という月日の間に先人たちが積み上げてきたものの上で働くことができるのは恵まれていることだという気づきがあるのでしょうね。組織への波及効果についても、何か印象的なエピソードはありますか。
重房:報告会で移籍者の話を聞いた人が、自分が進めているプロジェクトに意見を聞かせてほしいと移籍者に働きかけ、そこから新規事業が生まれてくるなど、じわじわと広がりを感じています。彼らの知見や経験が欲されているし、彼らも与えようとしているのを感じ、嬉しく見ています。
原田:最後に「眠っている個人の能力が開花する」という点について。「言語化」「やり抜く力」「学習継続力」といった、基本的なスキルを根底から底上げできるとのこと。特に言語化に関しては、移籍中は週報や月報※1 を提出してもらうのですが、それを通して彼らの言葉が磨かれたという印象はありますでしょうか。
重房:はい。ローンディールのプログラムのすごいところ、そして、変化が一番大きかったのは、この「言語化」だと思います。ひたすら週報と月報を書き続けるうちに、はじめはつたない文章しか書けなかった人が、自分の学びを言語化しなければならないという覚悟を決めた文章に変わっていく。口下手だった技術系の社員が、戻ってみたら熱を持って語るようになり、「こんな人じゃなかったのに……」と上司も驚かせてしまうほど変わってしまう。何度も何度も言語化をして、自分なりの表現を磨き、そこから得た自信みたいなものにつながっていると思うのですが、すごくドラスティックに変わりましたね。
原田:このプログラムの中で悪かったところもあれば教えてもらえますか?
重房:悪かったところではないのですが、そこまで変わるためには、皆さんからの突き上げもすごく受けていて(笑)。メンターさん※2 から「あなたの週報はつまらない!」という厳しいコメントを受けて、仕事で頭がいっぱいなのに、週報を面白くしなければということまで気を回さなければならなくなるなど、いいところまで追い込んでいただきました(笑)。
※1 週報・月報とは:業務を通じた学びや気づき、自己評価などを記録した、移籍者によるレポート。移籍元やローンディールに共有される。
※2 メンターとは:レンタル移籍で新しい環境に飛び込みチャレンジする移籍者を応援し、安心して挑戦できる状態を作る伴走者。週報に対する返信や1on1の実施など、対話を通して内省を深める役割を担う。
ーパナソニック流・エントリーから復帰までのプロセス
原田:トライアル時期に挑んでいただいた1期生と2期生には、申し訳ないくらいトライアンドエラーに付き合っていただきましたね。3期の募集に向けたプロセス改善の中で、一番大きな変更点は「上司から後押しを得る」というプロセスが加わったことだと思いますが、その経緯を教えていただけますか?
重房:導入時は、とりあえずやらせてくださいという形で始め、仕組みも、1から入念に練ったというよりは、既に会社にある仕組みをなんとか編集して進めました。例えばパナソニックではFA制度がだいぶ定着していて、「あの部署で人を募集しているから行ってみたい」といった形で異動ができます。上司の承認が必要となると手が挙がりづらくなるので、まずは本人の意思を尊重をし、面談も終えて、異動先が決まって初めて上司に「この部署から合格をもらったので、2ヶ月後に異動します」ということを可能にしています。レンタル移籍も同様に、初めはまずは上司の承認なしで、手を挙げてもらうように進めました。でも、本人が何をしたくて挑戦をしたのか、職場の人も理解できていないと、戻ってきた時に何をどう応援したらいいか分からくなってしまう。応援団が少なければ、行ったメンバーを逆に苦しめてしまうことになり、それでは成功とは言えないと気づきました。そこで3期からは「上司から後押しを得る」というステップを追加しました。
原田:毎回、全社に告知をして、公募で手を挙げてもらうというところは変わらない。でも、1期・2期は行きたければ手を挙げられたけれど、3期以降は、上司の推薦をもらった状態でないと手を挙げられないようになったということですね。
重房:はい。上司の承認を得たという証明として、推薦コメントをもらった上でエントリーをしてもらうようにしました。
原田:上司の方の承認という点では、1期と2期でも微妙にやり方を変えましたよね。1期の時は「行きます。決まりました。よろしくお願いします」という感じで、2期の時は「9割り方決まっているんですけど、どうですかね」というやり方に。それだけでも、職場の上司の方々のリアクションはすごく変わって、応援してくれるようになりました。お話をする順番って、すごく大事だということを目の当たりにしました。やはり職場としても、本人の成長のために次はこういう機会を提供しようと思っていたのに…という気持ちもあると思うので、秩序を通さなければならないのだということは、私たちもこの2年で学ばせていただきました。
重房:パナソニックでは1年前から1on1を導入し、業務の報告だけでなく、自分のやりたいことやwillを上司と共有するなど、コミュニケーションの質と量を上げていこうと全社的に動いてきました。そういう土壌ができつつある中で、レンタル移籍をしたいのだという会話を事前にしておくのは健全なやり方だと思っています。
原田:上司の承認を得られた後は、自分のWillを明確化し、それに合致する移籍先を決めるというプロセスに移ります。ローンディールでも、移籍前にキックオフミーティングという合同研修※3 を行っていますが、パナソニックの中でも移籍する前から盛り上げるような仕掛けをしていただいていますよね。
重房:1期生の頃から変わらずやっているのは、キックオフミーティングの模様を記事化して、全社にお披露目するようなことをしていました。人事責任者や副社長とも面談をさせてもらい、みんなに応援されている環境であることを本人たちにも理解してもらうようにしました。3期以降は、キックオフミーティングからも上司を参加させて巻き込んでいきたいと話しています。上長や事業部長などにもきちんと宣言をしてからレンタル移籍して、帰ってきてからも報告ができて、といった流れを強化していけたらいいなと思っています。
※3 キックオフミーティングとは:自分のミッションやビジョンなどを明確化し、それに合致する移籍候補をを検討するための、ローンディール主催の合同研修。
ー移籍者の挑戦に刺激され、新たな挑戦が生まれる仕掛け作り
原田:移籍期間中、事務局としてどんなことをやっているか、教えてください。
重房:1人の挑戦を、他の人も見聞きしたり擬似体験することで鼓舞されて新たな挑戦に繋がればという思いがあるので、移籍者の奮闘ぶりを広く共有しようとしています。具体的には、彼らの活動を月報などから引っ張り出して記事にして、ポータルサイトで発信しています。週報や月報はそのままテキストで送っても読みづらいので、移籍者たちに追加で写真を送ってもらってまとめ直すなどして、ビジュアルで分かりやすく、変化の「見える化」を心がけていますね。
原田:人事部長や役員の方にも展開していただいたんですよね。
重房:はい。人事の中での共有はもちろん、関わりのある役員にも見てもらえるようにしました。2期生からは、同じ2期生の他の移籍者の上司にも共有し、うちの部署ではこんな感じだけど、あなたの部署の移籍者はどう?というのも感じてもらえるようにしました。
原田:ちなみにABWsは人事部という位置付けでよかったのでしょうか。
重房:人事です。ただ、人事の中というよりは、人事と横並びで置かれている組織です。
原田:移籍が終わって帰ってきた後は、どんな風に関わられていますか?
重房:移籍期間中はABWsの配属だった移籍者たちが元の部署に戻ることになるので、一歩引いた立場にはなるのですが、彼らに伴走し続けるよう心がけました。1期生の多くが、1年間の学びを受けて、これからどう行動していくかを考えながら苦しんでいる様子があったので、一緒に移籍期間中のことを振り返りました。本人たちはずっとこのストーリーの主人公として走り続けてきているのですが、事務局は客観的にテレビで見ていた状態です。本人にとってすごく大事なことが起きていたのに、当の本人は覚えていなかったりして(笑)。一緒に記憶をすり合わせることで振り返りが深まり、客観的な目線でサポートしてあげるのはいいなと思いました。
原田:報告会に向けて資料を作ってもらっても、打ち返しはけっこう大変でしたよね(笑)。ここでもっといいことあったじゃん、みたいな(笑)。パナソニック社内の方にとって、特にどんな切り口だと報告すると響きやすいとかはあるんですか?
重房:みんな「行って挑戦して成長したのはわかるけど、帰ってどうなるの?」という問いをずっと持っていたので、「こういうアクションプランがある、その背景にはこういう経験があるからだ」というストーリーがしっかりしていればズシンと響くだろうと思いました。なので、振り返りは大事なプロセスでしたね。
原田:報告会はどのように実施されたのですか?
重房:事業場でも報告会を実施してもらい、ABWsでもシンポジウムという形で1期生にプレゼンテーションをしてもらいました。彼らの宣言を聞いてもらうことに重きを置きたかったので、あまり時間を使うことなくこれまでの歩みも感じてもらおうと、レンタル移籍のコンセプトや1期生の活躍の様子が伝わるような動画も作りました。そこから、もっと話を聞かせてほしい、僕たちのプロジェクトへのアドバイスを聞かせてほしい、などと言った形で新たなネットワークが生まれているのを聞くと、大事な取り組みだったんだなと改めて感じています。
原田:社内の有志活動の方々が、移籍者を招いて話を聞く会が開かれたという話を聞きました。
重房:そうなんです。イベントを勝手に開いてくれて、有り難かったですね。
ー「会社はもっと挑戦して成長できる」を共に体感できる仲間たち
ーー最後に、レンタル移籍をやっていてよかったと思うことについて伺いました。
重房:1期生の戻ってきた姿や、今の2期生の頑張りを見ていて、間違いなく彼らは活躍していくだろうし、レンタル移籍には有効性があると、胸を張って言えます。帰ってきたら終わりではなく、彼らがこれから続けていくであろう新しい挑戦に向けて、彼らのサポートもまだまだ続けていく気でいます。彼らに伴走されているように感じるほど、彼らもこの制度を後押ししてくれていることも、やっていてよかったと思うことです。ガイドブックも完成を一番喜んでくれたのは1期生ですし。「僕たちの頃にはなかったいいものができた」って(笑)。レンタル移籍だけでなく、会社がもっともっと挑戦していって成長できるということを、様々な形で体現できるような仲間作りができていることを体感できていて、嬉しいですね。
ーー当日は、レンタル移籍の導入を検討している人事担当者の方などから、具体的な質問も挙がりました。
Q.レンタル移籍中の社員の評価はどうされていますか?
元の職場に戻ってはもらうのですが、レンタル移籍期間中の1年間は便宜上、ABWsに出向という形で異動し、私たちのチームメイトになってもらっています。その上で、ABWsとして、パナソニックの規定の中で評価をしています。3ヶ月に1回くらいを目安に直接会いに行き、メンタル面も含めた体調の確認や、目標管理に対する成果確認をし、評価に反映するような形でコミュニケーションを取っています。
Q.戻った後の1期生は、今どのように活躍されていますか?
レンタル移籍の経験は生きています。例えば1期生のうちの1名は、「目の前のことをやらなきゃいけないからやるのではなく、その先にあるビジョンがあり、そのためにやっているんだ」ということを、自分の携わるプロジェクトメンバーの1人でも多くの人に分かってもらおうと、魂を込めて活動しています。そういった、彼らの中に宿った魂が生かされていると感じています。
Q.ベンチャーの良さに気づき、転職のきっかけになってはいないでしょうか?
導入の頃、社内でも心配の声があがりました。でも実際、1期生は、レンタル移籍中の経験やこれからやりたいことを考えている間に、「そもそもなんでパナに入ったんだっけ?」ということを思い出し、「そうだ、帰ってこんなことがやりたい」という思いが高まって帰ってきてくれたなと感じています。1年を通して、ずっとパナソニックに今すぐ帰りたいと思っていたかは謎ですし、私も初めてだったので、すごくドキドキしていたのは事実ですが(笑)。
Q.導入にあたって社内でネガティブな意見はありませんでしたか?
ちょうど100周年というタイミングも良かったとは思いますが、「どんなものかわからないけれど、とりあえずやってみたら」と見守ってもらえる雰囲気で始められました。ただ、1期生の時は、移籍者を出さなければならなくなった職場は困惑されていたので、伴走していただく中で、意義や効果を納得いただきながら進めていきました。
Q.公募開始から締め切りまでの期間はどのくらいですか?
1期・2期の手を挙げてもらうスタイルだった時は、2週間くらいでした。3期以降は、上司ともしっかりコミュニケーションを取ってもらいたかったので、1ヶ月くらいですね。
Q.上司の方がレンタル移籍の意義を理解していないと推薦文ももらえなさそうですが、社内で研修の意義をどう打ち出していますか?
レンタル移籍の説明会を開いて、興味がある本人だけではなく、上司にも参加してもらえるよう試行錯誤している最中です。参加できない方にも、動画や記事をネット配信するなどしていますね。レンタル移籍の説明ガイドブックは、社員向けではなく、上司向けのものも作り、上司にも意義が伝わり、わくわくして本人の背中を押したくなるような構成にしました。報告会も、全社でやってみたり事業部でもやってみたりと、あの手この手で模索しながら、続けて発信していくしかないと思っています。
Q.多くの希望者の中から、どうやって移籍者を選別していますか?
パナソニックでどんなことをしたいというビジョンを描いているのか、そのためにどのようなことがしたいのかを伺い、これなら応援できるなと思う方を選んでいます。
Q.戻ってきた方を活かせるマネジメントも必要だと感じますが、移籍者を活かすマネジメントについて教えてください。
こちらから何か仕掛けなくとも、上司の方も、週報や月報を見ながら、一緒に話を聞きながら伴走して、頑張って成長して帰ってくる本人を受け止めなければと意識して、一緒に成長してくださっている感じもあります。ローンディールさんもそこは大事にされているところで、レンタル移籍中に上司向けのマネジメントプログラムも用意してくださっていますね。
Q.パナソニック全社でトータル何人くらいがレンタル移籍すると、文化が変わると思いますか?
前に原田さんと議論したことがありますね(笑)。社員が恐れる事なく成長のために挑戦するという文化が広がってほしいと思う反面、必ずしもレンタル移籍でなくてもいいと思っています。いろんな人がいろんな挑戦をして、それが組み合わさることで新しいものが生まれるというところが一番目指したいところです。みんながレンタル移籍すればいいなとは実は思っていません。外を見て持ち帰って今の組織を変革させたいという文脈で、この仕組みが後押しになるのであればサポートしてあげたいと思っています。
1期生の移籍経験の振り返りのためのネクストアクションミーティングにて。パナソニックの重房さん(写真左)、ローンディール代表取締役社長の原田(写真左から2番目)、1期生の5名(左から、北田さん、大西さん、落合さん、松尾さん、久武さん)。
「パナソニックも、100年前の創業時はベンチャーだった。大きな組織に入った人たちがその源流を感じられるかというと、すごく難しいと思うんですよね。それを思い起こさせるという意味において、外に出て生身の自分を経験すること自体に意義があるのではと思います」
これは本文内にも登場したABWs制作による動画の中で、代表の原田が口にしたコメントです。ベンチャー企業に行って、パナソニックの源流を感じ、パナソニックへの愛着を強めた人が、1人、2人と増えていく。1人で文化を変えることは難しくとも、1人の成長を起点に新たな挑戦が生まれ、パナソニック社内に波紋が広がり、大きな変革に繋がる……。
そんな光景のために、重房さんはこれからも改善を重ね、レンタル移籍を推進していってくださるのだろうと感じる1時間でした。重房さん、本当にありがとうございました。
Fin
【レンタル移籍とは?】
大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2015年のサービス開始以降、計36社95名のレンタル移籍が行なわれている(※2020年5月実績)。→詳しくはこちら
協力:パナソニック株式会社
レポート:黒木瑛子