「スタートアップの事業成長を加速させるレンタル移籍とは?」 Rapyuta Robotics株式会社 × ローンディール オンラインイベントレポート

スタートアップ企業が事業成長に取り組む中で、人材採用やマネジメントの難しさは常に大きな課題となります。その課題に対し「レンタル移籍」を活用し、事業成長を実現しているスタートアップが増えています。これまで2名のレンタル移籍者を受け入れているRapyuta Robotics株式会社 執行役員 森亮さんをお招きし、実際にレンタル移籍者に担当してもらった業務や、受け入れるメリット・注意点などについて、ご経験談を伺いました。
ローンディール代表・原田とのトークセッションの一部をお届けします。

●ゲスト:森 亮さん
Rapyuta Robotics株式会社 執行役員(ビジネス統括)
Google APEC地域のマーケティングプログラム統括及びモルガン・スタンレーにてM&Aアドバイザリー業務に従事。その間にUCLAにMBA留学経験あり。

Rapyuta Robotics株式会社
2014年チューリッヒ工科大学発ベンチャーとして創業。「ロボティクスを便利で身近に」をミッションに、13各国60名の多国籍なメンバーが結集。Rapyuta.io(クラウドロボティクスプラットフォーム)及び倉庫用ピッキングアシスタントロボといったロボティクスソリューションの提供を行っている。

ラピュタイベント会社概要


―レンタル移籍を利用しようと思ったきっかけ

これまで、Rapyuta Robotics株式会社では、
2019年10月〜2020年3月 富士通株式会社より1名
2020年4月〜2020年9月  大和ライフネクスト株式会社より1名
計2名のレンタル移籍者を受け入れて頂いています。
レンタル移籍導入の経緯や、実際に受け入れてみてのご感想を、導入フェーズごとに伺いました。

パネルトーク1

原田:社員の方も増えて、資金調達も進む中、昨年10月からお付き合いさせて頂いていますが、元々は経済産業省のお繋がりで弊社を知っていただいた。という経緯だったかと思うのですが……?

森さん(以下、森):はい、そうですねJ-Startup(経済産業省が推進するスタートアップ企業の育成支援プログラム)に我々が選定されて、スタートアップのニーズってなんですか? というヒアリングを受けたんです。そのとき「何か困っていることはありますか?」と質問されまして、困っていることだらけなんですけれども(笑)。

あえて2つ上げるとしたら“人材”と“案件”ですというお話をさせて頂きました。そこで、ローンディールという会社があると伺いまして、コンセプトを聞いてこれは良いと思って、ぜひ紹介してくださいとお願いしたのがきっかけです。

―受け入れてみて、良かったこと・成果

パネルトーク2

原田:では、実際に受け入れてみて良かったことはありますか?

森:まず良かった点は、社会経験を積まれた方が来てくださる、ということです。すごく基本的なところですが、若い会社ですと、大企業で働いている方が当たり前だと思っているような基本的な所作がなかったりするんですよね。極端な例を挙げると、ミーティングの前にちゃんと準備をするだとか、お客さんの前でポケットに手を突っ込まないとか。
そういった部分で背中を見せくれるというところが大きいかなと思います。また、これまで色んな経験をされてこられているので、私自身にないような知識と経験を提供していただいているという点も非常に大きいかなと思っています。

ここで参加者の方から質問が。
参加者:ラピュタさんに移籍された方は、ロボティクスに関するスキルはもともとお持ちだったのか、教えて下さい。

森:これまで移籍されたお二人は、ビジネスチームでかつテクノロジー(エンジニア)のバックグラウンドがないお二人でしたが、色んな役割を担っていただいています。ただ、知っているに越したことはないので、知識がない場合には、そこから学ぶというのが非常に大事だと思っています。

ロボティクス業界が良いなと思っているのは、経験者があまりいないところです。そもそも新しい業界なので、みんなが学ばないとどうにもならないのです。例えばエンジニアに対して、ちょっとここがわからないから教えてくれという話をして、嫌な顔をされることはないんですね。自分がちゃんと準備をしていれば教えてもらえますし、そこで学んでいける力とやる気があるのか、これにかかっていると思います。

原田:そういう意味では、レンタル移籍云々ということではなくて、組織の中にみんなで知識を共有していくとか、教えていく社風が業界的にあるんですかね? 僕らもどんな企業にレンタル移籍を受け入れていただきたいかというと、やっぱり“教える”ことに対して、ちゃんと手をかけてくださるかどうかが大切なんです。経営陣が今の社員の方々とどのように向き合っているか、お話を伺うとその辺りが見えてきます。そういった意味ではロボット業界は相性が良いのかもしれないと思いました。

森:そうですね、やはりそれぞれが気概を持つのが大事かなと思っています。受け入れる側に、教える余裕がないこともありますし、そもそも教える人間のスキルが私も含めてまだ高くないので、移籍者の方に自ら学んでいただくしかない。積極的に行動を起こしていくことで、学びを得られるということも貴重な経験なんじゃないかと思います。

原田:これまで受け入れていただいているお二人は、移籍期間が6ヶ月間ですが、“教える”という投資に対して6ヶ月で回収しなければならないというのは、抵抗はなかったですか? また、その結果どうだったか? という点について教えて下さい。

森:そうですね、そこは非常に悩むところでして、やはり余裕がない中で、教えるだけで終わってしまうと、会社に対して負担がかかってしまいます。いわゆるランプアップ(慣れるまでの期間)をどう短くするか、どう課題を抽出して担当を決めるか、そこは悩んでいましたし、常に課題だなと感じています。

そういった悩みがある中で、一番うれしいなと感じるのは、移籍者の方が自発的に周りと連携して色々仕上げていく様子を目にした時ですね。実際に、イベントに登壇して頂いて、重要な案件の成立させるきっかけを作って頂いたり、やはりそういうのはすごく良かったなと思います。

原田:森さんの感覚として、立ち上がりまでの期間について、6ヶ月の中で最初の1ヶ月ぐらいすれば立ち上がるのか、もうちょっとかかるのか、どう思われますか?

森:やはり1ヶ月は一つの節目だと思います。そして2ヶ月で昔からいたような雰囲気になるのが目指す姿かと思います。移籍される方からすると、2週間で慣れるというのを目標にすると丁度いいスピード感かなと思います。

原田:なるほど、ありがとうございます。

―受け入れてみて、苦労したこと・気をつけたこと

パネルトーク3

原田:ここまで、良いお話ばかり聞いていますので、次は受け入れてみて苦労されたことや、気をつけていることがあれば教えて下さい。

森:まず1つは、スピード感の差があるかなと思います。これはただ単純に動きが遅いとかの話ではなくて、物事の進め方の差というのが、大企業とスタートアップではあるかと思います。

大企業の場合は、レイヤーがあって、どちらかというとミスがないように練り上げてから実行するというのが最適な方法ですが、スタートアップの場合はスピード優先で、まず動いて、動きの中で追加情報を手に入れて次の指針を決めるという形なので、プランニングは大事であるものの……、プランニングだけでは答えはでないという環境にある。これが非常に大きな差なんじゃないかなと思います。

その基本的な行動原理を、移籍先の形に合わせて、効果を出すという調整が苦労するところかなと思います。

原田:それはある意味、大企業からスタートアップに転職をする人も同様だと思うんですよね。最初に慣れるとき、「もう原理が変わったんだよ」ということを説明することでスッと入るものなのか。どうやるとキャッチアップが早くなると思いますか?

森:ここは、私自身模索しているところではあるのですが……
まず1回全部忘れるのが大事なのかなという気がします。レンタル移籍者に限らず、我々の会社に大企業から入社される方がいるのですが、まずはじめにあるのが、プラニングがなっていない! こんなこともしていないのか? みたいな話になりがちなんですよね。

原田:マニュアルがないんですか? みたいな感じですね。

森:そうなんです。当然、我々がなっていないという点もあるのですが。でも、真剣に生活をかけて事業に取り組んでいる人間がいる中で、おかしいものってそんなにないんですよね。それは、マネジメントコンサルタントが入ってすぐに価値を発揮できるのか? という点に通じるものがあると思うのですが。地頭が決定的に違うとか、専門性が決定的に違うとかでなければ、入ってすぐには、問題を発見して解決することは出来ないのではないかと思っています。それより、中に入っていって課題を理解して、じゃあ、一緒にどうやって解決するのかという方向に舵を切る方が良いんじゃないかなと思います。

原田:レンタル移籍に限らず、森さんも採用などで人を見てこられていると思うのですが、どういう人だったら、“一旦全部忘れる”が出来ると思いますか? 

森:私もよくわからなくなっているところでもあるのですが。でも今、僕が見るべきは成長のポテンシャルだったりするんですよね。もしくは自分のドメインじゃないところの価値を提供してくれそうな人なのかとか。

そういう観点でみると、やはり行動出来る方が、“一旦全部忘れる”が出来るのかなと思っています。なぜかというと、マネジメント一辺倒になると、どうしても組織に依存したスキルセットになりがちだと思うんですね。そういった方だと環境が変わることに対する恐怖心だとか、環境が変わるとパフォームできないという事実もあって、なかなか昔を忘れられない。そういうことなんじゃないかと思っています。でも確たる答えがなくて、まだ模索中です。

原田:これがわかったら採用ミスがなくなる、みたいな究極的な問題かもしれないですね。

森:あとは、過去に苦労した経験がガチっとある人は強いですよね。これは強面な雰囲気とは違って、ナヨッとしていても内面に芯のある人っているんですよね。そういう方は、はじめに何も出来ないなという烙印を押されても結局登ってくるとか、見るたびに新しい気付きがあるなと思います。

原田:なるほど。実は僕らも移籍者に対して、スタートアップの方にご面談頂く前に、多少スクリーニングをかけています。個別に面談を実施して、その後、1日研修を実施するのですが、そこでも見極めのポイントがあります。
まず、自分のライフチャート(アップダウン)を描いてもらって、それについて語るというワークをやっていただくのですが、そこで、どん底から這い上がった経験をちゃんと内省されている方は、この人は良いんじゃないかなとか。そのうえで、いろいろなディスカッションをする中で周りからツッコミや反対意見を提示されたときに、「たしかにそういう考えもあるかもしれない」っていうように対話を通じて、素直に考えを深めていける方だとレンタル移籍をして変わってくれるかな、と考えています。

森:そこはノウハウを知りたいですね。でもおっしゃるとおり、会話から学べるとか、他人からのインプットをうまく取り込めるというような、学び上手なのは大事ですよね。変化に対応するのがデフォルトな時代だと思うので。

原田:そうですよね。もう一つお聞きしたいのですが、森さんにも月に1回1on1にご協力いただいていますが、どうでしょうか?

森:1on1については、移籍者の方との1on1と、メンターの方との1on1があるのですが、メンターの方との1on1については、私にとって義務と思い、仕事として取り組もうと思っていました。で、ふたを開けてみると、本当に経験のある方がメンターになってくださって、私自身すごく勉強になりました。やはり大企業から短期でいらっしゃる方に対して、どういう風にコミュニケーションをとって、スタートアップに慣れてもらうかというところは、私自身悩ましいところがあります。そこを打ち明けて、アドバイス頂けるというのは、ローンディールの隠れた良い面だと感じています。

原田:ありがとうございます。良かったです。

――最後に、つい先日、日経新聞に掲載されたラピュタさんの取り組みについてもお話を伺いました。

画像5

原田:この案件は、レンタル移籍者から移籍者へ引き継いでプロジェクトを進めていると伺っています。ちょうど一人目の移籍者の方が、自分のレンタル移籍期間が終了するということで、プロジェクトを引き継げる人を探していて。そのタイミングで、二人目の移籍者の方をうまくアサインできて、移籍者同士の連携で案件が進捗していることが嬉しいですし、そして、それが日経に掲載されるなんてすごいですね!

森:このロボットは、クラウド上で共有された倉庫内の地図情報をもとに、荷物がある棚まで自律走行し、在庫棚から商品を取り出すピッキング作業支援ロボットです。この形のロボットは日本で初めてなので、かなり意味があると思っています。

原田:ますます盛り上がっていくといいですね。

森:ぜひ、我々の会社に優秀な方が来て欲しいというのもあるのですが。それに関わらず、大企業の優れた方々が、価値を外側に提供するということが、世の中のためになると感じています。移籍を終えて、学んだことを自社に持ち帰って、イノベーションを加速させる流れを作る、このローンディールの思想はきれいですよね。ぜひ、もっとこういう取り組みが生まれると良いなと思っています!

原田:本日はありがとうございました!

Fin

協力:Rapyuta Robotics株式会社
レポート:管井裕歌

【レンタル移籍とは?】

大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2015年のサービス開始以降、計36社95名のレンタル移籍が行なわれている(※2020年5月実績)。

 


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