ベンチャー企業経営者が語る「大企業社員はオワコンじゃない!」 そのワケは?【前編】
レンタル移籍(※1)を受け入れた株式会社VALU代表の小川氏は、「大企業社員はオワコンじゃない」と語る。小川氏は半年間NTTドコモからVALUにやってきた亀山さんのことを“自分の高め方を知っている”と絶賛する。ベンチャー企業と大企業の社員が交わったからこそ気づいた、それぞれの価値とこれからのあり方を対談形式でお届けします!
VALUが提供するのは、”なりたいもの”や”やりたいこと”を実現するために、個人を応援するアプリ「VALU」を開発・提供するベンチャー企業。「VALU」には、「世界中の信用を評価し、資本主義をアップデートをし続けること」というミッションがある。ドコモという大企業で活躍しながら、自身と会社の課題感を抱えていた亀山氏は、アプリエンジニアとしてVALUに移籍することになった。
→ 亀山さんの移籍中のストーリーはこちら
ー大手企業もベンチャーも関係ない
できる人はできるし、できない人はできない
亀山:そもそも、小川さんがレンタル移籍を受け入れようと思ったのはなぜですか?
小川:当初は単純に”人手不足”という理由です。それと、実際亀山さんに会ってみたら、できそうな感じがしたから。大手企業であれベンチャーであれ、できる人はできるし、できない人はできない。僕はそう思っています。畑は違っても、できる人ならぜひ一緒に働きたい。そう思ったわけです。
亀山:ありがとうございます。
小川:僕らのようなスタートアップって、人材を集めるのがすごく難しい。亀山さんのように優秀な人のまわりにはいい人材がいるかもしれないって、そういう面も考えたりね(笑)。
亀山:でも、僕がVALUにエンジニアとして移籍した当初は、プログラミングなんてほとんどできないに等しかったですよ。
小川:優秀な人は、咀嚼する能力が高いし、自分の高め方を知っているんですよ。学歴主義というわけじゃないけど、僕がアメリカで仕事をしていた頃に感じたのは、ハーバードやスタンフォードやMITの人って「自己管理能力がめちゃくちゃ高くて、自分の高め方を知っている」ということ。だから自然と高学歴になる。自己管理がきちんとできる人なら、半年もあればそれなりの成果が出ると踏んだわけです。だらだら過ごして時間をうまく使えない人って、思った以上に多いですから。
亀山:たしかに、周囲の優秀な方は自己管理が得意な人が多いかもしれません。自分でやるべきことをやるし、時間の使い方もわかっている。そしてできなかったことはきちんと報告する。そういう癖がついているんでしょうね。
小川:それはエンジニアとの大きな違いかも。ずっとインターネット業界にいると、だれてくるのかな(笑)。それに、まだまだ優秀な人は大企業を選ぶ傾向が強いよね。優秀な人の多くは、外資系コンサルや商社、省庁とかに行ってしまう。チャレンジする人がインターネット業界に行くイメージで。
亀山:たしかに、そういった二極化はあるかもしれません。
小川:僕が実際に亀山さんと一緒に仕事をして感じたのは、大手企業で働いてきただけあって、ベースにある能力が高いこと。スタートアップの叩き上げ感とは違った長所がある。ところで、亀山さんはなぜドコモに入ったんですか?
亀山:僕が入社したのはiPhoneが発売された頃で、世の中の流れがITのほうへ大きく変わるなという予感もありました。もともと学生時代は電子物性を専門としていましたが、端的に言うとスマホの可能性に魅せられ、方向転換しました。あとは、日本トップレベルの顧客基盤と営業利益があればデカイことができる気がしたんですよね。
小川:なるほど。たしかにそうだよね。
ー「大企業で揉まれてきた」という経験値がものをいう!?
小川:さっきもご自身でも言っていたけど、亀山さんは、プログラミングがほぼできない状態でうちにきましたよね。
亀山:はい。そうでした。
小川:でも、その頃の亀山さんがものすごく努力して、勉強していたのは傍目にもわかった。僕からすれば、若い社員に「亀山さんを見習ってほしい」という気持ちでしたよ。仕事をしていく上で、努力をするって当然のこと。そうしないと能力なんて伸びない。僕も(新卒で)会社に入ったばかりの頃は、死に物狂いで努力した。家に帰れば調べ物をする、土日には時間をつくって本を読む、勉強するのは当たり前。亀山さんがそういう姿勢を社員たちの前で見せてくれたのはありがたかったな。実際、亀山さんの力はどんどん伸びていって、いまではまわりから頼られる存在になっている。
亀山:優秀なエンジニアに教えてもらいながら、ありがたい環境で仕事をさせていただいたと思っています。
小川:大企業で揉まれてきただけあって、亀山さんはコミュニケーションが上手ですよね。たとえばどういう質問をすると相手からいい答えが返ってくるか、相手にどうやって自分の課題感を伝えるかとかがわかっている。
亀山:エンジニアたちとどうやってコミュニケーションをとればいいのか、最初の頃は探り探りでした。ただ、うまく聞けばきちんと教えてくれる人が揃っていたのも大きかった。人に恵まれた、いい環境でした。
小川:それが人を使ってうまく吸収していくというコミュニケーション能力なんだよね。当然だけど、いわゆる「報・連・相」とか。そのあたりは大企業で揉まれてきた経験値がものをいうのかも。
亀山:大きな企業の中で仕事をしていると、どうしてもコミュニケーションベースになります。自分ひとりで黙々と仕事をするというよりは、まわりの人たちと協力しながら大きなプロジェクトをつくっていくような。
小川:そういう意味でも、亀山さんは能力の伸ばし方がうまいんだと思う。一度自分の伸ばし方を知ってしまえば、あとは自然と伸びていくっていうのが僕の持論。スポーツや英語でも、人それぞれアプローチ方法があるから。
亀山:たしかに、自分にあった学び方は人それぞれですね。僕は自分より優秀な人をみつけて教えてもらうというのを高校受験のときからやっていました。
小川:自分のパターンがわかっていると、能力を伸ばしやすくなりますね。僕の場合はなんでも私生活に入れ込みたいタイプで、英語を学びたければ映画を英語字幕で観るとか、プライベートでも何かしらプラスになるような過ごし方を考える。ストレスはかけたくないから。
ー大企業社員はオワコンじゃない!
小川:最近、大企業なんてオワコンだから起業しろっていう風潮があるでしょう。あれは間違っていると思っているんですよ。
亀山:なぜですか?
小川:大企業にいながら何かを成し遂げるより、起業するほうが楽なんですよ。いまは誰でも簡単に起業して、資金調達までできる時代。以前僕はグリーにいたけど、グリーにいたまま対外的に注目されるのはものすごく難しかったと思う。でも、外に出てちょっと変わったことをすれば、注目してもらえる。そう考えたら、起業家になるほうが簡単なんです。個人として世の中に大きな働きかけができるしね。
亀山:それは小川さんのような人しか言えないコメントかも(笑)。
小川:実際、社内で予算をとるより、起業して資金調達するほうがはるかに楽だと思う。だからこそ、最近では起業家がコモディティ化している気もする。ただ、起業しても大企業レベルのパワーを持つには最低10年はかかるし、成功確率は1000分の1とか、1万分の1くらいのレベル。大成功して上場までいっても、たとえばドコモの資本力にくらべたら大人と子供くらいの差があるけれど。
亀山:僕はむしろ、ベンチャーでの資金調達のほうが難しいというイメージでした。感じるストレスも僕らのような企業の社員よりも10倍くらいありそうな気がします。
小川:僕は何事も他人に決められたなくないというか、なんでも自分で決めたいタイプだからかも(笑)。そのかわり、責任もとらなければいけないけれど。起業家としてのリスクと自分で決められないストレスを天秤にかけたら、自分でリスクをとるほうが楽に感じる。大きな企業にいる人は逆で、起業するリスクのほうが大きく感じるのかも。
亀山:なるほど。そうかもしれませんね。
小川:起業して成功するか、大企業で出世して役員まで上りつめるかの違いですよ。どちらを目指すかはそれぞれの性格や自身の選択。リスクテイクの種類が違うだけで、中身はそれほど変わらない。だから、大企業社員がオワコンなわけじゃないし、すべての起業家がすぐれているわけでもない。
亀山:考えてみると大きな企業で上までいくには時間がかかりますよね。その差はあるかもしれません。
小川:そう考えると、会社員をしながら新しいことを学んで、副業で会社を創業できたらベストかもね。
→ 後編「ベンチャーと大企業。その違いはやはり「お金」と「人材」?」
へ続く
(※1)「レンタル移籍」とは?
大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2016年のサービス開始以降、計24社48名以上のレンタル移籍が行なわれている(※2019年8月現在)。
プロフィール
株式会社VALU 代表取締役 小川晃平さん
慶應義塾大学大学院卒業後、2011年株式会社グリーに入社。入社2年目よりグリー米国支社勤務、帰国後はホテル予約サイトなどの新規事業開発に携わる。2014年にグリー退社後は、フリーランスとして複数の新規事業を立ち上げ、2016年12月にVALUを創業。※株式会社VALUは、個人を応援するアプリ「VALU」を開発・提供するベンチャー企業。2017年の「VALU」リリース以降、「個人の信用を評価する」という新しい切り口のサービスが話題を呼んでいる。
NTTドコモ 亀山直季さん
2010年にNTTドコモ入社。入社後は4年ほど写真関連の事業企画・開発に携わる。その後3年間は人事部採用育成担当として若手社員の育成に尽力、2017年から現職のイノベーション統括部グロース・デザイン担当として新規事業開発を行う。
↓ 亀山さんの移籍中のストーリーはこちら↓
https://loandeal.jp/loandeal-docomo-20190620
協力:株式会社NTTドコモ、株式会社VALU
Interview:山崎潤子
「&ローンディール」編集部よりお知らせ!
【参加費無料】9月18日(水) 開催
大企業の革新に伴走するマクアケ & ローンディールの『人材覚醒論』
どうしたら新規事業・新サービスを生み出す人材になれるのか?
Makuake Incubation StudioとLoanDEALが見てきた「人が変わる瞬間」とは? 技術を新たな価値に変え製品化までをサポートする「Makuake Incubation Studio」と、レンタル移籍を通して新規事業を創出できる人材を育てる「LoanDEAL」による、コラボレーションセミナーを開催します!
<イベント概要>
日程:2019年9月18日(水)
時間:16:00~17:30(開場15:45~)
登壇者:
・株式会社マクアケ 共同創業者/取締役 木内 文昭
・株式会社ローンディール 代表取締役社長 原田 未来
場所:BASE Q(千代田区有楽町1-1-2 東京ミッドタウン日比谷 6F)
対象:大企業の新規事業開発部門や研究開発部門、および関連する人事部門の方
詳細・お申込はこちら → https://eventregist.com/e/loandeal_makuake0918