ベンチャーと大企業。その違いはやはり「お金」と「人材」? 【対談 後編】
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ベンチャー企業経営者が語る 「大企業社員はオワコンじゃない!」 そのワケは?【前編】
ー僕もドコモに移籍してみたくなった(笑)
亀山:僕がVALUにレンタル移籍することを決めたのは、個人としてのスキルアップと、ベンチャーの開発プロセス、不明瞭な中での意思決定を知りたいという理由でした。ドコモに帰ってから感じたのは、社内のみんなが、僕の話を思った以上に興味を持って聞いてくれるようになったことです。
小川:どうこうことですか?
亀山:たとえば、大手企業が多くの人員をかけてアプリを開発しているところを、VALUではたった5人のチームでやっている。その経験を持ち帰れたわけです。僕らには「できるはずがない」という思い込みがありましたが、実際の体験・体感をしていれば「そうか」と聞く耳を持ってくれる。言葉に力が出てくるんです。
小川:たしかに、実際の体験って大きいですよね。
亀山:小川さんから「5人いれば事業は立ち上げられる」という話を聞いたことがあって、その言葉を社内でも話しています。
小川:エンジニア3人と、PM、デザイナーがいればOK。3人くらいでも全然可能。でも、大きな企業になると何をするにも承認などの難しさが出てくるだろうけど。
亀山:VALUは個人の裁量権が大きいですよね。個人を信用しているというか。
小川:やっぱり自分で決めたプロダクトや、自分の意見が通ったプロダクトって愛着がわくし、逆にいえば愛着がわかないと伸びない。だからこそ、意図的に個人の意見を大切にしているところはあります。
亀山:それは僕もVALUにいて、強く感じたことですね。メンバーはみんなプロダクトが大好きで、「自分にとってVALUはこうあるべきだ」ということを自分の言葉で語れる。「社長はこう言ってるけど、俺はこう思う」って話せるオープンな環境もある。
小川:ただ、大企業とは資本力が違うし、最初からステージが違う。大企業は僕らのようなノーガード戦法じゃなくて、リスクテイクは必要ですよ。
亀山:ベンチャーと大企業の違いって、結局そこかもしれませんね。大企業が新規事業をやれば、既存事業に利益相反のような形で影響を与えてしまうこともありますし。
小川:そこで別会社をつくるとか、どこの会社もいろいろと試行錯誤しているよね。
亀山:そうですね。ドコモでも新しいことにチャレンジしたいという社員を集めてコンテストをするみたいな試みをしていますし、レンタル移籍も社内に新しい風を入れるひとつの手立てになっています。
小川:僕も3ヵ月くらいドコモに移籍してみたくなったなあ(笑)。
ーベンチャーと大企業
その違いはやはり「お金」と「人材」?
小川:ベンチャーと大企業をくらべれば、やはりお金と人材の違いがある。あえてスタートアップの長所をあげるなら、大きな資本はないけど、めんどうなルールもない(笑)。いろいろな意味で自由で、無法地帯だから楽しいという。そういう意味では、大企業はルールがきちんとしすぎていておもしろくない。長所と短所は相反しているよね。
亀山:僕にとってのベンチャー企業というのは「人の力を信じること」を感じられる場所でした。人の強さが最大の長所なんだと思います。だからこそ、人がいなくなったときのリスクもある。小川さんが今日死んだら、この会社はどうなるんだろうって。僕が今日死んでも、ドコモにはなんの影響もないですから。大企業は組織であれプロセスであれ、長期で運用していくことを前提としてつくられているんですよね。
小川:なるほど。
亀山:小川さんが、大手企業に期待することはありますか?
小川:お金ください(笑)、っていうのは冗談だけど、既存の発注先だけじゃなくて、もっとベンチャーやスタートアップにも仕事を発注してくれればいいのにとは思いますね。きっとこれまでの3分の1くらいの予算でできるんじゃないかな。
亀山:まだまだお互いの距離が遠いというか、大企業VS.ベンチャーという対比構造がありますよね。
小川:大企業の与信管理のようなものもあるでしょう。ある程度相手に資本力や実績がないといけないというような。
亀山:知らないものに対する恐怖心のようなものもあると思います。ただ、社会全体の世代交代が進めば、もう少し変わってくるでしょうね。
小川:たしかにそうですね。
亀山:本当はもっとお互い融合して働ければと思いますよね。大企業側からもベンチャー企業を認め、歩み寄らなければいけないということも、改めて強く感じています。
小川:いい意味でも悪い意味でも、終身雇用制度が邪魔しているのかも。これからは企業も人も、もっと合理的で自由に仕事ができるようになればいいなと思っています。
END
「レンタル移籍」とは?
大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2016年のサービス開始以降、計24社48名以上のレンタル移籍が行なわれている(※2019年8月現在)。
プロフィール
株式会社VALU 代表取締役 小川晃平さん
慶應義塾大学大学院卒業後、2011年株式会社グリーに入社。入社2年目よりグリー米国支社勤務、帰国後はホテル予約サイトなどの新規事業開発に携わる。2014年にグリー退社後は、フリーランスとして複数の新規事業を立ち上げ、2016年12月にVALUを創業。※株式会社VALUは、個人を応援するアプリ「VALU」を開発・提供するベンチャー企業。2017年の「VALU」リリース以降、「個人の信用を評価する」という新しい切り口のサービスが話題を呼んでいる。
NTTドコモ 亀山直季さん
2010年にNTTドコモ入社。入社後は4年ほど写真関連の事業企画・開発に携わる。その後3年間は人事部採用育成担当として若手社員の育成に尽力、2017年から現職のイノベーション統括部グロース・デザイン担当として新規事業開発を行う。
↓ 亀山さんの移籍中のストーリーはこちら↓
https://loandeal.jp/loandeal-docomo-20190620
協力:株式会社NTTドコモ、株式会社VALU
Interview:山崎潤子
「&ローンディール」編集部よりお知らせ!
【参加費無料】9月18日(水) 開催
大企業の革新に伴走するマクアケ & ローンディールの『人材覚醒論』
どうしたら新規事業・新サービスを生み出す人材になれるのか?
Makuake Incubation StudioとLoanDEALが見てきた「人が変わる瞬間」とは? 技術を新たな価値に変え製品化までをサポートする「Makuake Incubation Studio」と、レンタル移籍を通して新規事業を創出できる人材を育てる「LoanDEAL」による、コラボレーションセミナーを開催します!
<イベント概要>
日程:2019年9月18日(水)
時間:16:00~17:30(開場15:45~)
登壇者:
・株式会社マクアケ 共同創業者/取締役 木内 文昭
・株式会社ローンディール 代表取締役社長 原田 未来
場所:BASE Q(千代田区有楽町1-1-2 東京ミッドタウン日比谷 6F)
対象:大企業の新規事業開発部門や研究開発部門、および関連する人事部門の方
詳細・お申込はこちら → https://eventregist.com/e/loandeal_makuake0918