他流試合を通じて、ミドルマネジメント層の思考力を高める「outsight」の仕掛け
「outsight」は、他流試合でミドルマネジメント層の意識変革を起こす週1回90分のオンラインプログラムです。これまで、60社534人(※ 2024年10月時点)が参加。ベンチャー企業が抱える事業課題が「お題」として提示され、ベンチャー経営者・ファシリテーターと共に、参加者が解決策を議論する形式。解決策の提案を通じて、これからのマネジメントに必要な「高度な思考力が身に付く」「他流試合ができる」ことが大きな特徴です。
また半年に一度、過去の参加者が集う「オフサイト」というリアル(オンラインとのハイブリッド)な場も設け、(ベンチャー企業に対して)優秀な解決策を提案した方の「思考プロセス」を大公開! 参加者が自身の思考プロセスをアップデートする機会、新たな他流試合の機会を提供しています。
そこで今回は、参加者約30名が集結した2024年9月開催の「オフサイト」を振り返りながら、「outsight」が仕掛ける、思考力を高める方法・他流試合について解説していきます。
目次
忙しいミドルマネジメント層に週1回の越境を
そもそも「outsight」がなぜ、ミドルマネジメント層の意識変革を起こすために、週1回90分のオンラインプログラムを実施しているのかというと、越境の第一歩をここから踏み出して欲しいと考えているからです。
大企業のミドルマネジメント層に、いきなり「半年や1年間、現場を離れて越境しましょう」と提案をしても、現業の忙しさや立場上、難しいことがあります。一方で、「内部の業務に集中する時間が増え、外部の情報やつながりに目を向ける機会が減っている」「思考を深める時間・これまでのやり方をアップデートする機会が持てていない」という課題感があるのも事実。
「outsight」では、ベンチャーが抱える課題への解決策の提案を通じて、個人としての発想力を鍛えることはもちろん、マネジメントに必要な思考力を高めていきます。他社の参加者の提案やベンチャー企業からのフィードバック等を通じた他流試合によって、自分とは異なる考えや視点を取り入れ、自身の思考プロセスが整理・アップデートされるのも特徴です。
そうした経験を、まずは週1回から無理なく始めていただく。そして、自らの変化や成長を実感することで、プログラム以外の時間でも日常的に越境していただくようなきっかけにしたいと考えています。
「ものごとを体系立てて考えられるようになった」。成績優秀者が身に着けた多様な思考法
では、実際にoutsightに参加した方々は、どのような思考を身につけているのでしょうか。そして、outsightに参加したことで、どのような変化があったのでしょうか。今回行われた「オフサイト」では、2024年1月〜6月の半年の間に特に優秀な解決策(ベンチャー側が評価)を提案した4名が「なぜoutsightに参加し、どのように思考しているのか。どんな変化があったか」を紹介してくれました。一部を抜粋してご紹介します。
● CASE1:株式会社村田製作所・Sさん
お一人目は、株式会社村田製作所のSさん。長年営業に携わる中で、「自社の商品の技術を活かして、他社と新しい付加価値を出すようなことがしたい」という思いで参加しました。
Sさんは、outsightに参加したことで、「ものごとを体系立てて考えられるようになった」と言います。
「これまで、自身のアイデアを提案する際は、単に面白そうとか、奇をてらったような思いつきのアイデアを出していたので、的を得たものが出せないこともありました。でも、outsightで、毎回ベンチャー企業から出されるお題の解決策を考える中で、思考プロセスを整理できたことで、刺さりやすい提案が出せるようになりました。具体的には、SWOT分析を用いて、ベンチャーが持つ強み・弱みを出していき、事業の理解を深めていきました。そうして、ベンチャーの要素を因数分解していくことで、合致する市場を見極められるようになりましたね」とのこと。
そして、日常の業務においても、「(outsightでは)1分間で自分の考えを発表しなければならないので、短い中でどのように説明したら伝わるのか、掴めるようになりました。おかげで自信もつき、役員と対話をするときも意識して実践しています。また、新規事業の思考プロセスがわかり、身につけた思考プロセスを営業活動に活かすことができています」と話します。
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● CASE2:株式会社NTTデータCCS・安藤大之さん
お二人目は、株式会社NTTデータCCSの安藤大之さん。安藤さんは「新規事業に向けて動いていかねばならない中で、顧客のことを理解するメンバーを増やしていく必要がある」という危機感を持って参加しました。
安藤さんは、outsightに参加したことで、「いくつものアイデアを同時に考えられるようになった」と話します。
「まずは徹底的な情報収集が大事だと思いました。アイデアを出す上で、どういう情報を拾えば良いのか? 相手にどう質問したら必要な情報が導き出せるかなど、体系的にヒアリングできるようになりました。その上で、外してはいけない要件とズラしてもいいことを見極め、それらを組み合わせることで引き出しが増え、多くのアイデアを出せるように。実は、いままでは1つアイデアを思いつくと、それで良いと考えてしまい、それ以上思考を深めたり、複数のアイデアを出すことができませんでしたので、大きな変化です」とのこと。
また、「思考プロセスが整理できたことで、提案する際、説得力が出るようになりましたし、他者のアイデアを評価する時にも、ロジカルにフィードバックできるようになった」と話します。
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● CASE3:大手メーカー勤務・衣松徹哉さん
そして三人目は大手メーカー勤務の衣松徹哉さん。「提案が保守的だと言われることがあり、さまざまな人の意見を聞いてこれまでとは違う提案をできるようにしたい」という思いで参加しました。
衣松さんは、outsightに参加したことで、「身の回りの社会課題と接続してアイデアを考えられるようになった」と話します。
「最初は、決まった思考プロセスというのはなくて、思いついた面白いアイデアを提案するくらいしかできていませんでした。でも周囲のみなさんの考えを聞く中で、提案する上で何が大事なのかが見えてきて、自分なりに思考プロセスが体系化されていきました。たとえば、ベンチャー企業の事前情報をよく調べて、企業の特徴をタグ化(ターゲットや商品の特徴など)しました。そのタグと身の回りの社会課題とつなげて考えられるようになりました」とのこと。
そうした習慣がついたことで、「業務でも顧客と話す前に、事前にインプットする情報の質と量を高められるようになった。その上で、顧客に直接話を聞いて、深めていく工夫ができています」と話します。
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● CASE4:小野薬品工業株式会社・篠田篤さん
そして四人目は、小野薬品工業株式会社・篠田篤さん。篠田さんは、半年間で一番、優秀な解決策を出しました。日々の他流試合の重要性を感じ、outsightに参加。
篠田さんは、outsightに参加したことで、「できない理由を考えるのではなく、どうしたら実現できるかという解決思考マインドになった」と話します。
篠田さんは「レンタル移籍」を通じて、1年間ベンチャーにフルコミットした越境の経験があり、その経験が活きたと話します。「ベンチャーの人とコミュニケーションを取る中で、ロジックではなく思いで動いている人たちが多くいました。なので、解決策を出す際は、その視点を大事にしようと思いました。経営者の熱量はどこにあるのか?こだわりポイントはどこなのか? を意識して見るようにして、大事にしていることに寄り添う工夫をしていました」とのこと。
また、outsightでのフィードバックも参考になった様子。「(outsightでは)解決策に対してフィードバックがもらえるのですが、『自分にはそういう視点はなかった』『こういう切り口もあるのか』など、次回以降の切り口を考える時に活かすことができました」。
そしてマインドにも変化があったとのことで、「解決思考も身につきました。ベンチャーは資源がないところからどうやったら実現できるか? みたいなことを考えているので、自分も、できない理由を考えるのではなく、どうしたらできるかを考えるマインドになりました」と話します。
ー身につけた思考力は、日常のマネジメント業務でも活かせる
このようにして身につけた自分なりの思考法は、自身の発想の質が高まることはもちろん、マネジメント業務全般において役立てることができます。
1. 質の高い意思決定の実現
ミドルマネジメント層が思考力を高めることで、より精度の高い意思決定が可能となります。さまざまなアイデアや提案を受ける際に、論理的かつ迅速に判断できるようになり、リスクを最小限に抑えた上で最適な選択を行うことが期待できます。
2. 部下に対して的確な評価とフィードバック・指導の提供
思考力の向上により、部下や後輩の提案や意見を対し、適切に評価・フィードバックできるようになります。的確かつ明確な指示を出すことで、チーム力の強化にもつながります。
また、部下やチームメンバーに対して、建設的に「思考法」を教えることができますので、メンバーの問題解決力や戦略的思考の向上、自律的な行動を促すことができます。
3. 組織全体のパフォーマンス向上
思考力の高いマネジメント層が率いることで、組織全体のコミュニケーションが向上し、効率的かつ円滑に、プロジェクトを進行できる環境が整います。明確な思考と指示による迅速な意思決定が可能になり、業務の質が高まり、組織全体のパフォーマンスに良い影響を与えます。
このように、ミドルマネジメント層が日常で必要とする力が身につきますので、組織の持続的成長に直結すると言えます。
ー「他流試合の日常化」で生まれた、新しい動き
こうして週1回のオンラインプログラムだけではなく、半年に1回「オフサイト」を実施し、優秀者の思考プロセスを知り、思考をアップデートする機会を設けています。
今回の「オフサイト」でも、参加者から「そういうやり方があったのか」「自分と重なる部分があった」など、他者の発想や工夫を学べた様子。
また「オフサイト」は、過去に参加したメンバーが、プログラムが終わった後でも、定期的に他流試合できる機会としても活用しています。「他流試合」がスポットで終わることなく、日常化することが大事ですので、そのきっかけになればと考えています。
実際、「outsight」を通じて他流試合の大切さを知ったことから、業務において、「積極的に他社と連絡を取るようになった」「自分からアプローチして関係を作るようになった」という声も多く聞きます。
また、「outsightでの出会いをきっかけに、協業に向けたディスカッションに発展した」という方もいらっしゃり、このような事例が増え続けています。
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これまでご紹介してきたように、「outsight」では、日々忙しいミドルマネジメント層に対して、自らの思考力を高める機会、そして他流試合の機会を提供しています。そして、プログラムをきっかけに、さまざまな動きも生まれています。
ここでは紹介ができなかった事例もありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。