導入担当者の声 〜京セラコミュニケーションシステム 大田 千夏さん〜

 京セラコミュニケーションシステム株式会社(以下、KCCS)が2025年4月より新たに導入した「レンタル移籍」と「side project」の2つの越境学習プログラム。社員の自律的な成長と組織全体の活性化を目的としたこの取り組みは、どのような背景から生まれ、どのように実現されたのでしょうか。DE&I推進課の大田千夏さんに、導入の舞台裏から今後の展望まで、詳しくお話を伺いました。

<基本情報>
■企業プロフィール
・企業名    :京セラコミュニケーションシステム株式会社
・業種/事業内容:情報通信
・導入開始時期 :2025年4月〜
・導入プログラム:「レンタル移籍」「side project」
・人数・期間  :「レンタル移籍」2名(1年間)、「side project」2名(3ヶ月)

■担当者プロフィール
・お名前    :大田 千夏さん
・ご所属    :人事統括部 DE&I推進課


【導入のきっかけ】

ー越境プログラムの導入を検討し始めたきっかけは何でしたか?

 KCCSでは、若手社員が研究レポートを発表するイベントがあり、私自身がそのテーマとして「越境学習」を選んだのが始まりです。当時は人事ではなく経営コンサルの部門に所属しており、キャリア支援の仕組みについて関心を持っていました。そんな中、たまたま他社から人材を受け入れているお客様の話を聞き、「外の視点を社内に入れることの価値」に魅力を感じました。

 研究レポートの本選通過をきっかけに人事部門へ異動し、越境学習の導入に向けた制度づくりを担当することになりました。組織的な導入検討を始めたのは、その時からです。

ーその中でも、ローンディールのプログラムに関心を持ったポイントは何でしたか?
 1年間フルタイムでベンチャー企業で働く「レンタル移籍」と、業務時間の20%程度を活用して3ヶ月間ベンチャー企業のプロジェクトに参加できる「side project」という、2種類のプログラムを提供している点が魅力でした。社員がどちらに興味を持つか分からなかったので、ニーズに合う方を選択できる形にできればと思いました。ローンディール社のウェブサイトには、様々な企業から越境している方々のインタビューが多数掲載されており、具体的なイメージを膨らませる上でとても参考になりました。


【制度設計と導入の流れ】

ー導入はどのように決まりましたか?社内調整などで苦労したことはありますか?

 研究レポート発表の段階から社長や役員の理解・後押しがあり、直属の上司も人事のトップだったため、承認ルートも明確で、導入自体は比較的スムーズでした。KCCSでは「自律と選択」をコンセプトに、「自分のキャリア・成長は自分で決める」という考えのもと、様々なキャリア支援制度を展開しています。その1つとして、異動せずに一定期間他部門の仕事を体験できる仕組みもありましたが、よりチャレンジできる環境として、社外にも実践の場を広げようと越境学習を導入することに。既存の社内体験制度を「社内インターン」、新たに取り入れた越境プログラムを「社外インターン」として位置付け、制度化しました。

 ただ、私自身が人事や労務の経験がなかったため、制度設計の細かな部分で非常に苦労しました。プログラム参加中の労務や人事上の取り扱いについては、すでにレンタル移籍を導入していた京セラ本社の仕組みを参考にしたり、受け入れ先となるベンチャー企業との契約形態などは法務部門と調整を重ねるなど、周囲の力を借りながら一歩ずつ進めていった形です。

ー制度設計で工夫されたことはありますか?

 制度の立ち上げにあたり、既存のキャリア支援制度との違いをどう示すか、誰を対象にするかなど、社内での打ち出し方については、様々な方にフィードバックをもらいながら工夫したところです。当時は『ゆるい職場』という書籍が話題となり、「整った環境にいるのに、若手が次々と辞めていく」「チャレンジングな機会が不足しているのでは」といった課題意識が広がっていたことも背景にあります。一方で、「レンタル移籍はハードすぎるのでは」との懸念の声もありましたが、それでも「だからこそ挑戦したい」と感じる社員がいるはずだという思いがありました。

 社内公募に向けては説明会を実施し、告知のために動画を制作したのも工夫した点です。社内朝礼でアナウンスし、入社10年前後の社員に向けて「今の仕事に満足しているけど、このままでいいのだろうか…?」「外の世界で通用するのか?」「会社の枠を超えてチャレンジしてみませんか?」と問いかけたところ、説明会には約100名が参加。レンタル移籍を「長期コース」、side projectを「短期コース」として、希望のコースを選択して応募できる形で募集を行ったところ、長期コースに7名、短期コースに5名、合計12名の応募が集まりました。

ー参加者の人選はどのように行ったのですか?

 まず応募書類をもとに人事面談を実施して志望動機を確認し、所属部門の責任者との面談を経て、最終的には役員幹部による会議で決定しました。社外に人を送り出すのは初の試みだったので、役員間でも慎重な議論が重ねられたのが印象的です。


【導入してみて気づいたこと】

ー導入してみての第一印象や、気づいたことがあれば教えてください。

 導入からまだ日が浅いですが、side projectに参加している2名の業務スピードには驚かされました。週に20%という稼働は、社内インターンと同程度の稼働時間のはずですが、1週間での進捗やアウトプットの質も量も違います。レンタル移籍中の2名も、全く異なる環境を楽しみながら、積極的に取り組んでいます。毎週、参加者たちから届く週報を通じて、それぞれの成長や手応えを感じられています。


【これからの展望】

ー今後、プログラムや参加者にどんなことを期待されていますか?

 この制度に込めた一番の思いは、社外での経験を経て得た「仕事の進め方」や「考え方」など、外の世界でしか得られない「マインド」を社内に持ち帰り、周囲にも展開してほしいということです。帰任後は元の部署に戻りますが、社外インターンでの経験を前向きに活かし社内にポジティブな影響をもたらしてくれたら嬉しいです。

ー最後に、越境プログラムの導入担当者としての意気込みをお願いします。

 今回、レンタル移籍と短期コースを同時に募集したのは、ローンディールさんでも初めての事例と伺いました。正直、社員がどちらに興味を持つか分からず、1つに絞りきれなかったというのが本音です。だからこそ、両方をまずはトライアルとしてやってみることにしました。私自身、人事統括部に異動して今年で3年目、人事経験もありませんでしたが、研究レポートをきっかけに、周囲の協力を得ながら制度づくりに取り組むことができました。これからも、働く社員たちの選択肢を増やし、よりイキイキと働いてもらえるような組織作りをしていけたらと思っています。

大田さん(写真右)と、同じくDE&I推進課で社外インターン制度の事務局を務める櫻井瑞穂さん(写真左)

<関連情報>

京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)が「レンタル移籍」と「side project」を同時導入! 『自律と選択』をコンセプトに、キャリア支援制度の選択肢を社外に拡張。(2025/5/23 プレスリリース)

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