ビジネスへの熱量を社内で高めるために…【レンタル移籍者×経営者 特別対談】
2019年10月より、ラジオ番組「森清華のLife is the journey ※」にて、月に1度、レンタル移籍者および移籍先のベンチャー企業経営者をゲストに迎えた放送が始まりました。今回の放送は、日本郵便株式会社の安井亮太(やすい・りょうた)さんと、ユニロボット株式会社 代表の酒井拓(さかい・たく)さんをゲストに迎え、レンタル移籍での経験や、リスナーへのメッセージを語ってもらいました。
※ 毎週水曜 午後9:00から、かわさきエフエム(71.9MHz)にて放送中。企業経営者や各界のスペシャリストなどをゲストに迎え、これからのキャリアや生き方に迷い考える、特に20代後半・30~40代のビジネスパーソンに対し、一歩踏み出すための背中を押すことが目的の番組。番組自体は今回で181回目。ローンディールの仕組みを利用してレンタル移籍を行った移籍者と移籍先の経営者をゲストに迎える回は、月に1回の頻度で放送予定。パーソナリティーの森清華は、ローンディールのメンターとしても活躍中。
本記事では、当日の放送内容のダイジェストをお届けします。なお、当日の番組アーカイブも、spotifyおよび「森清華のLife is the journey 」にて視聴が可能です。
目次
—自分が成長するためにはどんなことをしたらいいのか? 漠然と考えていた時に…
森さん:今日はレンタル移籍の受け入れ先である、ユニロボット株式会社の代表取締役 酒井拓さんと、移籍者である日本郵便株式会社IT企画部 主任の安井亮太さんをゲストにお迎えしました。まず、ユニロボット株式会社はどのような事業展開をされているのか、ご紹介いただけますでしょうか?
酒井さん:ユニロボット株式会社は、「unibo(ユニボ)」というコミュニケーションロボットを開発しています。個人の趣味嗜好や生活習慣などを、会話をしながら学び、その人の心に寄り添うパーソナライズされたロボットです。法人とご家庭向けに販売しておりまして。たとえば、ホテルでのコンシェルジュロボットや、企業の受付、病院や介護施設などで活用していただいています。家庭向けは、家電量販店などで販売しています。
森さん:そんなユニロボット社に移籍された安井さんですが、現在はどのようなお仕事をされていらっしゃるのでしょうか?
安井さん:私は日本郵便のIT企画部にいまして、物流システムの開発をしています。たとえば、郵便物や荷物がどこにあるのか、ということをわかりやすくなるようなシステムを開発しており、今は新しいシステムの企画や構想を練っているところです。
森さん:2019年6月から半年間レンタル移籍をされていらっしゃいますが、安井さんはなぜ、レンタル移籍に挑戦をしようと思われたのでしょうか?
安井さん:私は日本郵便で長く働いているのですが、IT企画部以外、経験したことがなくて。自分が成長するためにはどんなことをしたらいいのか? って漠然と考えていたんです。そんな時に、研修担当者から「全然違うビジネスが経験できる仕組みがあるよ」って、レンタル移籍のことを教えてもらいまして。これは、IT企画部でやっていること以外のビジネスを見させてもらえるかもしれないと期待して、参加させてもらいました。
—酒井社長の熱量やパワーに惹かれて
森さん:なぜ、多くのベンチャー企業の中から、ユニロボット社に行こうと決めたのでしょうか?
安井さん:移籍候の候補には、ロボットや医療など、魅力的な会社がたくさんありまして。そのように魅力的な会社が多い中で、酒井社長の創業者としての熱量やパワーにすごく惹かれました。自分が成長するためには、エネルギッシュな方と接して、多くのパワーをもらった方がいいだろうと直感で思いまして、すぐに決めましたね。
森さん:そんな安井さんと面談で会われて、どのようなことを思われましたか?
酒井さん:テキパキ元気よく何でも話をしてくれて、すごく人懐っこいですし。挑戦していきたいという熱量が人一倍強くて。一緒にやるんだったら、ベンチャースピリットを内に秘めている人がいいなと思っていたので、安井さんならって思いました。
森さん:ではお互い気持ちが一致してスタートしたんですね。 安井さんは当時、入社何年目だったのですか?
安井さん:私は入社6年目でしたが、本社に来るまでが長くて。入社してまずは郵便局の窓口や配達を経験して、その後、支社で1年半くらい働いて。3年前にIT企画部に配属になりました。そこで、物流システムの企画・開発に関わるようになりました。
森さん:この6年目でいろんなことを感じながらレンタル移籍を決めた、ということなんですね。ちなみに酒井さんが、30歳前後くらいの頃は、どんなことを考えて過ごしていらっしゃったのでしょうか?
酒井さん:20代は勉強するステージで、30代に入ると、自分は人生で何を成し遂げたいか? 自分の夢は何かって、20代の頃よりリアルに自分自身のことを考えていました。家庭を持つってことも含めて、どういう生き方をしたいのかと、自分らしさを追求していくというのが30代の頃の気持ちでした。
森さん:自分のことも考えるし、一方、ご家族や周りのことを考えて、ということですよね。ところで酒井さんは、なぜロボットを手がけようと思われたのでしょうか?
酒井さん:私は昔から「ドラえもん」が好きでして。やっぱり「夢」というものをテクノロジーで考えた時に、ワクワクするもののシンボルといえば、ドラえもんのような存在じゃないかなと。また、3.11以降、社会貢献活動をしていたので、社会に何か貢献しながら変革を与えるようなテクノロジーをつくりたいと考えた結果、パートナーロボットを思いつきました。「ドラえもん」のようなパートナーロボットがつくれたらいいなって。
—心にセーブがかかって、提案ができない
森さん:だから「unibo」は親しみがあるんでしょうね。そんなユニロボット社で、安井さんの移籍がスタートするわけですが、安井さんはどういう仕事をされていたんですか?
安井さん:2019年6月に移籍が始まったのですが、営業をやらせてもらいました。日本郵便では他の企業の人たちと話すことが少ない部署にいたんですけど、そんな環境から、いきなりの営業で。「unibo」という可愛らしいロボットを、法人のお客様に対して、「(「unibo」を用いて)こういうビジネスがきるんじゃないか?」などという、企画提案をさせていただきました。
森さん:営業は初ということで、勇気がいりますよね?
安井さん:はい、最初はビビりながら営業活動をやらせてもらっていました(笑)。
森さん:ユニロボット社に行く前と行った後で、何かギャップは感じましたか?
安井さん:ギャップといいますか…、うまくいかなかったことで言うと、前半の頃は「ユニロボット社の看板を背負っているんだ!」と気負ってしまっていましたね…。
森さん:それは、どういうことなのでしょうか?
安井さん:たとえばお客様のところに行って、お客様のビジネスとユニロボット社のビジネスを掛け合わせることで、こんな世界が描けるんじゃないか…というようなご提案していくんですね。そこで、本当はすごく大きな世界が描けるかもしれないのに、看板を背負っているからヘタな提案はできないって、心のセーブがかかってしまって…。結局、小さな世界でしか提案ができず、失敗だったなって。
森さん:ロボットをお客様に提案していくことの難しさは、酒井さんから見てどんなところにあるのでしょうか?
酒井さん:正直、まだあまりロボットが社会に導入されていないので、お客様がどういう活用がいいのかっていう利用シーンがイメージできないというのがあります。ですので、「こういうサービスがあるとみなさん喜んでいただけるんじゃないですか。そのためにはこういう使い方があります」って、提案する必要があります。その個別の提案をするために、会社さんに合わせて業界のことや企業のことを下調べする、というのが時間がかかると思います。
—「ゼロベースで考えていいよ」と後押しされた結果
森さん:お客様に合わせて、いろんな形にして提案していかなければいけない、ということなんですね。安井さんはどうやって突破していったのでしょうか?
安井さん:業界のことは調べていけばわかるんですけど、企業の看板を背負っているプレッシャーから、思い切った提案ができないでいたんですね。でも、困っている時に酒井社長が「ベンチャー企業はゼロの場所にあるんだから、君が何かしたからといって決してマイナスにはならないよ。ゼロベースで考えていいよ」って後押ししていただきました。それが心に響きまして…。以降「もっと思いきり提案していいんだ」って、営業トークもスムーズにできるようになりました。相手の話も引き出せるようになったことで、更に次の提案につながる…という良いサイクルが生まれました。
あの時の一言がなかったら、良い提案はできていなかったんだろうなって思いますね。
森さん:いろんなお客様と話を重ねていく中で、手応えをつかんだ瞬間、というのはあったのでしょうか?
安井さん:酒井社長と一緒に営業に行かせていただいたんですけど、酒井社長が話すと、お客様も乗り気になるといいますか、ロボットの魅力と酒井社長の魅力が重なって、「すごいビジネスができるんじゃないか、いいサービスが生まれるんじゃないか」って未来が描けるんです。でも、私はロボットの魅力しか伝えることができませんでした。
…ですが、移籍の最後の最後に、自分が提案したことによる結果が出せたと思います。それまでも棚ぼたでロボットが売れるということはありました。でも、私がいるうちに間に合うようにということで、急いで購入してくださったお客様がいらっしゃいました。社内手続きを早めるなどの調整もしてくださり、移籍最終日にギリギリ、発注いただくことができました。達成感がありましたね。
森さん:そんな安井さんの魅力は、酒井さんから見て、どんなところにあると感じますか?
酒井さん:そうですね。粘り強いですし、自分自身に妥協しない。とにかく自分ができることを追求して、深堀りしていく。そういう誠実さと熱心に取り組むところが安井さんのいいところだと思っています。
森さん:安井さんは、移籍を終えて移籍前の部署に戻られたということですけれども。移籍前と後、何か変化のようなものを感じていらっしゃいますか?
安井さん:(ユニロボット社で働いたことで)ベンチャーマインドというものを取得して戻れたんじゃないかなと思っています。特に、創業者のビジネスにかける熱量や誠実さ、そして未来を描く姿、そういうものを私も一部は引き継いで戻れたんじゃないかなと。なので今は、そういうマインドを会社の中で広げていくということに注力しています。ちょっとずつですが、周りの人たちとは、明るい未来の話ができているんじゃないかなって思います。
森さん:そういう実感がありますか?
安井さん:はい、ありますね。やっぱり一度外に出させてもらったので、恩返ししないといけないという思いもありますし、日本郵便を良くしていくんだ! という、社内の底力を発揮していくことを、当面の目標と考えています。
—いくつになっても人は成長できる
森さん:酒井さん、日本のロボット産業は、今後どうなっていくのでしょうか?
酒井さん:ロボットは、少子高齢化という観点と、テレワークが進んでいく中では、これから大きく伸びていくと思います。ロボットがいる世界というのが、5年後10年後という視点で、いろんなところで語られるようになってきている。その足固めに、2020年はロボットがいろんな場所で利活用されはじめ、2025年にかけて利用シーンが確立されて利用台数が増える。そして2030年にはいろんなところで拡散されている時代になると思っています。
森さん:最後に、これからの時代、自分の夢や思いを実現しようとしている方々に、背中を押すメッセージをお願いします。
安井さん:いくつになっても自分は成長できると思っています。この言葉をみなさんに伝えていきたいです。30代になったらどんどん成熟していくのかなって思っていたのですが、酒井社長を見ていたら、どんどん吸収して、それを次々に活用されていらっしゃいました。自分もいくつになっても成長していかないといけないって、思っています。
酒井さん:私はスティーブ・ジョブズが好きで。「今日が最後の日のように過ごそう」という言葉を、自分の中でずっと大事にしているのですが。今日が仮に最後だったときに、自分が仕事に対して、家族に対して、そして周囲に対してどう接するか、それを毎朝起きたときに考えるようにしています。そうやって1日1日をすごく大事に、過ごしています。
リスナーへのメッセージを色紙に込めて
写真中央:日本郵便 安井亮太さん。写真右:ユニロボット酒井拓さん。
写真左:パーソナリティの森清華さん。
レンタル移籍者と移籍先の経営者をゲストに迎えた「森清華のLife is the journey」、次回の放送は5月6日(水)を予定しています。スマートフォンのインターネットラジオアプリ「Listen Radio(リスラジ)」をダウンロードして、「ジャンルから選ぶ」を選択→「カテゴリ」を選択→「全国のラジオ局」を選択→「かわさきエフエム」を選択して聞くことができます。これまでの放送もspotifyにて視聴可能です。
【ユニロボットさんより人材募集のお知らせ】
今回、安井さんがレンタル移籍をしたユニロボットさんでは、ソフトウェアエンジニアを募集しているそうです。夢を追いかけられる/コンセプトに賛同頂ける方、世界中の誰もかたちにしたことのないソリューションをチームで突破していきた方、ぜひ、チェックしてみてください。→採用情報はこちら
【レンタル移籍とは?】
大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2016年のサービス開始以降、計36社95名のレンタル移籍が行なわれている(※2020年4月実績)。
協力:日本郵便株式会社 / ユニロボット株式会社
Report:小林こず恵