行動したことで思い出した、私がここで働く理由 by 松尾朋子

「悔しい・・・」
私は27年間生きてきて、たった1年間のベンチャー留職で、数え切れないほどの悔しさを経験しました。でもその悔しさを乗り越えたからこそ、自分の殻を破り、今後の自分の人生においてとても大切なことを学ぶことができました。
この1年間でどんな変化があってその思いに辿りついたのか?
今自社に戻り、感じていることを思いのままに綴ってみようと思います。
仕事がつまらなくて悩んでいるそんな方に少しでも、私の経験が力になれば嬉しいです。

パナソニック 松尾朋子

ー「レンタル移籍」を志望した背景と移籍先ベンチャー企業の選定理由

2015年4月、期待に胸を躍らせ、私はパナソニックに入社しました。

家の中、建物の中、いろいろなところで人々の生活を支えているパナソニックの商品、海外の無電化地域にあかりを届けるCSR活動を見て、人の温かみのある社風を感じ、社会の公器のこの会社なら新しい文化を生み出すことができると思いました。

入社してからずっと営業を担っており、照明器具や配線器具などの電設資材を代理店や電気工事会社に販売する仕事をしていました。電機の知識が乏しかった新人の頃の私に対して、代理店さんや電気工事の職人さんはいつも優しく、時に厳しく接してくださり、たくさんのことを教わりました。

しかし、代理店も工事店もメーカーも…、皆いつも忙しく、疲れきっているように感じました。歴史ある建設業界の現場は、材料の発注も、職人の現場応援要請も、経理業務も人力頼りばかりで、忙しい日々の仕事にさらに拍車をかけていたのです。

私も、いつの間にか入社したときの思いを忘れ、目の前の仕事のことしか考えられない状態でした。「この状況を何とかして変えていきたい」と思い、社内で公募されていた留職(レンタル移籍)を志望しました。

移籍先にはローカルワークスというITのベンチャー企業を希望しました。ローカルワークスは「テクノロジーとアイデアで建設業界をアップデートする」ことをミッションに掲げ、信頼性の可視化による信用の創造と、仕組みを変えることで中小建設事業者の成長が容易となる世界を創ることをミッションとする建設業に特化したITの会社です。

具体的には、建設事業者間の決済代行、回収保障、トランザクションファイナンスや、リフォームをしたい施主とリフォーム工事ができる信頼できる施工業者をマッチングサービス、人手不足で悩む施工業者と稼動を増やしたい施工業者同士のマッチングなどを行っており、建設業界の「信頼性」と「お金」の課題解決に取り組む会社です。この会社で建設業界の根本の課題とITによる解決方法を学ぶ経験が自社に戻って役に立ちそうだと感じ、決めました。

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オリジナルパーカーで、ローカルワークスのメンバーとの1枚

ー「モヤモヤの気持ちのまま仕事されると、会社の損失になるんです」

2018年10月、留職がスタートしました。
私は、「リフォマ」という既存のサービスに加盟してもらう施工業者を探し、契約をいただくという営業を担当しました。パナソニックでの営業は、物理的に商品があって、ルートの顧客がいました。一方、「リフォマ」はITサービスで物がなく、しかも顧客探しから自分で行う必要があり、最初は電話1本かけることも、とても怖かったです。

日を重ねるごとに少しずつその恐怖心もなくなり、わからないことを聞けば先輩たちが教えてくれ、営業のロープレを繰り返すことで少しずつ商談のポイントがわかり、11月には、1ヶ月の契約獲得施工業者数が、社内の歴代1番という結果を得ることができました。

その後12月に入ると、会社の新事業の顧客獲得の営業の担当になったのですが、私はここで大きく躓きました。今までのようなやり方で顧客にアプローチしますがうまくいきません。新規事業のため、社内に正しい方法を知っている人もいません。うまくいかない日々が続き、立てた目標に対して、「そもそも達成可能なものなのか?」などとモヤモヤと考え、何も進まない日々を送っていました。

そんな胸の内をローカルワークスの仲間に吐露したところ、「社長と腹割って話せ」とアドバイスをもらいました。「そうやってモヤモヤして事業に全力で取り組めていない人が社内にいるということが会社にとって損失だ」とまっすぐな目で言われたのです。自己中心的に仕事を捉えていた私にこの言葉は深く突き刺さりました。

忙しい社長の清水さんに、私の相談のために時間をいただくということはとても言い出しにくかったけど、いざ相談してみると、想像とは裏腹に、快諾してくださりました。

そして、清水さんに思いの丈を話したところ、たくさんのアドバイスをいただきました。「営業のコール数から何%が成約になる?」「こういう話し方に変えることで、どれくらい反応が違うの?」

清水さんからの問いに感覚値でしか話せない自分に腹が立ちました。やれることは山ほどあるのに、考えず思考停止して行動していたことに気づいたからです。

それからは、こういうアプローチにすることでインバウンド数はどう変わるか、マーケティング部署と連携してやればより効果的になるのではないか、など考え行動し、分析、改善を繰り返しました。

様々な顧客の状況を調べるために、電話営業だけでなく、建設組合に話を持ち込み共同でイベントを行ったり、建設業界の集まりに参加して関係をつくったりと、自分で仮説を立て、行動しながら検証するなど、能動的に仕事に取り組めるようになりました。

ー結局、大企業もベンチャーも変わらない?

そんな中で、会社の方針変更があり、私の営業内容も変わりました。会社方針だから仕方ない、と思い新たな事業の営業活動をしていると、短期間でまた方針変更する、ということが何度かありました。方針が変われば私の営業する相手も変わります。事業が二転三転し、「会社に振り回されている」と感じていました。そんな中で私は「なんか、結局大企業もベンチャーも変わらないな…」と思っていました。職場環境や事業スピードという違いはあるけれど、結局上から指示されたことを遂行するだけ。

こんな気持ちのまま働くのは会社にとって損失だ…と過去の学びがあったので、思い切って清水さんに「経営会議に参加したい」と申し出ました。そして、実際に参加させてもらったところ、経営陣の方々のものの考え方、見ている高さを知り、どうしてそういう判断に至ったのかが腹落ちしました。事業を成功させることがゴールではなく、会社の掲げるビジョン、ミッションと世の中を近づけるために事業があり、今の事業内容や速度で近づけないのであれば優先度を変えることは当然のことだと思いました。それと同時に、自分の見ていた視野の狭さ、低さを痛感しました。

そういうことがわかると、今までよりも仕事が面白く感じました。

「今、自分たちの目指す世界の実現にちゃんと近づけているのか」「今のやり方で良いのか」などと、夜な夜な、みんなと夢中になって熱く語り合い、心通わせる日々が本当に楽しくて、刺激的で、これが“仕事”なんだと気づくことができました。

ー踏ん張るときに必要な「何のためにやっているのか」

また、資金と人材という視点から、事業を俯瞰して見ることもできました。
大企業に比べて、リソースの少ないベンチャーでは、やれることにも限りがあります。しかし、良いサービスを生み続けていかなければ企業は存続できません。

営業という役割はお金を生み出し、会社を成長させ、社会を良くするとても大切な役割であることを再認識でき、私は身が引き締まりました。

営業の役割の大切さがわかってからは、「なぜこれをやるのか」「何のためにやっているのか」を常に意識するようになりました。数字に追われているときでさえも、目先のことに左右されることなく、仕事に取り組むことができました。

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ローカルワークスが開いてくれた送別会の1枚

ー行動することで変わっていった見える景色

こうして私は、1年間の留職(レンタル移籍)を通して、様々なことに気づけたわけですが、何よりも、今までは自分で自分の仕事の幅を勝手に決め付け、その中で右往左往していたということに気がつきました。

今までの私は、有名な「蚤とコップ」のような状態だったと思います。コップに入れられたノミは、蓋にぶつかり続けるうちにだんだん高く飛ばなくなり、最後には、蓋を外してもコップより高く跳ぶことができなくなってしまうというお話です。

私は、営業の自分はこれだけをやっていればよいのだ、と勝手に自分で蓋を設けていました。

しかし、ローカルワークスで経験させてもらったことによって、与えられたことをやることが仕事ではなく、自分のミッションと会社のミッションが重なっている部分を実現するために、自分で考え、周りと協力して働くことが仕事なのだと感じました。

そういう気づきを得られたのは、清水さんに思いの丈を明かしたり、経営会議に参加したいと申し出たり、他の部署の人と語らうなど、悔しい思いをする度にそこで諦めず、何か次の行動をおこしたときでした。これからも自分の限界や仕事の幅を思い込みで決め付けたりせず、行動し、目標に進んでいきたいと思います。

この1年間の経験から、自分はなぜパナソニックで働きたいのか、入社した頃の気持ちを思い出すことができました。人々の暮らしをよりよくするためにパナソニックの商品を届け続けたいし、届けるまでの過程に携わる社内外すべての人たちがいきいきと働ける環境をつくることを自身のミッションに、自身で限界の蓋をすることなくジャンプしたいと思います。

最後になりましたが、ローカルワークスの皆さん、ローンディールの皆さん、パナソニックの皆さん、いろいろなことを教えてくれた施工業者の皆さん、元気にしているかと時折連絡をくれた元担当代理店の部長様、そして1年間伴走してくださったメンターの後藤さんにこの場をお借りして御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

END

文:松尾朋子(パナソニック株式会社)

【お知らせ】

松尾さんがレンタル移籍をしていたローカルワークスさんでは、現在、共に働く仲間を募集しているそうです。「テクノロジーとアイデアで建設業をアップデートする」をミッションに展開する注目のベンチャー企業です。気軽に会社見学OKとのこと。詳しくはこちらをご覧ください。

※また雑誌「週刊漫画TIMES」にて、ローカルワークスが3回に渡って登場しているそうです!60歳社員”なべさん”が奮闘している様子が描かれているとのこと。2回目の中編は、11月22日発売予定!
 合わせてチェックしてみてくださいね。

【レンタル移籍とは? 】

大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2016年のサービス開始以降、計29社68名以上のレンタル移籍が行なわれている(※2019年10月実績)。→ お問い合わせ・詳細はこちら

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