【ベンチャー企業 × 移籍者対談 Vol.1】Work Together 共に道を切り開くということ
2017年7月から1年3ヶ月、レンタル移籍を受け入れたトリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社 代表取締役 中西敦士氏と、同ベンチャー企業で移籍を経験したNTT西日本 新田一樹氏に、今だから言える移籍中のエピソードをお話し頂きました。
トリプル・ダブリュー・ジャパンは、排泄予測デバイス「DFree」を開発・販売しているベンチャー企業。「DFree」は、下腹部に装着することで超音波が膀胱の変化を捉えて尿のたまり具合を検知し、排尿のタイミングを知らせてくれるウェアラブルデバイス。おむつ利用者がトイレを利用できるようになる自立支援はもちろん、介護者の負担軽減、アクティブシニアの失禁・尿漏れ対策など世界中から注目され、国内のみならず、アメリカやヨーロッパなど海外でもサービスを展開中です。
現在は家電量販店での販売を始め、様々な広がりを見せる「DFree」も、新田さんが移籍した2017年当時は、介護施設などへのB to B 展開のみ。そこで新田さんが、個人向けに同サービスを開発・販売するというミッションを担うことになりました。
ーお客さんじゃなくて、会社の一員として
2019年1月、ラスベガスにて開催された世界最大級の電子機器の見本市CES 2019で、4つのアワードを受賞されたんですよね。おめでとうございます! 新田さんも手伝いに行かれたとか?
中西:ありがとうございます。そう、新田君に手伝ってもらったんですよ。
新田:貴重な場に行かせて頂きました。移籍が終わった後もこうやって関係を続けさせてもらってありがたいことです! 実はラスベガスだけじゃなくて、大阪の試着会のイベントにも参加していたり。もう半年前に移籍は終わっていますけど、自分が関わったこともあって、もっとブレイクしてほしいなって、何か自分ができればいいなっていう想いが今でもあります。
中西:じゃあ、これからも頼むぞ!!!
新田:えーー、プレッシャーをかけないでください(笑)
そもそも中西さんがレンタル移籍を受け入れた理由を教えてください。
また、実際に受け入れてみて、ベンチャー企業側としてはいかがでしたか?
トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社 代表取締役 中西敦士氏
中西:元々はうちの人事担当がレンタル移籍の資料を持ってきて、すぐに「これはいい、やろう」ってなりました。ちょうど、B to Cを立ち上げたいと思っていた時で人手が足りてないというのもすごくあったし、やっぱり優秀な方が来てくださるって大きいですよね。新田君が終了した後にも1名、経産省の方に今年の3月まで来てもらっていました。
こんなこと言うのはあれですけど……、新田君は思ったより仕事をしてくれたなぁと(笑)。完全にスタッフじゃないのでお客さんになっちゃうかなって思ってたんですよ、受け入れ前は。でも、本当に会社の一員になっていましたし、うちのスタッフもしっかりと巻き込んで仕事をしてくれていたと思います。
新田:ありがとうございます。でも、動けるようになるまでに結構時間がかかりましたよ。最初はお客さん感があったんじゃないかなと思います。僕のミッションだった個人向けサービスが動き出したのが移籍して3ヶ月後くらいで……。それまでは研修に近い状態というか。「必要な打ち合わせはどんどん入れて」って言われても遠慮して全然できなかったり、企業から問い合わせが来ているのに対応できなかったり。秋くらいに中西さんに「やっと遠慮なくズカズカくるようになったな」って言われたの、今でも覚えてます。
NTT西日本 ビジネスデザイン部 新田一樹氏
中西:そんなこと言った(笑)? ただ、最初の頃は本当にしゃべらないなって思っていました。面談の時も、打ち合わせも、クライアントとの飲み会も、ずっと黙ってるからどうしたのかなって。
新田:いや、何を話していいか分からなかったんです。大企業だとよくあるんです。
中西:よくあるって?
新田:この場で、どこまで自分が喋っていいか分からない。黙って見ておいたほうがいいのかなとか、もともと僕は空気を読みすぎるタイプだったので、余計に。でも秋くらいにやっと気づきました。色々しゃべっても意外と怒られないんだな、と。むしろ、しゃべらない方が怒られるんだなぁと(笑)。
ーボールを投げ合うことが大事
秋くらい、つまり移籍して3ヶ月くらいからサービス開発が具体的に始まって、そこから変わっていったということですか?
新田:そうですね、10月から12月くらいまで、中西さんとマンツーマンでやりとりしていました。既存のB to BをどうやってB to Cに展開していくのかとか、ターゲットをどうするのかとか、事業開発のコンセプトを決めていくフェーズでした。
中西:確かにこの頃、現状のプロダクトの課題を洗い出したりしながらユーザー調査を本格的に始めるという時期で、かなり密に話していましたね。
新田:その頃は結構大変でした。「あと30分で答え出してみて」とか。でも、出したら出したで「考えが浅い」とか。自分ではちゃんと考えていたつもりだったんですけど……。ただ、そうやって言える機会をもらったので、その頃から自分の意見を言えるようになったというのもあります。「プロトタイプを一週間で出して」っていうのはきつかったですけど(笑)。
中西:ボールを投げ続けるのが大事だと思ってのことです。それを全部やってほしいという期待よりも、やってみてどうだとか、これはさすがに厳しいとか、そういうボールの投げ合いを続けていくことで、本音で言い合える関係ができたり信頼関係が構築されるので。
新田:今は分かります。僕は泥臭いことしかできないので、あの頃はひたすらユーザーのお宅に足を運んで話を聞きに行って、というのを繰り返して。そこでの気づきをひたすら中西さんにぶつけているうちに、意見を取り入れてもらえるようになって、信頼してもらってるんだなって感じるようになりました。
中西:そう、Work Togetherですよ。僕は、共に道を切り開いていくという関係を大事にしています。ユーザーの課題解決がすべてですから、全員が当事者意識を持って一緒に悩んでほしいですし、そのためには、時には泥臭いことも一緒にやってもらえたら嬉しいなと。
ーあえて挑戦することで人間に厚みがでる
お二人にとって、1年3ヶ月という期間は、ちょうどよかったですか?
中西:ちょうどいいんじゃないですか。何をするかにもよると思いますが、1年くらいは少なくとも必要だと思いますし。ただ、慣れるまで3ヶ月くらいかかるってことを考えると、1年半くらいはあっても良いかなと思いますけど。新田君どうだった? 1年以上あるとダレる?
新田:ダレるどころか、旅行とか遊びに行っている余裕もなかったですけど(笑)。僕の場合は、担当したサービスがローンチしてすぐに移籍終了だったので、むしろもう少し期間があってもよかったかなって。もう少し自分の力で軌道にのせたかったです。
「ベンチャーならではの経験」ってどんなところにあると思いますか?
中西:ある程度の自由があるのがいいんじゃないですか。ベンチャーって常にやることが変わるんで。先ほども話しましたが、ボールを投げ合いながら最良の答えを見つけていくというようなことが、いい経験になるんじゃないかと思います。本人の成長にもなりますし。参加側からしたら、全力で走る期間が決まっているって面白いんじゃないかなって思います。
新田:はい、面白かったですよ、本当に!
中西:といっても、やっぱり簡単なことではないし、基本的にはめちゃくちゃ大変だし。答えがないことも多いから、一歩ずつやるしかないんですけど。楽な道が色々ある中で、あえて挑戦することで人間に厚みがでると思うんですよ。世の中に対して敏感にもなれますし、面白い人間になれるんじゃないかな。
新田:やっぱり最初は辛いです、コンフォートゾーンを抜けるタイミングなので。ただ、辛い時期はありましたけど、乗り越えられたから今は全部楽しい思い出に変換されています。ただ言われたことをやるって、本当に楽なことなんだなって気づきました(笑)。
中西:今は自分からやれてる感じなの?
新田:とりあえず、机上論じゃなくてちゃんと現場に行くようにはなりました。今、認知症の方向けのヘルスケア事業をやっているんですが、まだ発展途中で。そういう意味では同じようなフェーズなので、中西さんに教えていただいた経験がすごく活きています!
中西:それはよかった!
これから、レンタル移籍の経験がどう進展していくか、楽しみですね。
ありがとうございました!
Profile
トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社
代表取締役 中西敦士(なかにし あつし)
2014年、アメリカにてTriple Wを創業後、翌年2015年にトリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社を設立。自身の「漏らしてしまった」という経験から、世界初の排泄のタイミングを予知するウェアラブルデバイス「DFree(ディー・フリー)」を開発。著書に、自叙伝『10分後にうんこが出ます―排泄予知デバイス開発物語―』(新潮社 刊)がある。
NTT西日本 ビジネスデザイン部
新田一樹(にった かずき)
フレッツ光のインフラ構築のエンジニア、研究開発を経て、新規事業開発を行うビジネスデザイン部に所属。「外の世界を経験したい!」という想いから、1年3ヶ月のレンタル移籍を経験。現在は同部門で、ヘルスケア事業を行っている。
協力:トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社、NTT西日本
Interview:小林こず恵