起業家がうなるアイデアを出し続けた、小野薬品社員の視点とは?


「他の業界や社会のトレンドをつかむことの楽しさを感じられるようになった」。そう話すのは、小野薬品工業株式会社(以下、小野薬品)で働く宮本和也さんです。小野薬品では「グローバルスペシャリティファーマ」への飛躍的な成長を遂げることを目指しています。その実現のためには、イノベーションを追求する意思や資質をもった人財をより多く育成する必要があります。そこで、社員一人ひとりの挑戦を加速し、イノベーション人財を育成する取り組みとして2021年に開始されたのが「Ono Innovation Platform」です。このプログラムは、「学習の場」「経験の場」「挑戦の場」の3つの分野で構成されており、自らの成し遂げたいことを発見し、自発的に挑戦できるように支援が行われています。

その中で「経験の場」として取り入れられているのが、ベンチャー起業家が抱える課題に対して、大企業社員が解決策を提案するオンライン越境研修「outsight」です。経験のない領域の課題に対する解決策を考え続けることで、課題解決力を養うとともに、ベンチャー起業家や、社外の参加者から学ぶことで、情報感度を高め、視野を広げることを狙って「outsight」が導入されました。

この研修において、2022年度下半期、起業家がうなるアイデアをもっとも多く提案したのが、宮本さんでした。宮本さんは長い間、製薬業界に身を置き、現在は山形県を拠点にMR(医薬情報担当者)としてがん治療薬の情報提供を担当しています。1つの業界で仕事に励んできた宮本さんが、様々な業種のベンチャー企業から課題提示されるoutsightで、なぜ魅力的なアイデアを生み出せたのでしょうか。そして、outsightを経てどのような変化が起こったのでしょうか。お話を伺いました。

会社と自分の未来のための選択


――そもそも宮本さんは、どのような理由からoutsightへの参加を決めたのですか?

当社の成長戦略のひとつに、ヘルスケア分野での課題に向き合い、新たな事業の創出、拡大を目指す「事業ドメインの拡大」があります。ですので、会社が継続的に成長していくことに貢献するための力をつけたいと思ったのが、理由のひとつです。

それから、一昨年から社内で始まったビジネスコンテストも、きっかけのひとつです。一緒に仕事している仲間が最終選考まで進み、頑張っている姿を見て、私も刺激を受け、挑戦したい気持ちが高まったんです。そのタイミングでoutsightの募集があったので、手を挙げました。

 

――会社としても宮本さん個人としても、必要な挑戦だったのですね。

そうですね。会社はこれからも成長を続ける一方で、経営環境も劇的に変化する可能性もあるでしょう。自分のキャリアを考えても、10~20年後を見据えて、様々なスキルを得てさらに成長していたいと考えていました。将来に向けて、チャレンジが必要だと思ったんです。

――小野薬品からは、宮本さん以外にもoutsightに参加されている方がいるんですよね。

私を含めて15人が参加しています。部署も年齢も勤務地もさまざまで、普段の業務では関わる機会がほとんどないメンバーばかりなので、同じ会社の仲間ですが、とても新鮮な気持ちでコミュニケーションを取れています。

チャットツールを用いて、社内参加者のコミュニティが運営されていて、各々が考えた提案やそこに行きつく思考過程を言語化して共有するという取り組みを毎回やっています。自分が気づかなかった視点やたどりつかなかった情報をメンバーが書いていると、刺激になりますね。

 起業家の想いに寄り添ったアイデアを心掛ける


――outsightは、アイデアを出すだけではなく、そもそもリアルなベンチャー起業家の話を聞けるいうことも貴重な機会ですよね。

はい。これまでベンチャーの方のお話を聞く機会がほとんどなかったので、気づかなかった視点や世界、情報を受け取れることだけでも、大きな学びになっています。

メタバースやNFTを扱うベンチャーの課題に取り組む機会があったんですが、それまではほとんど触れたことのない内容でした。参加していなければ調べようともしなかったことに触れられる、すごく貴重な機会だと感じています。

――でも、縁のなかった業界の課題に対して、解決策を提案するのは難しくないですか?

その業界のことを想像するどころか、情報収集1つ取っても、キーワードがわからないので難しいですね(苦笑)。

 隔週木曜日にoutsight(事業紹介Day)が開催されていて、そこでベンチャーの方から課題を聞くんですが、前日には資料をいただけるので、見てわからない言葉を調べたり、質問を事前に想定したりしています。なぜ起業に至ったのか、どのような部分で困っているのかということも、想像します。

また、実際に解決策を考えるときには、私自身の経験や興味のあることからヒントを得つつ、代表の方が求めている内容を組み込めるように意識しています。これは研修ではなく、リアルで起こっていること。日々課題に向き合っている代表の方の想いに寄り添うことも大切だと思うんです。

――大切な視点ですね。そうした解決策を考えることは、宮本さんにとって楽しいことだったのですか。

そうですね。他の業界や社会のトレンドをつかむことの楽しさを感じられるようになって。それがモチベーションにつながっています。提案したアイデアが評価され、ベンチャーの役に立っていると実感できることによって、やる気が湧いてきます。

あと、実は家族の存在が大きいんですよ。10歳の息子と5歳の娘がいるんですが、outsightで評価されて、それを報告すると「おめでとう」って言ってくれるんです。その言葉が励みになっています。

生活を支えることだけではなく、仕事を通じて得た経験や知識を家族、特に子どもたちに伝えて、生きる力を身につける助けがしたいんですよね。その点でもoutsightで得た経験や知識は役に立つのかなと思いますね。

――素敵な考え方。それは、より積極的に取り組めそうですね。

1年間という長期間の取り組みで参加しているので、無理なく続けていくことを意識しています。机に向かってじっくり考えるというよりは、日々の生活の中でヒントを得るイメージです。家族と出かけている間も、「この事柄が当てはまるんじゃないか」って気づくことがあります。

勉強や研修と思って無理して頑張りすぎると、頭に入ってこない部分があると思うので、私は楽しみながら課題に向き合うようにしています。

 他者の視点を知ることが新たな発想につながる

――outsightに参加してから、自社では何か変化はありましたか?

はい。ひとつは、社内のメンバーとの関係性ですね。社内の別の部門の範囲でわからないことがあったときに、気軽に聞けるつながりが持てたのが良かったなと。outsightに参加しているメンバーとは、自社の課題やその解決策について、議論したり提案し合ったりする動きも出てきています。

MRの部署以外にもコミュニティが広がったことで、自分の新たな居場所ができたようで、うれしく感じますね。社内で動き出した新しい事業や取り組みに、outsightメンバーが携わることで、いままで以上に動きが加速するような気がしています。

――社内のつながりが生まれると、働きやすくなりそうですよね。一方で、社外とのつながりはできていますか?

正直に言うと、outsightで出会った社外の方との交流はまだできていません。ただ、ファシリテーターの光村圭一郎さんから「外に出ていろいろな人と話すことで、提案の材料になる情報や世の中の動きに気づけるから、出たほうがいい」とアドバイスをいただいたので、意識しています。

タクシーに乗ったり買い物したりするときに、そこで働いている方に話しかけるようになりました。働く方の視点や考えを知る場になって、その積み重ねがアイデアを生むうえで大事になるという実感もあります。日常生活のすべてが提案の材料にできるのかなって。

――日常のすべてがアイデアになるということに気づいたのですね?

そうですね。例えば、家族と映画を見に行くときにも、サブスクリプションサービスで自宅のテレビで映画が見放題の時代にわざわざ映画館に行く理由ってなんだろう、と考えるようになりました。巨大なスクリーンや迫力ある音から得られる臨場感など、そこでしかできない体験があるから行くのかなって想像することはなかったですね。

 自分では気づいていなかった武器

――outsightでの経験は、本業でも活きそうですか?

ひとつは、コミュニケーションの部分が活きそうです。ファシリテーターの皆さんの進行が本当にうまいんですよ。ベンチャーの方の発言が抽象的だったときに、「具体的には?」「この認識で合っていますか?」と、意図を確認し、言語化していくところを参考にしています。

MRは医療従事者の課題を顕在化し、意図を確認したうえで、医薬品の適正使用のための情報を提供する仕事です。目的はエンドユーザーの患者さんのウェルビーイングに貢献することなので、課題を言語化するスキルを磨いていきたいです。

そもそもoutsightに参加するきっかけとなった自社の事業ドメインの拡大や、自身のキャリアというところにおいては、ベンチャーの方々に評価していただけた発想力を活かしたいなと。チャンスがあれば、新規事業やCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)、オープンイノベーションといった分野に挑戦したいです。

――近々、そのチャンスはありそうですか?

やりたいことが絶対にできるとは限らないですが、チャンスが転がってきたらしっかりつかみたいですね。今回、MRの仕事とは違う評価軸で存在価値を認めていただくことができました。自分でも気づいていなかった発想力を、今後は活かしていきたいです。

 MRとしての業務に、誠意をもって向き合ってきた宮本さん。だからこそ、outsightで触れたベンチャーの課題にも実直に向き合い、成果を出してきました。その中で見つけたものは、発想力という新たな武器。今後はいままでとは異なる分野でも、発想力を活かしながら、宮本さんらしい真摯な姿勢で取り組まれることでしょう。

Fin

協力:小野薬品工業株式会社
インタビュアー:有竹亮介(verb)

 

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