「自ら修羅場を経験した人間は強い」 〜NTT西日本 山下氏に聞く! なぜ今「レンタル移籍」を選ぶのか?〜(後編)


 2019年4月に、「レンタル移籍」第3期を送り出すことになるNTT西日本。これまで4名の移籍者を送り出し、既に2名は移籍を終え、残り2名もこの3月に終了予定だ。 そして、この4月から新たに2名がレンタル移籍を開始する。そこで、同社でレンタル移籍の推進を行うアライアンス営業部 ビジネスデザイン部の山下諭氏に「なぜ今、レンタル移籍を活用するのか?」その背景を伺った。
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—成長できるタイミングが見えてきた

Q:実際に移籍中の社員を見て、何か気づきはありましたか?

「人が成長できるタイミングってここなんだ」というのが分かってきました。

移籍期間中は、週報・月報など定期的に本人が書いたレポートをチェックできたり、面談する機会があったり、中間報告会を聞いたり、接触機会は多くあります。

その中で(移籍者に)共通して感じることがいくつかあります。
例えば、自社だと上長に承認を求める場面が多く、自分ひとりで判断することが比較的少ないのですが、移籍先だと判断を求められることが多く、そこに戸惑いを感じているということ。

これまで判断する権限が欲しいと言っていた社員が、自ら判断しないと物事が進まないという状況に追い込まれ、決断することの難しさと責任を感じている、いい経験をしている、と思いました(笑)。

あとは、上長が必ずしも正解を持っているわけではない、ということを学んでいるようです。
前例のないプロジェクトを担うことも多く、誰も答えを知らない中で、自ら答えを見つけにいく。そういう経験を通じて、行動力が身についているなと感じました。

最初は皆、とても苦労しているようでした。
でもこの修羅場から抜け出した時が、大きな成長ポイントだと感じました。

 

Q:修羅場から抜け出した時、というのは具体的にどういうことでしょうか?

最初はスペシャリストに囲まれたり、スピードについていけなかったりして、自信喪失するわけです。

そして、周りのメンバーはすごい、判断できない、答えがわからない、糸口が見つからない……、という修羅場を迎えます。

でもやがて、完璧だと思った経営者も「答えを知らないことがある」という事実を目の当たりにするわけです。そんな時、実は経営者よりも自分の方がうまくできることもあったり、自分でやってみたらできた、というような経験が、自信と成長につながります。

でも間違ってはいけないのは、頭だけで考えていても何の成長にもならないということ。

やったことがないことでもとりあえずやってみて、ダメだと思ったら違うやり方でトライして……、を繰り返す、その過程に意味があると思います。

それは、謙虚に色々な意見も聞きながら様々なやり方にトライする柔軟性だったり、諦めない力だったり、何としても通すという強い意志だったり。不確実なものに挑むことによって、それらを経験し、成長していくように感じます。

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—移籍経験者がいきいきと活躍する職場とは?

Q:もうすでに移籍から2名が戻ってきていますよね? 社内ではいかがでしょうか?

頑張っていますよ!

1名は戻って半年以上経つのですが、既に移籍先と連携して新たな取り組みを始めており、具体的に新サービスを創出するところまでこぎつけています。もう1名は戻ってきてまだ数か月ですが、彼がジョインしたプロジェクトは既に彼がいい意味でチームに影響力を与えているなど、だいぶ動きが違うなぁと感じます。周囲を説得して巻き込み、コミットメントをすることで自らやりたいと思うことを進めていくという実行力には目を見張るものがあります。

戻ってきた後の報告会を聞いていても思ったのですが、正解がないという不確実な中で、何かしら道を作ってきた経験をしているので、彼らの言葉には説得力がありました。

今まではできないと思い込んでいたことも、やればできるというのが大きな自信になったのでしょう。

彼らの考え方、動き方を社内でもっと広めていきたいですね。

 

Q:経験者が少ない中で、浸透させるのはなかなか難しいと思うのですが、社内でどうやって広めていくのですか?

そうですね、これもまたそう簡単ではないです。
人ひとり変わったところで組織全体を変えることは難しいですし、時間がかかるでしょう。

もっと同じような経験をさせる機会を増やすといいのかもしれませんがそれにはやはり限りがあります。チーム内で影響力の大きいミドル層が移籍経験者を活かす組織マネジメントを考えていくことが重要だと思います。ミドル層自身が経験するということもアリですね。

あと、今できることとしてはインナーの広報活動です。
社内報などで彼らの経験を積極的に発信していくことに力を入れています。

大々的に社内報で移籍者の特集をしたことがあったんですが、そのような地道な発信を継続して行うことで、「自分も行きたい」と手を挙げる人が増えました。会社としては、レンタル移籍だけではなく、意欲のある社員を支援する環境を作らなければいけない。

僕のチームの組織名称は「エンゲージメント担当」ですが、会社と(会社で働く)個人がベクトルを合わせ、エンゲージメントを高めていけるような取組を積極的にしていきたいと考えています。

ー外に行かせることはリスクではない

Q:山下さんは、レンタル移籍の導入を検討している企業から、相談を受けることがあるそうですね?

そうですね。人選とか、社内調整とか、経験させてどうだったか? とか色々聞かれます(笑)。

でもその中で一番多いのが「そういう経験をさせて社員は辞めないですか?」という質問。「リスクとして捉えてはいないのですか?」と聞かれることもあります。

僕は全然リスクとして捉えてないですね。
お話しした通り、チャレンジしたい社員に機会を与えてあげることで、社員の自己実現にもなりますし、社員は、その実現機会を提供してもらったという想いから、さらに高いパフォーマンスを発揮してくれます。

仮に退職することになっても、少なくとも会社にマイナスイメージを持って辞めることはないでしょう。
ということは、我々とビジネスの上で連携する可能性もあるわけです。

むしろ、会社としてはそのような社員が辞めることなく活躍できる魅力ある企業をめざすべきです。
したがって、移籍から戻ってきた彼らが社内で浮いてしまわないように、というケアは常に心がけています。熱を持って(移籍から)帰ってきていますから、冷めないように、組織の中でそれを活かせるような環境を作ってあげたいですね。

 

Q:最後に。読者にメッセージをお願いします。

もし皆さんが、何かにチャレンジしたいのに踏み止まっている状態だとしたら、答えが分からなくても、とにかくやってみること、動いてみることをお勧めします。

いくら頭で考えても、自分で決断して行動しない限り、チャンスはつかめないと思います。モヤモヤ悩んでるくらいだったら、できることから始めてみてください。

自分で想像するより、実現できることはもっともっとたくさんあるはずです。そのことに気付けるのは、行動した人間だけ。

可能性を潰してしまうのは勿体無い、まずは小さな一歩を踏み出してみてください。

 

End

 

PROFILE山下 諭(やました さとし)NTT西日本 アライアンス営業本部 ビジネスデザイン部 ビジネスプロデュース部門エンゲージメント担当 担当課長。1998年にNTTに入社以降、人事労務を中心に従事し、2015年より同担当にてイノベータ人材の人事・育成・マネージメントを行う。これまでに社外への出向や組合役員など社外での業務を経験。2017年より、同部よりレンタル移籍を導入する。

協力:NTT西日本
Interview:小林こず恵

 

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