営業一筋の二人が自分を変えるために、動いた。「半年間のベンチャーで手にした、圧倒的な成長」
キャリアを積み重ねる中で、ふと自分の成長が停滞しているように感じたり、自分の市場価値に漠然とした不安を抱くことはありませんか。そんな悩みや迷いをあえて原動力に変え、レンタル移籍を通じて、ベンチャーという新しい世界に飛び込んだ二人がいます。株式会社オリエントコーポレーション(以下、オリコ)で営業として活動してきた滝田光(たきた・ひかる)さん、渡邉翔一郎(わたなべ・しょういちろう)さんです。
滝田さんと渡邉さんは、半年間のベンチャー経験で、不慣れな業務の苦労や結果を出せないもどかしさを乗り越え、新たな自分に出会いました。保守的だった自分の殻を破り、挑戦し続けることの重要さに気付いたのです。これは、ベンチャーの一員となり、フルコミットするという環境だったからこそ、起こったことだと話します。
そこで今回は、滝田さんと渡邉さんのおふたりに、ベンチャーで得た経験や、今後の仕事やキャリアへの影響についてお話を伺いました。
「自分を変えたい」「力を試したい」
営業一筋のキャリアから、ベンチャーへ
── レンタル移籍に挑戦するに至った経緯を教えてください。
渡邉:入社してから7年、営業としてキャリアを積んできましたが、次第に自分の成長が頭打ちになっている感覚を覚えるようになりました。また、周囲からは中堅社員と呼ばれる年齢に差しかかっているのに、会社の仕組みやビジネスモデルに対する理解が浅いことに気付き、自分の視野の狭さに焦りも感じていました。
これまでは目先の営業活動にばかり目を向けて、組織全体への理解が及んでいないことに気付いたんです。もっと、会社の仕組みを体系的に捉えて動かないといけないと思いました。
そんな時、レンタル移籍の制度があることを知り、思い切って手を挙げることにしました。周囲からするとかなり意外な決断に映ったかもしれません(笑)。
渡邉 翔一郎さん
2017年、株式会社オリエントコーポレーションに営業推進として入社。静岡、札幌にて自動車販売業者や大手ハウスメーカー、学校法人などに対してローンやクレジットの利用促進を図る業務に従事。その後、レンタル移籍により社外への出向を経て、現在はデジタル戦略の企画・推進を担うデジタル企画部に所属。主にDX人材の育成や先端技術のリサーチ、及び社内発信の業務を担当している。
── どうして意外な決断だと思われたのでしょうか?
渡邉:私自身、元々保守的な性格で、自ら変化を求めることは少なかったからです。だからこそ、「そういう自分を変えてみたい」という思いが原動力になりました。レンタル移籍を経験した知人から「移籍は大変なこともあるけど、その分得られる学びが大きい」と直接聞いたことで心が動き、最終的にはその言葉に背中を押されて決意しました。
── 滝田さんはどういった理由でレンタル移籍を志望したのでしょうか?
滝田:私も渡邉さんと同様に、オリコに入社してからずっと営業一筋でやってきました。レンタル移籍に手を挙げたのは入社4年目のことです。大学時代の友人たちから転職やキャリアアップの話を聞くたびに、漠然とした不安を抱いていたことがきっかけでした。自分が市場でどれだけ通用するのか、社外ではどういった人達が活躍しているのかを確かめたいという気持ちが強くなり、社外で新たな経験をしてみようと考えました。
幸運なことに、同僚や上司からは多くの応援をもらいました。「皆さんがこんなに前向きに送り出してくれるのなら、しっかり成長して帰ってきたい」という強い思いを胸に、レンタル移籍に臨みました。
滝田 光さん
2020年4月に株式会社オリエントコーポレーションへ新卒入社。これまで、川越支店(埼玉)と熊本支店(熊本)で営業を経験。自動車販売店や宝飾店、リフォーム店等の取引先に対して、オートローンやショッピングクレジットといった幅広い金融商品の営業を行う。その後、レンタル移籍を経て、BI推進部へ。現在は主に、様々なデータを活用した取引先向けのアドバイザリーサービスに関する企画立案を担当している。
── 移籍先はどのようにして選ばれましたか?
滝田:私は入社以来、営業畑を歩んできたので、その経験を活かして貢献できるベンチャーを探していました。最終的に選んだのは、電動キックボードのシェアリングサービスを提供しているBRJ株式会社です。私はそこで、新規開拓営業を主に担当することになりました。
渡邉:私は、移籍の目的である「会社の仕組みを体系的に捉えたい」という点に重きを置いて企業を選びました。代表の方との面談でも、肩肘張らず自然体で話すことができ、直感的にも「ここだ」と感じました。タイムリープ株式会社という、従業員がその場にいなくても遠隔で接客できるしくみを提供する会社です。スムーズなサービス提供に向けて、社内の体制を強化する業務を行いました。
「こうなりたい」というロールモデルに出会えた
── ベンチャー出向後、どのような経験をしましたか?
滝田:私が主に担当したのは新規開拓営業だったので、これまでのオリコでのルート営業とは違い、ゼロから顧客を探して提案をして契約を取るという全く新しい形でした。営業という職種は同じでも、そのスタイルは全く別物だったので最初は本当に苦労しました。
周りを見渡せば、同年代の社員さんがバリバリ成果を出していて、その姿を見て焦りを感じることも多かったですね。
── 市場価値を確かめたいという思いもあったかと思いますが、その点はいかがでしたか?
滝田:「自分の営業スキルが通用しない」と感じる場面も多々あり、正直最初は自己評価も低かったです。そうした中、メンターの方がアドバイスを下さったり、試行錯誤するプロセスに寄り添ってくれて。おかげで、挫けずに行動し続けることができました。その結果、徐々に成果を出せるようになりました。
これが、レンタル移籍で得られた学びの一つです。何事も継続することの大切さを身をもって実感しました。苦労した分、成果を出せたときの喜びはひとしおでしたし、周りのメンバーも一緒に喜んでくれて嬉しかったです。
── 地道に努力を積み重ねられた結果ですね。渡邉さんのベンチャーでの経験はいかがでしたか?
渡邉:私は社内の体制を強化する業務を行いましたが、営業とはまったく異なる分野の仕事だったので、まずは会社の仕組みを理解するのに多くの時間を費やしました。「何が課題なのか」「どこが整っていないのか」を必死に把握し、これまで触ったことのないSaaSツールを積極的に使いながら、会社の体制作りに取り組んでいきました。大変ではありましたが、月末の会議で自分の成果を発表する際に、「今月はここまでやれたんだ」と達成感を毎月感じていました。
また、ベンチャーでは在宅勤務が多く、チャットツールを使ったやり取りが主流でした。私はこれまで対面でのコミュニケーションが主だったので、チャットで思いを伝えるのには非常に苦労しました。資料を作成した際も、最初の評価は「全然ダメ」で(笑)。どうやったら人に伝わるのかを徹底的に考えた半年間でしたね。
また、メンターとの週報や1on1でも内省を積み重ねたこともあり、おかげさまで「言語化する力」を徹底的に磨いた半年間だったと感じています。
── レンタル移籍に参加して特に良かったと感じることを教えてください。
渡邉:スキルや経験という面でももちろん学びがありましたが、一番は、保守的な自分を変えられたのが大きいです。半年間フルコミットでメンバーの一員となり、ベンチャーの方々が不確実性の高いものに挑む姿を間近で見て、感化されるものがありました。
一緒に働いたメンバーは、たとえ上手くいかなくても「じゃあ次はこうしよう」と前向きに捉え、決してへこたれない人たち。強く影響を受けましたね。
レンタル移籍の期限は決まっているし、何も失うものはないという前向きな覚悟で、全力で楽しくやりきりました。
滝田:私もオリコ以外の風土を半年間体感し続けられたことが、移籍して最も良かった点です。ベンチャー企業では「挑戦を楽しむ」という文化が深く根付いていて、社員一人ひとりが自分の仕事に責任を持ちながら、失敗を恐れずに次のステップに進んでいました。
私自身も、その環境の中にどっぷりと入り込み、愚直な挑戦を繰り返すことができたことで、その文化を自分のものにすることができ、結果、自分の限界を広げることができたと思っています。
また、同年代のメンバーが、プレイヤーとして成果を上げながらマネジメント業務にも携わっていたことからも刺激を受けました。おかげで、「自分も数年後にそうなりたい」という新たな目標が生まれました。具体的なロールモデルを見つけられたのも、移籍を通じて得た大きな収穫でしたね。
半年間のベンチャー経験で、一回りも二回りも成長できたと実感
── レンタル移籍から戻られてからの業務内容と、移籍経験が生きていると感じる場面について教えてください。
滝田:私は現在、営業から離れてBI推進部という部署に所属しています。そこでは、会社が保有する様々なデータを活用した、取引先向けのアドバイザリーサービスに関する企画立案を主に担当しています。レンタル移籍では、これまで経験のない新しい業務に挑戦する場面が多々ありました。BI推進部でも、営業とはまったく違った業務を行っていますが、未知の分野に挑戦するという姿勢は、レンタル移籍時に培ったものです。新しいことにチャレンジし続ける姿勢は、今の仕事でも非常に役立っています。
渡邉:私も現在は営業からデジタル企画部に異動し、新たなサービスの構築やデジタル分野での企画業務に取り組んでいます。特に、新しいビジネスと既存ビジネスを比較しながら、ベンチャー企業との協業を検討する場面で、移籍経験が役立っていると感じます。ベンチャーで働いた経験があるので、相手が何を求め、どうすれば協力しやすいのかをより深く理解できるようになったんです。
また、ベンチャー経験を通して、事業を動かすにはこれだけの人員やリソースが必要なんだ、ここにこれだけのコストがかかるんだ、ということを初めて実感しました。事業の内側に目を向け、体系的に理解した経験が現在の仕事にも活きていると感じます。
── お二人のこれからの目標を教えてください。
滝田:将来的には、マネジメントに携わりたいと考えています。そのためには、今の段階でしっかりと目に見える成果を残し、周囲から信頼される存在になることが重要だと思っています。
この思いが芽生えたきっかけは、移籍先でマネジメントに携わる同世代のメンバーから刺激を受けたこともありますが、オリコで出会った尊敬できる上司の方々からも影響を受けています。周囲の人々に「あの人に出会えたから今の自分がある」と思ってもらえるようなリーダーになるため、常に学び、成長し続ける姿勢を忘れずにいたいです。
渡邉:私の目標は、今の部署のミッションともつながるのですが、新しいサービスを構築することです。それだけでなく、もっと多くの人が挑戦できる環境を作っていきたいと思っています。その一環として、レンタル移籍もさらに活発になってほしいですね。
挑戦することは確かに大変ですが、その先には大きな成長や楽しさが待っていることを伝え、前向きに一歩を踏み出せるような環境を形作っていけたらと考えています。
── 最後に、ベンチャー経験に興味がある方へメッセージをお願いします。
滝田:興味を持っていても、実際に挑戦するとなると不安や抵抗を感じる方も多いかもしれません。私自身もそうでした。しかし、私は半年間の移籍を通じて、一回りも二回りも成長できたと実感しています。ぜひ恐れずにチャレンジしていただきたいです。
渡邉:半年間とは思えないほどさまざまな経験ができ、想像以上の価値が得られるものだと感じています。また、社内外で築いたネットワークは今後のビジネスライフにおいても非常に有益だと思っています。自分の行動量次第で濃密な時間を過ごせると思いますので、ぜひ今抱えている思いを行動に変えてみてください。
新たな挑戦のきっかけは、必ずしもポジティブな動機ばかりではありません。不安や迷い、焦りといった感情こそが、時に行動を促し、自己変革への扉を開く鍵となることがあります。迷いながらも一歩踏み出し、挑戦を乗り越えたお二人の表情からは、確固たる自信と晴れやかな輝きが満ちていました。
Fin
協力:株式会社オリエントコーポレーション / BRJ株式会社 / タイムリープ株式会社
インタビュー・文:早坂みさと
撮影:宮本七生