強い価値観は組織の推進力に繋がる【レンタル移籍者 × ベンチャー経営者 特別対談】
2019年10月より、ラジオ番組「森清華のLife is the journey ※」にて、月に1度、レンタル移籍者および移籍先のベンチャー企業経営者をゲストに迎えた放送が始まりました。第1回目の放送では、アステラス製薬株式会社の神田直幸(かんだ・なおゆき)さんと、600株式会社の久保渓(くぼ・けい)さんをゲストに迎え、レンタル移籍での経験や、リスナーへのメッセージを語ってもらいました。
※ 毎週水曜 午後9:00から、かわさきエフエム(71.9MHz)にて放送中。企業経営者や各界のスペシャリストなどをゲストに迎え、これからのキャリアや生き方に迷い考える、特に20代後半・30〜40代のビジネスパーソンに対し、一歩踏み出すための背中を押すことが目的の番組。番組自体は今回で157回目。ローンディールの仕組みを利用してレンタル移籍を行った移籍者と移籍先の経営者をゲストに迎える回は、月に1回の頻度で放送予定。パーソナリティーの森清華は、ローンディールのメンターとしても活躍しており、今回のゲストである神田さんとは、レンタル移籍中のメンターも務めた間柄。
本記事では、当日の放送内容のダイジェストをお届けします。
なお、当日の番組アーカイブも、podcastで聞くことができます。
目次
ー大手製薬会社の社員が無人コンビニのベンチャー企業にレンタル移籍
森さん:今日はレンタル移籍の受け入れ先である600株式会社の代表取締役・久保さんと、移籍者であるアステラス製薬株式会社 Rx+事業創成部の神田さんをゲストにお迎えしました。まず初めに、600株式会社はどのような事業展開をされているのでしょうか。
久保さん:文字の通り、600というサービスを提供しています。自動販売機のような小型の冷蔵ショーケース型の無人コンビニなのですが、東京都内23区内のホテル、オフィス、マンションなど100箇所くらいに設置されています。
森さん:「600」という会社名にはどんな思いが込められているのですか?
久保さん:1ヶ月で品揃えが変わり、品揃え豊富に提供できるのが特徴で、だいたい600品揃うというコンセプトから来ています。
森さん:2018年10月から2019年3月までレンタル移籍した神田さんの、現在のお仕事は?
神田さん:新規事業をやる部署で、ヘルスケア領域での新規事業の推進をしています。
森さん:移籍前も新規事業の部署だったのでしょうか?
神田さん:はい、移籍前も新規事業の部署でした。
森さん:久保さんはなぜレンタル移籍を活用しようと思ったのでしょうか?
久保さん:創業2年の会社なのですが、レンタル移籍に興味を持ち始めたのは、10名くらいまでメンバーが増えてきた段階で、これからシニアの方や経験豊富な人を増やしたいというところでした。そのための予行演習といいいますか、経験豊富な方に短期で関わってもらえる機会になると思いました。
森さん:神田さんは、期間限定とはいえ、なぜ自分がいたところを離れて新しい世界に飛び込もうと思ったのですか?
神田さん:製薬会社は新規事業へのケイパビリティが低い業界です。新しい領域で活躍している企業で学び、それを会社に還元することで、会社やヘルスケアの業界に還元できると思いました。
森さん:移籍先が決まった時はどんな心境でしたか?
神田さん:久保さんと面談をして、受け入れてもらえると決まった時は嬉しかったですね。
森さん:移籍先はどのように決められたのでしょうか?
神田さん:希望条件として、ゼロイチを経験でき、創業間もないアーリーなフェーズで、社長が企業経験豊富であることが重要なファクターでした。今後、新規事業を推進していく中で、いいことも悪いことも経験している方のもとで働きたいと思ったのです。
森さん:起業して荒波を乗り越えてこられたという経験を持ち帰りたいと?
神田さん:その通りです。
森さん:移籍前夜に何か準備されたことはありますか?
神田さん:準備は特になかったのですが、とにかく緊張していました。他の企業で働くという経験もないし、600株式会社の中では久保さん以外の人を知らなかったですから。
森さん:どんな方がいるのかと、期待も緊張もあったのですね。
ー正解はない、環境も変わる中で、大事にしたい価値観を共通で持つことで成長し続ける
森さん:600株式会社を立ち上げた久保さんは、これまで4つの会社を立ち上げた連続起業家です。直近ではWebPayを立ち上げた後にLINEに売却し、LINE Payの立ち上げへ。国内3000万ユーザーを突破したタイミングで退職し、600株式会社を立ち上げられました。組織を作っていくにあたり、過去の起業やマネジメントの経験から、意識していたこと、大切にしていたことはありますか?
久保さん:創業した会社はこれで4社目になりますが、毎回、良くも悪くも自分っぽくなってしまうなと。良さは良さとして、悪さ、特に自分の場合は優柔不断さをどうケアするかを気にしていました。意思決定プロセスを明確に、権限委譲のために組織を明確に、を心がけました。創業時に、30以上の部署ができたら意思決定プロセスはこうするといった想定をし、自分自身で議案をあげて決定して硝石を残す、というようなことを1つ1つやって、それによって優柔不断さを排除しながら組織作りを行ってきました。
森さん:経験を振り返り、1つ1つ組み立てていったということですね。
久保さん:はい。自分で意識するというより、会社の悪い局面に、自分の弱さをつきつけられるという体験をしましたね。それをいかにケアするか。
森さん:600株式会社といえば、いくつか特徴的な取り組みがありますが、中でも週休3日制が挙げられます。水曜日がお休みと聞いていますが、その背景はどういったものなのでしょうか?
久保さん:もともと創業当時1人の時に、妻が妊娠中でした。そこで水・土・日を休みにしました。そうして区切りをつけることでパフォーマンスがあがったんですね。結果的なパフォーマンスを上げるために、完全週休3日制を継続しています。中だるみしていたのが、メリハリがついたという実体験ですね。
森さん:神田さんは、移籍をして、働き方も人もプロダクトも全く異なる環境の中で仕事をして、どんなことを感じましたか?
神田さん:意思決定がとても早いことは、大企業にはないもので、こんなスピード感で進んでいくということに、とても驚きました。使うツールも、大企業ではメールなどが中心ですが、ベンチャー企業ではslackなど、コミュニケーションツールが豊富でした。
森さん:移籍当初の心境はどんなものでしたか?
神田さん:わくわく感ですね。
森さん:それはスピード感やツールから得られたものだったのですね。移籍期間の転機となった場面はありますか?
神田さん:2018年10月から入社して、2ヶ月間は営業をやってもなかなか導入が決まりませんでした。久保さんが資金調達をやっていて、導入が決まらなければ資金も入らない、自分がいることがむしろマイナスになるのではと悩んでいました。いることによってマイナスになるのであれば、アステラスに戻りたいとさえ思いました。その時に、メンターの森さんから、「営業実績以外にも、例えば、600株式会社が大事にしている6つのバリュー(組織風土)に対して、何か貢献できることがあるのでは?」と言われ、その6つのバリューの中の「利他性」を中心に貢献することで、導入が決まったり、社内の雰囲気や風土調整に貢献できたと思えたことが転機になりました。
森さん:6つのバリューにはどんな思いが込められているのですか?
久保さん:6つのバリューとは具体的に、「愛」「誠実さ」「責任感」「柔軟性」「仲間を助ける利他性」「局面を変える力」というものです。仕事をする上で大切にしている価値観で、同じような価値観を大切にしている人と働きたいと考えています。人が成長するために最も大事だと思っている6つです。ベンチャーだと、正解も見えない、競争環境も常に変わってしまう。それでも常に成長していくような組織を作りたいという思いからですね。
森さん:神田さんは、そのバリューに沿って行動することで変化が起きたのですね。久保さん、神田さんと仕事をすることで、600社という組織に、どのような変化が起きたのでしょうか?
久保さん:「仲間を助ける利他性」と「柔軟性」は神田さんの大きな魅力で、組織全体の模範になりました。組織全体の推進力が上がる、それに結果も伴っていくということに、中心的な役割を担ってくれたのです。バリューが会社を前進させる取り組みに昇華されるという大きな模範になりました。
森さん:神田さんは当時の経験を振り返って、どのようなことを持ち帰り、今の仕事に生かされていると感じますか?
神田さん:正解がないことが正解というのが大きな学びですね。既存のプロジェクトだと、決まったフローに乗っ取ってやっていくことで軌道に乗っていくはずなのに、それだとどうしてもうまくいかない。それは、そもそも正解がないからではないか、ということを組織全体が理解することは大事なことだと思いました。正解がわからない中でどう進むのかという、考え方やステップを学べたのは大きな成果でした。
ー夢や思いを実現したい人へのメッセージ
森さん:今、アステラス製薬に戻り、どんな姿を目指していますか?
神田さん:ヘルスケアの業界で、1人でも多くの患者さんと患者さん予備軍の方に価値を届けたいです。
森さん:久保さんは神田さんの目指す姿を見て、どんなことを感じていますか?
久保さん:素晴らしいと思うし、自分自身も、一緒に頑張っていく指標、自分も頑張ろうと思える存在です。
森さん:同じ600メンバーという気持ちでお互いに刺激をし合っていく関係なのですね。最後に、これからの時代、自分の夢や思いを実現しようとしている方々に、背中を押すメッセージをお願いします。
久保さん:これからは、型にはまって自分を偽って頑張る必要がない時代。ありのままで活躍できる時代になっています。自分の価値観を大切にしながら、その中で世界にどういう貢献をもたらしたいのかを考えて、純粋に頑張れば、いい経験ができます。結果が出るかはわからないけれど。お互いに頑張りましょう。
神田さん:向き不向きよりも前向きというメッセージを。日々活動していると、いいことも悪いことも、諦めたくなるようなこともある。でも、助けてくれる人は周りにいるはずです。そういう時に下を向いていると誰も助けてくれません。向いていないのではなく、前を向いて進んでいくという姿勢を見せることで、サポートも得られるのではないかと思います。
森さん:今日はお2人ともありがとうございました。人も働き方もプロダクトも異なる新たな世界へ飛び込んだ経験を、自らの力に変えた神田さん。その姿に刺激を受けた久保さん。挑むとは、人が成長するとは何かを改めて感じさせられました。
リスナーへのメッセージを色紙に込めて。
写真左から時計回りに パーソナリティの森清華さん、アステラス製薬株式会社の神田直幸さん、600株式会社の久保渓さん。
レンタル移籍者と移籍先の経営者をゲストに迎えた「森清華のLife is the journey」、次回の放送は11月6日(水)を予定しています。スマートフォンのインターネットラジオアプリ「Listen Radio(リスラジ)」をダウンロードして、「ジャンルから選ぶ」を選択→「カテゴリ」を選択→「全国のラジオ局」を選択→「かわさきエフエム」を選択して聞くことができます。放送終了後には今回の放送と同様、podcast配信情報もお知らせします。
次回もお楽しみに。
【 レンタル移籍とは? 】
大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2016年のサービス開始以降、計29社68名以上のレンタル移籍が行なわれている(※2019年10月実績)。→ お問い合わせ・詳細はこちら
協力:アステラス製薬株式会社 / 600株式会社
Report:黒木瑛子