【第3章 改めて、営業は向いていない】取締役がレンタル移籍!? 〜ローンディールに参画するまで〜

<過去記事>
第1章 「修行してきます」
第2章「再び「教育」の分野へ」

—広告のメニュー作りから

あっという間の3ヶ月が過ぎた。

コーポレート周りの整備が終わったところで、後藤は、当初から浅谷が構想していた「センセイノート」を活用した広告事業に取り組むことになった。

この頃の「センセイノート」の売り上げはユーザー調査が主体で、特に広告メニューがあるわけではなかった。そこで浅谷と相談し、まずは広告ニーズを探るために、お問い合わせがあった企業へのヒアリングから始めることにした。

フリーペーパーの広告事業をやっていたとはいえ、WEB広告は、面を売る紙媒体とは異なり、後藤にとっても未知の世界。

業務委託のスタッフのひとりが元広告業界にいたこともあり、後藤は、サポートを受けながら、まずはヒアリングするための資料作りを急いだ。そして、ある程度固まってきたところで、お問い合わせのあった企業に訪問を始めた。

もともと「センセイノート」に強い興味を持ってくれている企業であり、尚且つ、教育現場に商品を訴求したい商材を持っている企業が多かったため、広告に対してポジティブな反応があると思っていた。

しかし……。

—スピード感が大切!

営業先から返ってきた反応は、後藤が想像していたものとは違った。

多くの企業が「センセイノート」の取り組みに対して、面白いと言ってくれた。今までにはない新たなアプローチに可能性を感じてくれた。

だからこそ、広告という枠を超えて「一緒に何かできないか」「アライアンスが組めないか」など、事業視点での興味や展開を期待している企業が多かったのだ。

そこで、後藤は徹底的にヒアリングした。
「どんなことを期待しているのか、課題は何か……」など、「センセイノート」の可能性を最大限に聞き出そうとした。

そして、訪問先での感触は社内で随時フィードバックするとともに、浅谷と何度も戦略を練り直した。

もちろん広告出稿に強い興味を示してくれた企業もあった。
しかし、面白いアライアンスが組めそうな企業も多数ある。
長期的な展開を検討できる企業もある。

結果、短期的な売り上げとして広告を強化するのも良いが、今後の成長を考えると、別の取り組みを考えた方が良いという結論に至り、戦略を変更した。

後藤の移籍は残り2ヶ月とわずかだったため、アライアンスまで完遂した案件はなかったのだが、「センセイノート」に対する期待や需要の掘り下げを徹底的に行い、アプローチすべき業界の開拓ができたことは、大きな貢献だったと思う。

また、後藤自身のことで言えばスピード感が身についた。
LOUPEでは、売り方を変える、アタックする業界を変える、売るサービスそのものを変える、ということを毎週のように行い、即時に資料や提案に反映した。
テクノライブで1ヶ月かかって改善することをLOUPEは1~2週間くらいのサイクルで回している。このスピード感はテクノライブですぐにでも取り入れられると思った。

— 成長と自信

半年間の移籍はあっという間だった。

やったほうが良いことが常に山積みで、それは到底週3日では収まらず、心身ともに疲労した半年だった。しかし、心地よい疲労感でもあった。

それは、コスト削減のアイデアだったり、スピーディーな運営の仕方だったり、走りながら改善していくPDCAだったり……、テクノライブで取り入れられそうな学びをたくさん得たから、というのもあるが、自身の「成長」を感じられたというのが大きかった。

同じ場所にいると、新しい刺激は年々減少し、成長を実感しづらい。
加えて、客観的な市場価値がわからなくなってしまう。
しかし新たな環境に身を置くことで、自分の何が通用して何が不足しているのかを改めて実感することができる。

後藤は、自身が今までやってきた経営スタンスやコミュニケーション、仕事の進め方などが、LOUPEで一定の役割を果たせたことで、成長を実感するとともに、自分に自信が持てるようにもなった。

—営業は向いていない

その一方、改めて営業には向いていないと思った。
それは営業そのものが嫌というよりも、モチベーションの問題である。

「センセイノート」の場合、学校教員が抱える課題を浅谷が耳にしたことに始まり、「なんとかその課題を解決できないか」という強い想いで立ち上げた経緯がある。

つまり、この事業は浅谷の想いによって生まれ、先生という喜ばせたい存在がいるからこそ成り立っている。

そこに対して自分の熱意をどれだけ注げるか、後藤は営業をしながらそれを常に考えていた。
もちろん「センセイノート」は面白い事業だと思う。
もともと教育分野には興味があるため、共感する部分もある。
貢献したい想いもある。営業をしていても苦ではない。

しかし、「センセイノート」で新たなクライアントが決まり、関わるメンバー全員がガッツポーズをして心から喜びあっている風景を、一歩引いて見てしまっている自分がいた……。

それはつまり、人の事業だから入り込めないのだ。
それがどんなに良いサービスであっても、である。

だから人が考えたサービス(商品)を器用にセールスできる営業マンを心底尊敬しつつ、自分には向いていない……、改めてそう思った。

それと同時に、「やっぱり自分でサービスを生み出したい!」という強い想いがこみ上げてきた。

こうして様々な学びと気づきを経て、後藤は半年間の修行を終えた。

 

最終章「独立よりローンディール」へつづく

取材協力:株式会社LOUPE
storyteller 小林こず恵

 

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