【最終章 地域への興味】「大志」を探して 〜IT企業から、絶景に囲まれた老舗鉄道会社へ〜

<過去記事>
第1章 「環境を変えたい!」
第2章「今日も電話が鳴り止まない‼」
第3章「SLに夢を乗せて」 

—東京に戻ることが想像できない

移籍が残り3ヶ月となった4月。
大井川鐵道にエンジニアがひとり入社した。

3月頃から菅原は後任でもあるエンジニアの採用に携わっており、どんな人材が良いかという要項の策定、応募者対応、面接、採用まで一通り経験した。
採用後は、トレーニングや業務のサポート業務も行い、無事に引き継ぎまで終えた。

またちょうどこの頃、移籍当初からずっと取り組んでいた「SL乗車券の発券機」のシステム改善もゴールに向かっていた。
移籍終了を目前に、当初の目的であった発券時間を短縮するという課題解決に貢献することができた。

こうして達成感を感じつつ、1年間の移籍生活が終わった。

エンジニア採用ページに掲載するために撮影した、業務中の菅原の写真

—そして最終日。自分はどんな人間に成長できたのか?

「1年、いろいろあったなぁ……」

ここ1年間、何もしない休日は1日たりともなかった。
時間があるときは沿線を巡り、街の歴史にまで興味を広げ、どっぷり浸かっていた。今では長年暮らしていたはずの東京に戻って生活することが信じられないほど。

「人が多くて歩けないんじゃないか」
そんな心配すら過る。

 

——いよいよ移籍最終日。
菅原が事務所に入ろうとすると、「入らないでください!」とスタッフから指示があった。OKの合図で中に入った途端、「主役」というタスキをかけられ、壁には「菅原さんありがとうございました」と書かれた垂れ幕が貼ってあった。

スタッフ全員が菅原の最終日を見送ってくれた。
そして、尽きない話で盛り上がった送別会の後は、皆が胴上げをしてくれた。

「またいつでも来てくださいね」というあたたかいメッセージと共に、寄せ書きまでも渡される。人生で初めての寄せ書きはあたたかくて重かった。

菅原はこの1年間を振り返る。
与えられた課題解決ではなく、経営的視点から課題を整理し、システム改善、マーケティング、企画、営業、採用など、様々な経験をすることができた。

「できることが増えたなぁ」
イメージしていた「どっしりとした姿」とまではいかないまでも、あらゆる業務を経験したおかげで考え方の幅が広がり、知見も増えた。
少しはイメージする姿に近づけたかもしれない。

それは、1年だけだからとりあえずの気持ちで参画するのではなく、1年というリミットがあるからこそ気を抜かずに集中する、という自分なりに努力したマインドも大きかったと思う。

—東京でこれから何ができるのか?

レンタル移籍を終えてから、菅原は休日など業務外の時間を使っては、「地域」をテーマにした社外のイベントに積極的に参加している。

今までは偏った分野にしか興味を示さず、自ら広げることをしてこなかったのだが、身近なことだけではなく、会社で起きていること、そして世の中で起きている外のことにも興味を持つようになった。

まだ具体的なアクションを起こせているわけではないし、「地方の持つ課題ってなんだろう……」というリサーチ段階ではあるものの、菅原の中で、東京に戻ってから、むしろ「地域」について考える時間が増えている。

—レンタル移籍を終えて数ヶ月が過ぎたある日

東京に来ていた柴田と会った際、とある後日談を聞いた。
菅原が担当したSNSキャンペーンの最優秀賞である「SLの運転体験」をした方が、心から喜んでくださったという話だった。

菅原はその場に立ち会えなかったことがずっと気がかりだったので、本当に嬉しかった。

「こういう感動って、いいな……」
大井川鉄道で触れたもの、感じたこと、そして数々の経験が蘇ってくる。

そして改めて思う。
トレンドマイクロにいるからこそ、地域に還元できそうなことは山ほどある。

—「大志」が生まれた

2018年10月。
移籍から戻ってきてもうすぐ3ヶ月が経つ。

菅原は来年度から始まる新しいプロジェクトメンバーとして業務に取り組んでいた。

多くの地方企業を含む、トレンドマイクロの顧客の「成功」の実現を後押しし、顧客の成功をトレンドマイクロの事業の成功へとつなげる、従前の取り組みを発展させた新しい仕組みづくりである。

菅原はそこでプランニングを主導している。
大井川鐵道で培ったビジネス全般を広く捉える経験が既に違いを生み出している。関係者を熱意で巻き込み協働することにもためらいがない。

そして、まだぼんやりとではあるが菅原の中に「大志」が生まれた。

それは「地方における価値の生産活動が、情報セキュリティによって煩わされることなく、むしろテクノロジー全般の活用により、促進されていく姿を実現したい」という想い。

その背景には、「日本には美しい場所がたくさんあるのに、生産活動が維持できないために衰退してしまうのはもったいない」
そういう想いが根底に生まれたからである。

菅原は今、
情報セキュリティを通じて地域に還元できること模索しはじめている。

 

End

取材協力:トレンドマイクロ株式会社、大井川鐵道株式会社
storyteller 小林こず恵

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