「止まるな、止まるな」大和ライフネクスト 服部翔太さん-前編-
住宅総合メーカーとして、人々の暮らしを支えるダイワハウスグループ。その中でも、マンション、ビル、ホテルなどの総合不動産管理を行う大和ライフネクストに勤めるのが、今回の主人公・服部翔太(はっとり・しょうた)さんです。
新卒で入社し、今年で4年目を迎えた服部さんですが、さらに広い視野を持ちたいと、「レンタル移籍」を決意。移籍先は、世界初の排泄予測デバイス「DFree」を開発し、福祉・医療業界の課題解決を目指すトリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社です。業界も職種もまったく異なるベンチャー企業へのレンタル移籍を通じて、どのような経験をされたのでしょうか。
コロナ禍で始まったレンタル移籍
大学ではバイオテクノロジーの研究に打ち込み、ゆくゆくは化粧品会社で研究職につきたいと考えていた服部さん。しかし、あらためて自らの適性や将来と向き合ったときに、人と触れ合い、誰かの役に立つ仕事につくことで自分自身も成長していきたいと考えるようになりました。そうした想いから、不動産管理など人の「暮らし」にまつわるサポートを行う、大和ライフネクストへの入社を決めました。若い年次からマネジメントに携われるなど、スピード感をもって成長できるということも、選ぶ決め手になったそうです。
入社後は、担当するいくつかのマンション管理組合運営をサポートするため、住民との対話、設備の維持のための修繕の提案などの仕事を受け持ちます。3年目には、念願だったマネジメント業務としてのキャリアもスタート。より一層勉強してスキルを磨きたいと、レンタル移籍に応募しました。
自己成長のために、「15人以内の少数精鋭であること」「創業5年以内のスタートアップ」「社会における課題解決に取り組んでいる」という3つの基準で移籍先を探しました。たくさんの企業の中で、服部さんの心をぐっと掴んだのがトリプル・ダブリュー・ジャパンでした。
トリプル・ダブリュー・ジャパンは、世界初の排泄予測デバイス「DFree」を開発し、介護・医療現場の介護の質の向上に役立てています。排泄予測を可能にすることで、介護者の負担軽減になるだけでなく、被介護者の生活の質の向上を実現することを目指しています。服部さんの望み通り、まさに社会課題の解決に取り組んでいる会社。意気揚々と、移籍の日を心待ちにしていました。
ところが、2020年4月からスタートしたレンタル移籍は、コロナウイルスの影響で、1日だけ出社したのち、リモートでの勤務に。これまでと違い、SlackやGoogleの各クラウドサービスなどこれまで業務では使ってこなかったデジタルツールの扱いに戸惑う日々。文章で簡潔にコミュニケーションをとり、WEB会議や社内チャットツールやオンライン会議上で物事をどんどん決めていくなど、業務が進むスピードも大きく違っていました。
「これまでは、レクチャーを受けてから取り組むということが当たり前の環境にいたんだ、と気づきました。自分で調べたり聞いたり、試行錯誤するうちに、ここでは自ら考えて動くことを当たり前にしなくてはいけないんだということがわかってきました。でもどう動いていいのかわからず、最初は、外から来た『お客さん』のようになってしまっていたと思います」
リモート勤務の影響もあり、しばらくは商材や顧客について知識がついていかず、ただ業務をこなすだけの日々が続いたそうです。しかし、取締役の小林正典さんについてオンライン商談に同席することで、自分のやるべきことが少しずつ見えてきた服部さん。6月からは出社するようになり、小林さんの仕事ぶりを目の前で見ることで、商談のコツや仕事のリズムなどを掴んでいきました。
「小林さんと常にコミュニケーションがとれる距離で仕事をしていたので、日常的に相談・報告ができました。会話の中でやるべきことが決まっていくので、とにかく展開が早い。スピードの感覚が違うことにおどろき、勉強になりました。案出しをする際も、これまでなら1週間ぐらい時間をかけていたのですが、次のミーティングは次の日やその次の日には決まって。『止まるな、止まるな』と、自分に言い聞かせながら踏ん張っていました」
危機的状況下で感じた力不足
さらにコロナの影響で、物事がスムーズに進まない状況がつづきます。トリプル・ダブリュー・ジャパンにとって、もっともターゲットとなる福祉施設や病院は、業界自体が危機的な状況に置かれていました。
「コロナが鎮静化するのかもわからない状況で、施設へ訪問することがままならない。基本的には、Zoomなどオンライン会議サービスを駆使した商談でした。商品の導入につなげるためにも、きちんと実物の商品を触りながら説明し、理解をしてもらいたいという歯がゆい思いもありました。せっかく導入してもらえると思ったら、コロナの影響で予算を使えないため、見送りになることも」
また、一人で顧客との商談や対応を任されるようになってからは、小林さんとの力の差を感じ、悔しい思いをすることも多々あったそうです。
「商談相手の考えや状況を捉えきれていない、『DFree』の良さを伝えきれないなど自分の力不足を感じる場面が多々ありました。小林さんから直接的には言われないのですが、『まだまだ足りない』と思われているんだな、と痛感することが幾度もありました。この時期は、大変だったというより悔しいという思いが強かったですね」
目指すべきは、ゼネラリスト
初めて社外に出て感じた、自分の力不足。そのためには介護業界に対する知識だけでなく、社会全体の動きや情報をもっと幅広くインプットする必要性を感じたそうです。サービスの認知度を広げ、多くの顧客にリーチするために行っている広告運用も担うようになります。
「広告に関する知識がまったくなかったので、『リードって?』というところからスタートしました。7月頃は、広告など営業につながるところから納品まですべてを任せてもらえるように。広告運用に携わることで、マーケティングの観点から物事を見ることが身につきました」
「DFree」を必要とする顧客の心を掴む広告とは、どういったものなのか。広告のリサーチから運用、商品説明動画の作成、パンフレットの修正対応などより幅広い業務にも携わるようになった服部さん。
担当ごとの業務の分担がはっきりしている大企業と違い、ベンチャーではみんながゼネラリスト。自分でアイデアを出し、実行し、検証する。その繰り返しを各自が行うことで、スピード感をもって会社が進んでいく。服部さんも次第に自分の行動が会社の利益に直結することを目の当たりにし、「自分も経営の一端を担っている」というマインドをメンバー全員が持つことが必要なんだと、身にしみて感じたそう。
これまでとはまったく違う業界で、商材の販売、商談、広告運用と未経験の業務に挑んだ3ヶ月。さらにコロナ禍という先行きの読めない状況下で、手探りで進む毎日。トリプル・ダブリュー・ジャパンの一員して、服部さんは残りの日々をどのような気持ちで仕事に取り組んでいったのでしょうか。後編につづきます。
協力:大和ライフネクスト株式会社
トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社
文:三上 由香利
写真:宮本七生
<トリプル・ダブリュー・ジャパンよりお知らせ>
● おむつ・パッドの月額定額使い放題プラン サービス
のちに、服部さんが、トリプル・ダブリュー・ジャパンで立ち上げた「介護施設向けおむつ・パッドの月額定額使い放題」サービスです。詳細は以下よりご覧ください。
https://www.value-press.com/pressrelease/260003
【レンタル移籍とは?】
大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2015年のサービス開始以降、計45社121名のレンタル移籍が行なわれている(※2021年1月1日実績)。