「"こうあるべき" から "こうありたい" に変わったワケ」 【後編】
前編では、オリエンタルランドで働く西川さんが、ハックキャンプへのレンタル移籍を通して、自分の中の仕事に対する固定観念に気づいたお話を伺いました。後編では、その後どのような気持ちの変遷があったのか聞いてみたいと思います。
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ー自ら踏み出すことで広がった世界
Q:レンタル移籍後2ヶ月で迎えたターニングポイント、その後、気持ちは切り替えられましたか?
取締役に外部セミナーやイベントに連れて行ってもらう機会があって、元々自分はそういうものは苦手だったんですが、今行かないとずっと行かないだろうと思って、参加するようにしました。
そこで、外部の方の話を聞いているうちに、自分が見ている視点ってすごくちっぽけなものに見えてきて。とても小さな器の中で仕事をしているような気がして。そういう気づきがあって、「せっかく、自分がベンチャーに移籍させてもらっているんだから、もっとこの環境を楽しもう」と思うようになりました。
それまでは、会社が求めている人物像になって帰ろうと思っていました。でもそうなって帰る以前に、この環境を楽しまないとだめだなと。求められている人物になることが全てではない、と考えるようになりました。
Q:会社が求める人物像というのは元々ご自身の中にあったのですか?
ありましたね。半期に一回評価があるので、その中の行動指針の中にもありますし、自分の苦手領域についてマネージャーと話すこともあります。自分に不足している点を克服して、会社として必要とされる人間になる”べき”だ、と思っていて。でも、最近はそう思わないようになってきました。
自分のやりたいと思うことをやってみて、その過程で会社に貢献することができれば一番の理想形だと思っています。さらに、そういう働き方をすることで、会社の中でこういうことをやってもいいんだと、周囲に対して波及していけるようになりたいですね。
ー自社に戻って感じる、自分の中の変化
Q:移籍から戻ってきて、自分が変わったと思いますか?
自分ではそんなに自覚はないのですが、自社に戻って同僚から「変わったよね」「(レンタル移籍に行く前は)そんなこと絶対言わなかったよね」という声をかけられます。
Q:そんなこと、とは?
「“どうあるべきか”より“どうありたいか。”が大切」とか、「それって会社が求めているものに寄せにいっていない?」と口にするようになりました。レンタル移籍を通して、そういうことに気がつくようになったようです。
移籍中、バックキャスティング思考(ありたい姿・あるべき姿”から“いま”を考える思考法)を究極的に叩き込まれたのもありますし、矢吹さんと一緒に営業に行った際に、クライアント先の大手企業の人材に対して「君たちは何をしたいんだ」と質問している姿を目の当たりにしたことが大きいです。そういう問いかけがあると、飛び抜けて良いアウトプットがでてくる場面にも立ち会えました。
そういえば今度、社内でハックキャンプと一緒にアイディア発想のワークショップを開催する予定です。
Q:それは楽しそうですね。西川さんが企画したのですか?
はい、15人ぐらいのメンバーで開催予定です。今までだったら商品本部のメンバーのみで開催していたのですが、それじゃ面白くないと思って、様々な部門の人に声をかけて、「新しいサービスとは?」という切り口で、アイディア出しをしようと企てています。
Q:ハックキャンプへの移籍を通して、いろいろな動きが生まれているんですね。他には何か気づきはありましたか?
何をやりたいかも大事だけど、誰とやるかも重要ですね。ハックキャンプのメンバーは個性的で、それぞれの想いを背景に仕事をしているのに一体感があって、楽しかったです。チームとしてとても充実していました。
ハックキャンプに行く前は、マネジメントされない環境だと“手を抜く”んじゃないかと思っていたんです。それなのに、みんな手を抜かないんですよ。それどころか、マネジメントされていないからこそ、一人ひとりが自ら動いて、イキイキと楽しく仕事をしているんです。主体性を持った人たちが自発的に動く組織って強いんだなと。
ー楽しんで働ける仲間を増やしたい。新たな展望
Q:今後、具体的なビジョンがありますか?
今までにない新たなチームを作りたいと思っています。
移籍期間中、とあるビジネススクールに参加していたのですが、そこで出会った講師の方から、個人の本業とは違う側面(本人の好きなこと)にスポットを当てたチーム作りの話を聞いたんです。
それ以来、OLCの中に新しいチームを作りたいと思うようになりました。本業とは違う個人の「興味」を組織化して、そこから生まれる新しいアイディアをどんどんプロジェクト化していくことが目的です。OLCの中にも、そんなチームができたらいいなと思って。移籍を経験した同僚に話をしてみたら「いいじゃん!」と賛同してくれました。上司にも伝えて大筋合意は取れたので、組織化に向けて進めているところです。今はまだメンバーが4人しかいませんが、今後活動を通じて色々なアウトプットをしていけば、一緒にやりたいという人が出てくるかもしれない。
僕はトムソーヤ理論って言ってるんですけど、自分が楽しんでいれば、みんなが「なにやっているの?」って感じになってくるんじゃないかと。すごい異端児扱いされるか、賛同してくれるかでいうと、9:1ぐらいの割合で、「あいつ何やってるんだ。」って異端児扱いされるだろうと思っています。が、それでいいと思っているんです。まずは、メンバーのあなたの「好奇心を引くもの」はなんですか? からはじめて、そんな動きがうねりとして大きくなっていけば、OLCで働くヒトも組織も変わっていくんじゃないか、と期待しています。楽しんで働けるヒトが増えるんじゃないかと。
Q:行動的ですね!
結果が出ていないのでまだまだこれからですが。でも、レンタル移籍を経験していなかったらこんなこと絶対にしなかったです。
Q:レンタル移籍に行ったからこそ、行動できるようになった。ということですか?
ハックキャンプがウォーターフォール型の仕事ではなく、自分でこれやりたい!という手挙げ制で、そこからタスクをつみあげていくような仕事の仕方だったので、それを経験できたことが影響しています。
トップダウンのウォーターフォール式の仕事だと、自分のカラーは出しにくいですよね。極端な話、面白くないですよね。そこに面白さを求めればいいという意見もあるかもしれませんが、僕は、それ以前に楽しいことが仕事になれば良いなと思っていて。大半の企業ではそれをなし得ることは難しいかもしれませんが、チャレンジしているところです。
Q:レンタル移籍を他の人に薦めたいと思いますか?
はい! ベンチャーに行ってみたい。と思う人はぜひ行ってほしいです。僕自身は転職組ですが、新卒からOLCという方もたくさんいますから、そういう方が行きたいって思ってもらえるように、僕自身が動いていきたいです。実際、(レンタル移籍の)感想を、何人かに聞かれましたけど、「めっちゃ楽しかったです。帰りたくなかったです」と答えています(笑)。
Q:特に楽しかったことは何でしょう?
やっぱり「ヒト」が一番大きいと思います。みんな楽しそうに仕事しているんですよ。それと、ハックキャンプが提供するものがサービスなので、クライアントごとに柔軟に対応していかないとマッチしない。だから毎回、どうしたら面白くなるか、どうしたらクライアントに喜んでもらえるかというのを考えながら取り組んでいました。
そういう仕事の中での創意工夫は、今のOLCのしごとのスタイルでは排除されていると思います。それはたしかに、効率化だったり、ブランド力の維持のために必要なことではあると思うのですが、ちょっとぐらい脱線してもいいんじゃないか? という気持ちが芽生えました。
Q:それは新たなチームを創ることで突破できそうですか?
できると思います。
元々OLCは、電鉄会社の社長だった川﨑千春さんが出張でアメリカのテーマパークを視察して、これを日本にも作りたいと思ったのが始まりで、テーマパークビジネスを運営する会社が創業されたんです。それってまさに本業とは違う側面じゃないかと思って。自分の好きや楽しいという感情を究極に求めたがために実現したことではないかと。
初代社長の考えたことと、今自分たちが新しいチームを創ってやろうと思っていることって同じなのではないか…、仲間と未来を創る仕事ができるんじゃないか、そう思っています。
* * *
「小学校6年生で初めてテーマパークを訪れた際、こんなに楽しいなら働いても絶対楽しいだろうなと思ったことから、採用試験を受けてみたものの結果は及ばず。就職氷河期だったこともあり百貨店に入社したけど、OLCに入りたくて仕方なかったですね当時」と語る西川さん。
巡り巡って夢を叶えた少年は今、さらなる夢に向かって挑戦しています。
Fin
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【レンタル移籍とは?】
大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2016年のサービス開始以降、計32社78名以上のレンタル移籍が行なわれている(※2020年1月実績)。→詳しくはこちら
協力:株式会社オリエンタルランド / 株式会社HackCamp
インタビュー:管井 裕歌