「"こうあるべき" から "こうありたい" に変わったワケ」 【前編】

「どうあるべきか、よりどうありたいか」
そんなことレンタル移籍に行く前は言わなかったよね、と同僚から言われます。と株式会社オリエンタルランド(以下、OLC)の西川豪(にしかわ・たけし)さんは笑顔で答えてくれました。
西川さんは2019年6月から6ヶ月間のレンタル移籍を終了し、現在、商品本部で業績管理と新規事業を担当する傍ら、OLCで“新たなチーム”をつくろうと奮闘しています。

西川さんが半年間のレンタル移籍を通じて感じたものとは…。

ー百貨店バイヤーからの転身

Q:レンタル移籍から戻られて3ヶ月、現在はどんな業務を担当されていますか?

移籍前の所属と同じ商品本部に戻り、業績管理の数値分析の部分と、新規施策を担当しています。新規事業においては、部内に、1期でレンタル移籍を経験した同僚がいるため、2人でOLCが持っているリソースを活かしながら、何ができるかという可能性を探っています。

Q:やりがいがありそうですね。

やりがいはあるのですが、既にあるものが大きいゆえの難しさもあります。でも、チャレンジすることに意義を感じているので、トライアル・アンド・エラーをしながら取り組んでいきたいと考えています。幸い、上司が理解してくれているので、環境はとても良く、今やらないともったいないとも思っています。

Q:西川さんはOLCに中途入社をしたと聞きましたが、きっかけを教えて下さい。

新卒で百貨店に就職し、最初は紳士服売り場を経験しました。その後、おもちゃ売り場に異動しました。おもちゃ売り場は、土日になるとお孫さんに玩具を求める方でいっぱいでした。一方で、百貨店自体のお客様の高齢化を感じる面もあり、将来に不安を感じていました。

そんな時に、とある玩具メーカーのセミナーに参加し、「商品(おもちゃ)は商品である以前にコミュニケーションツールです。商品を買う前に“これってね…”という対話が生まれるでしょう?」という話を聞いて、「ハッ」としたんです。自分は単なる「モノ」を売っているのではない。コミュニケーションツールを提供しているのだ、と。

それ以来、おもちゃ売り場で、お客様に商品の説明をしたり、使い方をあれこれと考えたり、遊びに来ている子ども達と話をするというのは、小売の醍醐味だと考えると同時に、「単なる販売員ではない、コミュニケーションツールを提供してる」という点に、やりがいを感じて働いていました。

でも、業界への不安を拭えずにいたため、転職を考えていまして…。
そこで偶然、OLCの商品本部の求人を見つけたんです。実は、就職活動をしている時、OLCで働きたいと思ってエントリーしていたことがあって、もともと憧れはありました。

「商品本部の求人ということは、(テーマパークで売っている)お土産というコミュニケーションツールを提供することに関われるのではないか、これまでの百貨店での経験が、活かせるのではないか」と思いエントリーしました。

ー自分の武器が通用しない環境に身を置いてみたい

Q:そうだったのですね。転職後はどんな業務をされていましたか?

入社以来商品本部に在籍し、レンタル移籍に行く前は、全社省力化プロジェクトの担当として、RFIDという新しいテクノロジー(ICタグ)の導入や、業務効率化を担当していました。

Q:自分で希望していた部門の仕事に就きながら、なぜ「レンタル移籍」に手を挙げたのですか?

僕は(レンタル移籍の)2期で行ったのですが、本当は1期目の公募が始まった時からいいなとは思っていました。でも当時は、現業を差し置いてレンタル移籍に行く、というのに少し抵抗があって。でも、実際に1期目で移籍を経験した同僚が戻ってきて、彼の変化を感じて、行こうと決めました。

その頃、自分は現場の変革プロジェクトリーダーとして社内に新しいテクノロジーの導入の優位性を説明したり、社内の調整をしたりしていましたが、会社の変革をするためには「ヒト」が変わることが重要だと感じていました。

そして、変革を牽引するためには自分自身にリーダーシップが必要だと思うようになっていました。上司からも「熱い想いで人を巻き込み現場を変えられる突破力が必要」とフィードバックを受けていたので、このタイミングで自分の武器が通用しない環境に身を置きたいと思い、2期目の公募で手を挙げました。

今、実際にレンタル移籍を終えて思うのは、1年早く手を挙げていれば、その分、アウトプットできる時間は増えたわけで、会社にももっと貢献できていただろうって…。そう思うともったいなかったなと、1期目で手を挙げなかったことを反省しているくらいです(笑)。

Q:相当な学びがあったようですね。ちなみに、移籍先はどのように選びましたか?

これまで社会人になってから一貫して「モノ」を扱ってきたので、チャレンジングな選択として、無形サービスを扱う、株式会社HackCamp(ハックキャンプ)というアイデアソンやハッカソンをはじめとする各種ワークショップを企画運営している会社を志望しました。

Q:ハックキャンプに移籍を決めたときに、目標はありましたか?

自律的に思考し、行動する組織のきっかけになるよう、
・突破力を身につける
・人間関係構築力を高める
・変化変革を楽しめる人になる
と大きく掲げていたのですが、実は6ヶ月間ずっとモヤモヤしていて…。

Q:モヤモヤとは?

会社に何を持ち帰ろうとか、OLCに戻ったときにどんなアクションを起こせばいいのか、という点について、わからないまま過ごしていたんです。でも今振り返ってみると、逆にそれで良かったと思っています。

結果からいうと、僕自身の考える力が弱かったことがわかりました。この6ヶ月間で、自分がこの先どうありたいかを突き詰めたからこそ、今「自社でこうしたい…」という思いが生まれるようになりました。

ー移籍先での日々

Q:ハックキャンプではどのように過ごしましたか?

リモート勤務の方が大半で、リアルコミュニケーションをとらないことに慣れるまではけっこう大変でした。元々コミュニケーションが苦手で、人と接しなくても生きていける。と思っていたぐらいなのですが(笑)、リモートの場合は、コミュニケーションがSlack上のテキストになってしまう。そうするとニュアンスが伝わりにくい面もあって、その難しさに最初は苦しみました。

Q:では、ハックキャンプでは具体的にどんなお仕事をされましたか?

主に2つあって、1つは新規サービスとして、派遣ファシリテータ事業を任せていただき、リリースしました。2つめは、BARハックキャンプというイベントを企画しました。派遣ファシリテータ事業はもともとハックキャンプの副代表である矢吹さんのアイディアをベースに立ち上げたもので、プロのファシリテーターを企業に派遣するという事業です。

BARハックキャンプは、これまでハックキャンプを利用してくださった企業の皆さんが、1回利用したらそれっきりになってしまうことが多くて、もう少しカスタマーサクセスの中でハックキャンプを使った優位性、つながりを作って行きたいという課題感から企画しました。

僕は飲み会が嫌いなのですが、そんな「飲み会嫌いな西川が行きたいと思える飲み会」を企画しようというところから始まり、当日は、古いつながりの企業さんから新しい企業さんまで参加していただくことができて、未知の化学反応が起き、利用者同士の楽しい場にすることができました。

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移籍先のHackCampにて


Q:それは良い経験でしたね。他に、移籍中の印象的なエピソードはありますか?

移籍後まもなく、組織やチームがすごくフワッとしている点に違和感を覚えて、「もっと組織化すべきだ」みたいなことを言ったことがあります。

Q:それは誰に対してですか?

チーム全体に対して、パワーポイントで資料を作って、「ハックキャンプが抱えている課題ってこうですよね」と進言しました。その時は、僕の中ではそれがズレている、という認識がありませんでした。僕の中に「組織とはこうあるべきだ」という想いがあったので。

すると、代表の関さんが、「ハックキャンプという組織は、マネジメントしないマネジメントスタイルなんだ。みんながハックのVISIONに共感してジョインして、それぞれが自分の成長したいポイントや、なし得たいことを突き詰めてタスクをこなしている。だからこそ、マネジメントは不要だし、成長の度合いも人それぞれなんだ。そんな中で、組織化、チーム化というのは明確にはしていない」という話をしてくれました。その話を聞いて、そのときは「なるほど」と答えたんです。なるほど。と答えながら、僕の中で腑に落ちていなくて、「そうは言っても…」と過ごしていました。

Q:腑に落ちない状態から、ハックキャンプのスタイルに適応できたのでしょうか?

移籍から2ヶ月が過ぎた頃、矢吹さんから「おまえは自分の貯蓄で仕事をしている」と言われました。同じタイミングで、メンターの原田さんからも「自分が今までやってきた範囲の中で仕事している」と。

これまでの自分は、他人から指摘されたら「おっしゃるとおりです」と自分の中で咀嚼するタイプでした。でもそのときは移籍先で壁にぶつかり悩んでいる時で、矢吹さんからのコメントも受けた後だったので、「僕は僕でちゃんと考えてやっている」という想いがあって、原田さんとメールで言い合いになってしまいました…。

このとき初めて、自分のWILL(想い)に基づいて行動していることに対して指摘されたので、“反論する”という経験をしました。これまで、自分が他人からの指摘を「おっしゃるとおりです」とそのまま飲み込んでいたのは、自分の想いがないからこそできていたことだったんだと思いました。

そんなやりとりを経て、冷静になって考えてみると、傍から見て「持っているスキルセットの中でしか仕事をしていない」と言われるということはダメだなと。このままだと6ヶ月間が無駄に終わってしまう、と感じました。

組織についての考え方や、仕事への向き合い方について、OLCあるいはその前の百貨店時代から続いてきた自分の「べき論」の中で生きているのかもしれない。これはまずいなと思ったのが、大きなターニングポイントだったように思います。

移籍後2ヶ月で迎えたターニングポイント。
この後西川さんはどのように自分に向き合い、どんな変化が訪れたのでしょう。

→ 後編へつづく

【株式会社HackCampからのお知らせ】 

オンラインでビジョン形成体験ができる!
視覚会議BASIC(視覚会議×バックキャスティング)体験会のご案内

西川さんがレンタル移籍した株式会社HackCampさんによる、オンラインの視覚会議イベントがあります。詳しくは以下URLよりご覧ください!

http://bit.ly/2pnc5Gi

【レンタル移籍とは?】

大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2016年のサービス開始以降、計32社78名以上のレンタル移籍が行なわれている(※2020年1月実績)。→詳しくはこちら

協力:株式会社オリエンタルランド / 株式会社HackCamp
インタビュー:管井 裕歌

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