越境学習とは?〜企業の人材育成施策として注目される理由と活用事例〜

 

近年、急速に変化するビジネス環境や社会課題への対応が求められる中で、従来の枠組みにとらわれない新たな学びの手法として「越境学習」が注目されています。組織の枠を超えて多様な経験を積むことで、個人の成長と組織の革新が促進されると考えられています。この記事では、「越境学習」の概要や事例について解説し、具体的な活用事例を通じてその効果を探ります。

1.越境学習とは何なのか

「越境学習」とは、企業に所属する人材がその組織の枠を越えて学びを得ることの総称です。「越境学習」は2000年代中盤から人材育成・キャリア開発といった分野で少しずつ語られてきましたが、近年この「越境学習」もしくは「越境」というコンセプトが、より注目を集めるようになりました。

2018年度には、経済産業省が実施する「未来の教室」事業の一環として「越境学習によるVUCA時代の企業人材育成」というウェブサイトが公開され、2021年には「大企業人材等新規事業創造支援事業費補助金」の一環として「効果的な越境体験の導入に向けて」というガイドラインや「越境体験ルーブリックと活用マニュアル」といった評価ツールも公開されました。

こうした背景もあり、元々は、個人のキャリアといった文脈で使われていた「越境」という考え方が、徐々に企業の人材育成、ひいては組織変革という文脈でも期待され、注目を集めるようになってきているのです。

「日本の人事部 人事白書 2022」(5,200社に調査)によると、約8割の企業が「越境学習が重要だ・やや重要だ」と回答しているという結果も出ています。

では、そもそも「越境学習=組織の枠を越えて学びを得る」とは具体的に何を指すのか。

いくつか例示をしていくと、
・大学院やビジネススクールに通う
・副業や兼業
・出向
といったものが挙げられます。

他にも、何かしらのイベントに参加して他社の人と交流し、共通のテーマについて意見交換をするような場面も「越境」です。また、ビジネスの領域に限らず、たとえば地域コミュニティやボランティア活動に参加すること、子どもの学校でPTA活動や部活のコーチをするといった行為も、「越境」といえるケースがあります。

このように、一口に「越境」といっても様々な選択肢がありますが、共通しているのは、本来所属する組織を越え、異なる場所で学びを得て、戻ってくるプロセスであるということです。

戻ってきて、学びや経験を所属する組織の中で発揮するまでがセットであるということが特徴といえます。これが、いわゆる転職との違いでもあります。

つまり、越境の本質は「戻ってくる」ということです。

 

2.越境学習が「組織」に求められている背景

ではなぜ、「越境学習」が人材育成において期待されているのでしょうか。
それは、変革を迫られている状況の中で、企業の関心が「人」に向きはじめたことが大きいと言えるでしょう。

(1)「仕組み・制度」から「人」の時代へ

「失われた30年」といわれ、バブル崩壊以降、企業は変革・イノベーションの名のもとに試行錯誤をつづけています。投資やオープンイノベーション施策を通じたベンチャー企業との連携の中で変革を起こしていこうという外向きの施策や、新規事業コンテストや社内起業家支援プログラムなどの内向きの施策などが挙げられます。これらの活動は、特に2010年代に入ってから、多くの企業で活発に行われるようになりました。

しかしながら、先が見えないVUCAの時代において、それら仕組みや制度を整えるだけでは、打破できないことがわかってきました。そこで、「何をやるか」よりも「誰がやるか」という人の側面に主眼が置かれるようになり、「どのようにして変革を推進できる人材を育てるのか」という問いが生まれました。

そのような経緯もあり、「越境学習」というコンセプトに注目が集まるようになったのです。

越境した人材は、まったく違う環境の中でインプットやアウトプットが必要となり、キャリアにおいて非連続な機会を獲得することになります。その結果、持っているスキルや能力に対する自己認識が深まり、新たな知見を得て、事業に対する視野や経営における視座が高まります。

このような「自社では得られない経験」を積んだ人材に、「自社で変革を起こすこと」への期待が高まっているのです。

(2) イノベーションを起こす「両利き人材」への期待

それでは、なぜ自社では得られない経験をした「人材」に変革が期待されるのでしょうか。

イノベーション創出においては、「両利きの経営」が重要であるといわれます。端的に言うと、既存事業においては「知」を徹底的に深堀して収益化を行い(知の深化)ながら、一方で常に企業が認知している範囲の外に「知」を探しにいく(知の探索)という活動をする必要があるということです。この両方を実践していかないと、イノベーションが枯渇してしまう、という理論です。

多くの企業が、既存事業の収益性を高める方、つまり「知の深化」の方に意識が向いてしまいますが、企業がイノベーションを起こすためには「知の探索」が必要であるということを指摘しています。

早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授は「越境」を「知の探索」の手段の一つと捉え、その著書『世界標準の経営理論』の中で、「日本型の知の探索が、やがてイノベーションを活性化させる一手となる可能性は十分にある。(中略)日本の大企業から人材を外に出す動きが同時多発的に起きているのは、決して偶然ではない。大企業人材の「知の探索」を企業側が求めているから」と指摘しています。

まさにこの「知の探索」という行為こそが「越境」であり、それを経験して異なる「知」を得た人材こそが変革を推進できるのです。

(3) 企業と個人のニーズ、両方を満たすのが「越境学習」

ここまでご紹介してきたように、「越境」というのは企業変革の手段であるということ。そして、個人の成長機会でもあるということです。詳しくは次節で述べますが、双方のニーズを満たすことができるのが「越境」なのです。

さらに、従来、人事・人材開発とイノベーションという領域、つまり企業でいうところの人事部と新規事業開発部門は、あまり交わりの無かったように思われるのですが、「企業変革」に向けて、両者のベクトルも急速に同じ方向を向き始めています。

このような経緯から、企業の人材育成のための研修プログラムとしての需要が高まっているのです。

2020年9月に発表された「人材版伊藤レポート」を機に、企業ではますます「人的資本経営」が重要となりました。2023年3月からは、大手企業約4000社を対象に人的資本の情報開示が義務化されています。

企業では今後ますます「人」を活かす施策が求められ、働く個人もまた、「キャリア自律」が高まる中で、両者において「越境」は必要不可欠になることでしょう。

【参考記事】キャリア自律が進んだ未来の組織に、越境人材はどのくらい必要なのか?

 

3.越境学習で「個人」に起きる3つの変化

ここまで、企業における越境学習の背景や必要性に触れてきましたが、ここからは「越境」を通じて起こる個人への変化について紹介していきます。

2016年に発売された『LIFE SHIFT』という書籍でリンダ・グラットン教授らによって提唱された「人生100年時代」という言葉は、大きな波紋を呼びました。これまでは「20代前半まで学び、社会人として働き、60歳で引退して余生を過ごす」というように人生は大まかに3ステージに区切られていましたが、そのようなモデルケースは通用しなくなります。経済的な理由なども相まって、これまでよりも20年くらい現役世代として仕事をする期間が長くなるということです。

そのためには、働きながら学びつづけること、学び直すことが人生100年時代に求められるといわれています。その機会こそ、「越境」なのです。以下は、私たちローンディールが提供する越境学習プログラムを通じて、個人に起こった変化を中心にまとめていきます。


(1) 自然とアンラーニングできる

一つの組織で長く働くうちに、徐々に仕事がこなせるようになります。この「こなせる」という状態には、個人の成長を阻害するリスクがあります。具体的に言えば、新しく知識やスキルを獲得できる機会を目の前にしても、自分の理解できる範囲の中で処理してしまい、学びが深まらないということになってしまうのです。

ここで重要なのは「アンラーニング」という行為、つまりこれまで学んできた知識を一旦捨てるということです。自分が持っている前提を外すことによって、目の前にある機会から得られる学びを最大化できるのです。しかし、「アンラーニング」をすることは、とても難しいのです。なぜなら、過去の自分を否定することになったり、存在が揺らいでしまうことになったりするという不安が伴うからです。

これに対して、越境を通じてまったく違う環境に飛び込む場合には、そもそも環境が変わるわけですから、自然と前提がリセットされることになります。つまり、まっさらな状態で学ぶことができるようになるのです。

(2)メタ認知力が高まる

個人が有しているスキルは、業界を越えてどこでも発揮できる「ポータブルスキル」と、その組織や業界でしか通用しない「組織特殊的能力」に分けることができます。

しかし、ひとつの企業でしか働いたことがないと、この両者の区別がつきません。つまり、自分のスキルや知識がどこまで普遍性を持っているかを認識することができないのです。さらに、比較対象が社内にしかないと、自分のスキルが社会全体でみたときにどのくらいのレベルに位置しているかを理解することも、難しいわけです。

このように自分のスキルや状態を俯瞰し相対的に捉える力を「メタ認知力」といいます。メタ認知することで、納得感を持って自分の課題に向き合い、成長のために行動を起こすことができるのです。

越境し、異なる環境でアウトプットを行うと、自分が身につけてきたスキルや知識が、どれだけ社外で通用するのか身をもって経験することになります。つまり、メタ認知力が向上するのです。そしてこれは、自分の市場価値や立ち位置に関する理解にとどまらず、これまでの仕事経験がどんな意味を持っていたのかを振り返る機会にもなっていきます。

(3)物事を捉える視点が増える

越境し、異なる業界・職種・企業文化の人々と交流することで、世の中には多様な考え方があり、仕事の進め方も一通りではないことを知ります。ひとつの決められたやり方の中でしか経験がないと、「これしかない」と思ってしまいがちですが、「これまでの考え方・やり方がすべてではない」と気づくことで、物事を多角的に捉えることができるようになります。そして、問題解決や意思決定の際に、より多角的なアプローチができるようになります。

また、従来の枠組みにとらわれない創造的な発想が生まれやすくなります。トヨタの生産方式がスーパーマーケットの仕組みにヒントを得ているというのは有名な話ですが、ある業界で当たり前だったことが、別の業界では革新的なアイディアになるというケースは多くあります。

このように視点を増やすこと自体が、創造性を高めることにつながっていくのです。

参考:【レポート】越境学習による「キャリア自律」と「エンゲージメント」の育み方

4.人材育成における「越境学習」プログラムの事例 

こうして、人的資本経営においても、個人のキャリアにおいても注目される越境学習ですが、プログラムを提供する事業者も増えてきました。

越境先としてはスタートアップやNPO、地方自治体などの選択肢がありますし、越境の頻度としてもフルタイムでいくケースや業務時間の一部を割く、業務時間外に副業として関わるなど様々です。また、参加の仕方としても一人で参加する形や、グループワーク形式で行われるものなど、様々です。

そして、私たちローンディールは、「越境学習」が認知されていなかった2015年の創業以来、越境プログラムの開発・提供を行ってきました。そして現在では、大企業100社・累計800名以上の大企業人材に越境機会を提供しています。

具体的には、
・半年〜1年間フルタイムで越境する「レンタル移籍」
・3ヶ月間、業務時間の20%を使って越境する「side project(サイドプロジェクト)」
・ミドルマネジメント層にオンラインで他流試合の場を提供する「outsight(アウトサイト)」
という3つの越境プログラムを展開しています。

 

 

* * *

それでは、組織が人材育成や組織開発において、どのように越境学習を活用しているのか?  

ローンディールの越境学習プログラム3つも事例に交えながら、紹介していきたいと思います。

(1)タフアサインメントにより経営人材・次世代リーダーを育てる「レンタル移籍」

「レンタル移籍」は、大企業の人材を一定期間ベンチャー企業に移籍させ、育成するプログラムです。半年や1年、フルタイムでベンチャーに越境するのが特徴です。

候補者の方には、まずご自身が何のために越境するのかということを内省し、言語化していただくというプロセスを経て、登録ベンチャー企業(スタートアップやNPOなど)800社以上の中から目的に即したベンチャー企業を紹介していきます。そして、ベンチャー企業の経営者と面談を行い、合格を勝ち取ってはじめて自らのレンタル移籍先が決まります。会社から言われた場所に行くのではなく、自分の頭で考え意思決定するプロセスを通じて、本気度を高めるとともに自律的な行動の一歩目をつくります。

レンタル移籍期間中は、専属のメンターが伴走し、週報を通じた内省や1on1を通じて成長を支援します。 そして、レンタル移籍終了後にも、社外で得た経験をどのように自社で発揮していくのかを内省するワークショップに取り組んでいただきます。

これに加えて、上司や人事向け勉強会、レンタル移籍経験者のコミュニティ化、報告会の企画運営等を通じて、組織全体に越境学習の経験を還元する支援も行っていきます。

では、どのような目的でレンタル移籍が導入されているのでしょうか。

主には、以下のような活用パターンがあります。

・次世代リーダー・経営幹部候補者の育成
次世代リーダー候補・マネジメント層の昇格候補者に対して、経営者視点の獲得や修羅場経験・タフアサインメントの機会として
【レポート】「越境学習」を、経営者育成として活用するための要件とは

・ 新規事業を推進する人材の育成
新しい事業への挑戦に興味を持つ人材の発掘・能力開発・適性判断の場として活用し、価値創造のプロセスを実践的に経験する機会として
参考:【レポート】大企業のイノベーションに「プロパー社員」が必要な理由

・ 研究開発人材、本社人材への事業経験提供
通常は事業開発や顧客から離れた場所で業務を行う研究開発人材やコーポレート人材が、顧客との対話や事業企画などの経験を積む機会として
参考:プレイヤー視点から経営者視点へ。1年間という長期越境だからこそ得られた、事業開発への向き合い方

 

(2)組織の風土改革を促すプログラム「side project」

「side project」は、業務時間の20%を使い、多くの社員をベンチャー企業のプロジェクトに参画させ、個人のキャリア自律や、組織の風土改革を促すプログラムです。レンタル移籍がフルタイムに対して、稼働時間の20%であるため、同時に多くの社員を越境させることができるのが特徴です。

・「これまでやってきたことは無駄じゃなかった」を感じてもらう
参加にあたり、自分が何をしたいのかという「WILL」、何ができるのかという「CAN」を言語化するワークショップを実施し、キャリアの棚卸しを行います。その上で、ベンチャー企業とマッチングを行い、参画するプロジェクトを決定します。自分が培ってきたスキルをベンチャー企業という場所で発揮し、貢献するというプロセスを通じて、自分自身のキャリアに肯定感を持ってもらうと共に、さらなる成長意欲を喚起していきます。

組織に“タイムリーな気づき”を還元することができる
また、本業の稼働時間の“20%だけ”なので、自社の業務とベンチャー企業のプロジェクトを並行して行うことになります。日々の行き来のなかで、タイムリーに気づきを組織に還元することができます。加えて、多くの社員が同時に越境しますので、知識や経験が共有されやすくなり、風土改革に繋がります。
【参考記事】たった3ヶ月でも成果が出る!大企業のスポット人材がベンチャーを変えた

(3) 他流試合でミドル層の意識変革を起こす「outsight」

「outsight」は、他流試合でミドルマネジメント層の意識変革を起こす週1回90分・オンラインのプログラムです。ベンチャー企業が抱える事業課題が「お題」として提示され、ベンチャー経営者・ファシリテーター・参加者が解決策を議論するという形式になっています。ビジネススクールで行われる「ケース」のリアル版といったイメージで、議論を通じて「他流試合」ができることが大きな特徴です。

outsightが提供する3つの「他流試合」によって得られる効果は以下の通りです。

①ベンチャー経営者との他流試合
ベンチャー企業の事業内容を知り、彼らが抱える事業課題に向き合って解決策を考え、フィードバックを受けることになります。このプロセスを通じ、自社とは異なる領域の事業や「経営者の視点」を学び、「仮説思考力」「課題解決力」を伸ばします。

②ファシリテーターとの他流試合
経験豊富なファシリテーターがベンチャー企業との議論をリード。情報の引き出し方など、経営者との対話のあり方が学べます。また、ファシリテーターも解決法を提案し内容を解説するため、発想・思考の「型」が体系的にインプットされます。

③他社人材との他流試合
同じくミドルマネジメント層を中心とした他社人材との意見交換を行ったり、提案内容を参照し合ったりすることで、自身とは異なる視野や視点に気づき、思考の幅を広げていくことができます。


【参考記事】「外を知らない」は通用しない時代に。週1回の他流試合が、経営者育成にもたらすものとは?

このように、さまざまな越境学習プログラムがあり、目的や内容、効果も異なります。
自社が抱える課題や目的を定めた上で実施されることをおすすめします。

 

5.越境学習の効果を高めるためのポイント5つ

最後に。実際に越境学習を導入するとなった場合、どのような基準で越境学習を選ぶと良いのか。効果を高めるために何を意識したらよいのかをまとめました。

ポイント1:越境学習の実施目的を明確にする(組織側)

まずは、なぜ自社に越境学習を導入するのか。越境学習を取り入れることでどのような効果を期待するのか。そうした実施目的を設定する必要があります。

前項目で、越境プログラムを幾つかご紹介をしましたが、期待する効果によって選ぶ越境先・越境期間・経験する内容は変わります。

また、越境学習プログラム単体で実施するやり方もあれば、自社で行っている既存プログラムの一部として実施、もしくは連動させて並行して行うケースもあります。

「他社で導入しているプログラムだから」「実施しやすそうだから」などという理由で導入すると思うような効果が得られないこともありますので、まずは「実施目的」をしっかり定めた上で実施するプログラムを決めることをおすすめします。

ポイント2:越境学習に参加する理由を明確にする(個人側)

同時に越境する個人側も、「そもそも自分は何のために越境するのか」「自分自身が何をやりたいのか」という意思や目的を定めておくことが重要です。

個人が越境学習に興味を持つ最初のきっかけは「面白そう」「外を見たい」といった理由もあると思いますが、実際に行くことが決まった際には、「越境期間中に何を得て、戻ってきた後は何に活かしたいのか」といった、本人のキャリアアップのストーリーを考えておくことがとても大切です。戻った後のことを意識して越境学習を行うことで、より効果が期待できます。

ポイント3:越境人材を活かす機会をつくる

越境学習から戻ってきた後に、「越境人材を活かす機会」を作っておくことも大事なポイントです。”活かす機会”というと、部署異動や新しいポジションを用意するといった大きな話にとらえてしまうかもしれませんが、必ずしもそうではありません。どんな組織でも実現できる仕掛けであり、最も重要なことは、「上司との対話」にあると私たちは考えています。

越境経験者が持ち帰ってくるものは現在の組織にとって異質なものです。異質であるがゆえに意味があるわけですが、そこでは当然ハレーションが起こります。その摩擦に、越境経験者自身が向き合うことが重要で、一緒に異質なものの融合に取り組んでくれる上司の存在がキーになるのです。

ポイント4:組織全体で変わっていく

そもそも越境学習という活動は、社外を見せるという仕組みです。そのため、「そんなことをしたら社員が辞めてしまうのではないか」という懸念を示される方もいらっしゃいます。しかし、実際に私たちのプログラムを通じて越境をした方の離職率は3%程度(復帰1年以内)と、かなり低い数値になっています。

これは、成長機会を提供し応援してくれた組織に対して感謝する、メタ認知力が高まった結果として自分の置かれている環境がいかに恵まれているかということを感じられる、といったことに起因します。つまり、越境を経験した方の多くは、組織に対するエンゲージメントが高まり、それを還元したいという想いを強く持っているケースが多いのです。

だからこそ、越境経験の還元や、組織を変えていくという試みを、越境経験者に委ねるのではなく、上司や同僚、役員層や人事部門など、組織全体で変わっていくという大きなうねりに繋げていくことが重要です。

ポイント5:越境活動を継続し、成長角度を維持する

越境を一度経験したら、あとはまた社内で活動してもらえば良い、というものではありません。越境によって一時的に成長角度が上がります。その角度を維持するためにも、常に外部にアンテナをはり、活動しつづけることで、5年後、10年後にその効果がさらに大きなものとなっていくのです。

そして、組織に越境経験者が一人いれば良いということではありません。むしろ、越境を経験した人は社外にネットワークを有することになりますので、その人材をハブにして、組織全体に越境機会を広めていくことが重要です。

まとめ

ここまで、越境学習について様々な角度から見てきました。
おさらいすると以下の通りです。

 

まとめ①:越境学習は社外経験を通じて人材を育成する手法
まとめ②:越境学習は企業におけるイノベーション創出、個人のキャリア形成の両面に効果を発揮する
まとめ③:越境した人を組織で活かすには目的の明確化・組織全体での取り組み等の工夫が必要

冒頭で申し上げた通り、越境学習の本質は「戻ってくること」であり、「行かせて終わり」ではありません。行く前の準備、行っている間のサポート、そして戻ってからの工夫があってこそ、組織で活かすことができるのです。

ローンディールでは、今回ご紹介した越境学習プログラムだけではなく、越境学習を自社でどのように設計したら良いのか?というご相談や、企業の課題や目的に合わせたプランニングを行っています。「越境学習を何からはじめようか迷っている」という方はぜひお気軽にご相談ください。

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