「手を挙げてみる。たったそれだけで世界は変わる」 オリンパス 澤田亮太さん -後編-


ビジネススピードや業務体制の違いに面食らいながらも、フューチャースタンダードでの業務に対応する澤田さん。せっかくだからという動機の下で「やります!」と手を挙げるうち、コミュニケーションの不安が解消され、仕事に対する新たな心構えが養われていくことに。そして10カ月のレンタル移籍を経て、最終的に獲得したものとは。オリンパスに戻ってからのお話も含めた、後編です。
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仕事への姿勢やスタンスが変化した

─10カ月を振り返ってみて、どのようなことを学べたと感じていますか?

 自発的な行動や責任感の重要性を強く再認識しました。14年もやっていると仕事に慣れ、良くも悪くもルーティンのようになってしまっていたのですが、「私の仕事だから私の責任でやるぞ!」というような情熱を取り戻した感があります。

─その情熱があることで、仕事にどのような影響が現れると思われますか?

 情熱がないと、きっと適当さが顔をのぞかせてくるんです。「リスケ可能なら少々遅れてもしかたない」「言われたのはここまでだから、これ以上クオリティを追求する必要はない」という、事なかれ主義のような。でも、お客様が悩んでいることを正面から捉え、「俺が作るんだ」と情熱をもって当たることができれば、理想に限りなく近い答えを提供できるようになるはず。顧客にとっても当方にとってもプラスになると思うんです。

─その通りですね。

 また、フューチャースタンダードではコンサル業務を学び、提案力を磨くことができました。オリンパスでは直接顧客とやりとりする機会はないのですが、顧客が発表したレポートや論文を読み込んで現場の課題を汲み取り、新しい技術や検査方法を上司に提案してみたいと思っています。

─これまでやられてこなかった取り組みなのですね。

 はい。レンタル移籍を経て、そういう仕事の姿勢やスタンスのところで成長できたと感じています。

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後ろ盾があることに甘えてはいけない

─10カ月という期間はいかがでしたか?

 あっという間でした。次!次!と仕事のスパンがものすごく短かったですから。新しい経験を得て咀嚼している最中に、すぐに次が入ってきて……という感じで。

─一番楽しかったことは?

 最後に手掛けた案件は、特に大きなやりがいを感じました。「SCORER(スコアラー)」のリアルタイム映像自動解析を使って観光客の動向を探ろうというもので、お客様と直接お話しして「こういうのはどうですか?」と提案、検証を進めてからの資料作成、パッケージの納品と、ほぼすべてを一気通貫して担当できたんです。最後の運用だけは移籍終了後になってしまったのと、コロナによって観光業自体が大ダメージを受けてしまったのは残念でしたが、まるっと担当できたことは自信になりましたし、楽しかったですね。

─初めてベンチャー企業に飛び込まれたわけですが、移籍を終えた今、大企業の優位性や懸案点など見えてくる部分はありましたか?

 やはりスピードの遅さはネックだと思いますね。新しいコンピュータを導入しようにも、スペックの見積書などを提出した上であちこちに承認をもらい、納品された部署まで取りに行かないといけません。手順がひとつでも間違うと最初からやり直しですし。フューチャースタンダードでは、ECサイトでボタンをポチッと押すだけでしたから。ただ、大企業はやはり従業員の多さからリカバリーに優れていますし、必要なところにドカッと投資できるのは強みですよね。後ろ盾があるという安心感の中でも仕事できます。

─ただ、その安心感に甘んじてしまってはいけないということですね。

 そうなんです。それで僕は積極性を欠いてしまい、自分自身に漠然とした不満を抱くことになりました。「いい機会だからやろう」「せっかくなら引き受けてみよう」と考えなくても働けてしまいますから。戻った後も、ぬるま湯だと感じることなく、「やるぞ!」と自分を鼓舞していこうと思っています。

提案を届けられれば「勝ち」

─ただ、2020年3月にオリンパスに戻られてから1カ月も経たないうちにコロナ禍による外出自粛要請がありました。

 ええ。新しい取り組みに着手する前に在宅勤務になってしまいました。でも、「コロナだからしょうがないよね」では前と変わりませんから、関連のレポートを読み込んだり顕微鏡のワーキンググループに参加したりと、現状でもできることを進めています。

─すでに行動に移されているんですね。

 最終的にはお客様の要求に応えるだけでなく、さらに次に待ち構えるであろう研究課題にもアプローチできる提案をしていきたいと考えています。顕微鏡のシステム構築に従事する私と、その顕微鏡を実際に利用するお客様の間にはさまざまなレイヤーが存在しているのですが、ひとつでも提案を届けられれば、私の勝ちかなっていうモチベーションで。こうした行動がプラスのサイクルになればビジネスとしてのメリットも高まりますし、新薬の開発やがんの仕組みの究明といった医療にも貢献できますから。

─すばらしいです。

 特に今は、新型コロナウイルスのために世界がひどい有り様になってしまった状況です。自分の力が少しでも医療の進歩に役立てられるよう、これからも「やります!」と手を挙げていければと考えています。

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澤田さんが感じていたという、細々とした不満。ひとつひとつは大したことがなくても、おろそかにはできません。”神は細部に宿る”というように、個々のディテールに気を行き届かせることで全体の完成度は高まるもの。澤田さんは顕微鏡で覗き込むようにディテールに光を当て、自ら行動を起こすことで問題を少しずつ修正できたようです。コミュニケーションの苦手意識もなくなったそうで、今回の取材も終始にぎやかな雰囲気だったのが印象的でした。

Fin

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協力:オリンパス株式会社 / 株式会社フューチャースタンダード
撮影:畑中ヨシカズ 
Interview&Writing:横山博之

 

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