“当事者として”スタートアップとつながる——キヤノンマーケティングジャパンとTechHouse.Worksが実践する、越境型・新規事業開発人材育成のかたち
大企業の中で新規事業の担い手を育てたい。しかし、社内の研修や勉強会には限界がある——。そんな課題を持つ企業が、外の現場で”当事者として働く経験”をどう設計しているか。
CIC Fukuokaで開催されたイベントでは、キヤノンマーケティングジャパン株式会社(以下、キヤノンMJ)とTechHouse.Works株式会社が、ローンディールのside project(業務時間の約20%を使い3ヶ月間スタートアップの事業に参画する越境プログラム)を通じた越境の実践を共有した。
また、side project with MUICによる助成を活用することで、越境への一歩を踏み出しやすくなることも紹介された。
目次
コンピテンシーは「学ぶ」だけでは身につかない——キヤノンMJが越境に期待したもの
キヤノンMJの鈴木氏は、越境施策を導入した理由として「スキルは学べるが、コンピテンシー(行動特性)は実践しないと身につかない」という点を強調した。
社内起業プログラム等で一定の型は学べても、未知の状況で意思決定し、仮説検証を回し、周囲を巻き込みながら前に進める力は、実践の中でしか磨かれない。
新規事業開発に長く取り組む鈴木氏自身も、そうした力を、社内だけで鍛えることには限界があると感じているという。

一方で社内には、業務外活動で得られる学びや成果を、どのように業務に還元していくかを重視する声もあるという。だからこそ鈴木氏は、参画先からのフィードバックも含め、行動特性に近い指標での評価や、成果の見える化が重要であることを訴えた。
受け入れ側が求めるのは“短期の手伝い”ではない——沖岡氏が語る「当事者の継続」が生む価値
TechHouse.Worksの沖岡氏は、スタートアップ側の課題として「技術はあるがPoC止まりになり、大企業との連携が商品化につながりにくい」点を挙げた。
その突破口として重視するのが、最初から大企業と共創する前提で事業を設計すること。そのために必要なのは、外からの“支援者”ではなく、大企業側の人材が当事者として入り続ける関係性だという。
象徴的だったのは「スタートアップ側から大企業に売り込みはしない」という言葉。大企業人材が当事者意識を持って関わり続けることで、現場起点で社内の関心や協力者が広がり、結果として協業が立ち上がっていく。そんな共創のあり方が共有された。
3ヶ月で終わらせない——継続率80%が示した、side projectの“設計思想”
今回、鈴木さんがTechHouse.Worksで取り組むプロジェクトは、新しいB2B向けサービスの戦略開発。仮説検証を繰り返しながら戦略・戦術を組み立て、実行フェーズは、プログラム終了後も継続する前提で計画されている。

プロジェクトのゴールについては、side projectの3ヶ月だけに限定せず、その後の継続も可能な設計としている点は他のプロジェクトでは見られない特徴だ。
TechHouse.Worksでは受け入れ5名中4名が3ヶ月終了後も継続(80%)という結果が出ていることから、沖岡氏はside projectの期間を見極め期間として捉えており、継続の秘訣を「3ヶ月で“異常なまでの当事者意識”を醸成すること」と表現した。
「これを任せる」ではなく「あなたはどうする?」と問いかけ、正解を与えるのではなく本人の意志を引き出す。越境を“外部委託”にしない関わり方が、継続と成果を生む土台になっている。

大企業にとってのside projectとは——週1日×3ヶ月で得られる“実戦の経験値”
side projectは、業務時間の約20%(週1日程度)を使い、3ヶ月間スタートアップのプロジェクトに参画する越境プログラムだ。ポイントは、単なる副業機会ではなく、事業づくりの現場で当事者として意思決定し、仮説検証を回す経験を得られることにある。
鈴木氏が実践して感じているのが、越境では「義務感を排し、自分で取り組んでいる感覚」をつくる工夫も重要である点だ。丸1日を越境にあてる、環境を変えて集中するなど、時間の使い方そのものが“越境の成果”を左右するという感覚も共有された。
side project with MUIC——助成活用が「最初の一歩」を軽くする
今回のイベントでは、関西イノベーションセンター(MUIC Kansai)の崎坂氏からローンディールとのパートナーシップで実現したside project with MUICという形で、助成を活用しながら越境に取り組める選択肢も紹介された。大企業側にとって、越境施策の検討時に論点となりやすいのは「費用」と「社内決裁」。助成を活用できることで、越境のハードルを下げ、意思決定を前に進めやすくなる。
越境は、やってみなければ価値が伝わりにくい。だからこそ、“試せる条件”を整えることが普及の鍵になる。助成は単なるコスト削減ではなく、越境のトライアルを実現するための仕組みとして機能する。

おわりに
越境の価値は、抽象論ではなく当事者の実践から立ち上がる。大企業が次の成長の担い手を育てるために、社外の現場に踏み出す——side projectは、その“最初の一歩”を実戦の学びに変える。さらにside project with MUICの助成
活用により、越境を検討する企業が踏み出しやすい環境も整いつつある。
助成を活用した参加(side project with MUIC)に関するご相談は、ローンディールまでお問い合わせください。
※ 本記事は、MUIC Kansai主催イベント「キヤノンマーケティングジャパンが実践する「戦略的越境」〜人材育成を事業成長に変える、大手×スタートアップ共創の実装論〜」(2026年5月21日開催)の内容をもとに、株式会社ローンディールが編集・作成したものです。
