コラム・インタビュー

【成績優秀者の思考プロセスを公開!】「伝わる提案」はどう生まれる?週1回・90分の他流試合「outsight」

「outsight」は、大企業人材がベンチャー企業の経営課題に向き合う実践型の越境プログラムです。

2週間ごとにベンチャー企業から提示される「お題(事業課題)」に対し、参加者は解決策を議論し、提案まで行います。ベンチャー経営者・ファシリテーター・他社の参加者との他流試合を経験しながら、正解のない課題に向き合う「高度な思考力」を身につけることができるプログラムで、これまでに80社(※2026年8月時点)が参加しています。

半年に一度、過去の参加者が集うオンラインイベント「オフサイト」も実施しています。その中では、優秀な解決策を提案した方々が自身の「思考プロセス」を共有。参加者一人ひとりが考え方を振り返り、アップデートする機会になっています。

今回は、2026年8月26日に開催した「オフサイト」を振り返り、2026年1月〜6月に好成績を収めた小野薬品工業株式会社の谷口直哉さんと、日東電工株式会社の堺谷賢一さんが、どのように課題を捉え、解決策を磨いたのかをご紹介します。

「アイデアを出す」前に、解くべき課題を見極める
成績優秀者の個性豊かな思考プロセス


実際に「outsight」に参加した方々は、どのような思考プロセスで解決策を導き出したのでしょうか。今回、思考プロセスを共有してくださった二人に共通していたのは、最初に浮かんだアイデアをそのまま提案しないことでした。では、それぞれどのように課題を捉え、提案を磨いていったのでしょうか。

● CASE1:小野薬品工業株式会社・谷口直哉さん


一人目は、小野薬品工業株式会社の谷口直哉さん。MRとして10年以上にわたり、医薬品の適正使用に関する情報提供に携わり、専門性を磨いてきました。そうした経験を土台に、より幅広い視点や発想を取り入れることで、提案の可能性をさらに広げたいと考えるようになったそうです。 新しい視点や発想に触れる機会を求め、outsightへの参加を決めました。

参加前は、お題を目にすると、すぐに「どのようなアイデアを出すか」を考えていたという谷口さん。しかし、回を重ねる中で、その順番が変わりました。まず考えるようになったのは、「本当に解くべき課題は何か」「なぜ、その課題が起きているのか」ということです。表面に現れている問題をそのまま解こうとせず、背景や原因を掘り下げてから、初めてアイデアを考えるようになりました。

谷口さんは、提案の方向性を考えるうえで軸にしていたのが、「現在の事業とのつながり」と「提供価値の新しさ」です。新しさだけを追えば、実行が難しい提案になりかねません。一方、現在の事業とのつながりを重視しすぎると、既存の取り組みと変わらなくなります。登壇者の考え方や企業サイトの雰囲気、活用できるリソース、目指す事業規模なども踏まえながら、実現可能性と新規性のバランスが取れるポイントを探っていたそうです。

また、谷口さんは、自身を次々と新しいアイデアが浮かぶタイプではないと分析し、一から奇抜な案を生み出そうとするのではなく、企業が抱える課題と別の社会課題を掛け合わせることで、アイデアを広げていました。ある回で提示されたのは、手入れされずに残された杉林を、事業としてどのように活用するかという課題です。谷口さんは、そこに墓の維持や承継に悩む人が増えている「墓じまい」の問題を掛け合わせ、杉林を里山型の樹木葬として活用する案を提案しました。森林整備の新たな収益源をつくりながら、墓の承継に悩む人にも選択肢を提供する。二つの課題を一つの事業で解決しようとした点が、評価につながりました。

課題の深掘りや提案文の整理の際には、発想を広げたり論点を整理したりするために生成AIも活用しています。生成AIは考えるためのパートナーの一つです。疑問に感じたことを一つずつ問い、返ってきた内容をうのみにせず、自分でも確認しながら検討を深めています。最後にどの課題を選び、どのアイデアを提案するか判断するのは自分自身です。
 
さらに、300字の提案にまとめる際には、タイトルの分かりやすさと、一読しただけで内容が伝わる構成にもこだわりました。早めに一度形にし、時間を置いて読み直すことも大切にしていたそうです。「頭に余裕がないと駄目。じっくり考えることでよい提案ができる。」という実感から、考えるための余白そのものが提案の質を左右すると振り返りました。

● CASE2:日東電工株式会社・堺谷賢一さん


二人目は、日東電工株式会社の堺谷賢一さん。同社では、次世代経営人材の育成を目的として、部長クラス以上の人財を選抜し、社外の経営課題に取り組む越境学習プログラムへ派遣しています。堺谷さんもその一環として、outsightに参加しました。ベンチャー企業がどのように課題解決へ向き合うのかを学び、新規事業を生み出す力を磨きたいと考えていました。
 
堺谷さんが解決策を考える際に重視していたのは、事前資料だけで判断しないことです。登壇企業のWebサイトを必ず確認し、事業内容や経営者のメッセージだけでなく、配色やデザイン、情報の見せ方まで丁寧に見ていました。そこから、その企業が何を強調し、何を大切にしているのかを読み取ろうとしたのです。

参加当初は、検討の途中でコンセプトやアイデアが何度も変わり、事業としての具体性まで書き切れないことがあったそうです。そこで堺谷さんは、300字の提案文に「コンセプト」「ターゲット」「事業規模」の三つを必ず入れる型をつくりました。アイデアの面白さだけで終わらせず、誰が利用するのか、どのように収益を生むのか、どの程度の事業になり得るのかまで示すためです。
 
この視点には、現在トルコ・イスタンブールに駐在し、現地法人の経営に携わっている経験も生きています。限られた人員や資金の中で何を優先するかを考える立場だからこそ、ベンチャー経営者が「面白いか」だけでなく「本当に事業になるか」が切実な問いであることを実感していました。
 
また、堺谷さんは、トルコで暮らしていること自体を自身の強みとして提案に取り入れました。登壇企業から脱脂粉乳の新たな使い道を問われた回では、トルコのヨーグルト文化に着目しました。トルコでは、ヨーグルトはそのまま食べるだけでなく、さまざまな料理に使われています。スーパーマーケットにも多くの種類が並ぶほど、日々の生活に根付いた食品です。堺谷さんは、こうした現地の食習慣を手がかりに、脱脂粉乳の活用方法を考えました。日本にいる参加者には見えにくい生活実感を持ち込んだことで、ほかの人とは異なる選択肢を提示できたとのことです。
 
生成AIは、主に調査と裏取りに活用しました。アイデアの核はできるだけ自分で考えたうえで、競合企業や周辺プレーヤー、関連する規制・法律などを調べ、実現可能性を補強します。生成AIにアイデアそのものを任せるのではなく、自分の案が事業として成立するかを確かめる役割を持たせていたのです。

他者の思考に触れることが、次の行動を変えていく


半年に一度開催するオフサイトでは、優れた提案そのものだけではなく、そこに至るまでの「思考プロセス」を共有しています。今回ご紹介したお2人のように、同じ課題に取り組んでいても、どこに注目し、何を調べ、どう提案につなげるかは人それぞれです。他者の思考の過程を知ることで、自分の思考の癖や、これまで見落としていた視点に気づくきっかけになります。

今回の参加者からも、「目の前の相手を知ることの大切さを学んだ」「他流試合の機会は社外だけでなく、社内にもあると気づいた」といった声が寄せられました。

普段のoutsightで他流試合を重ね、半年に一度、他者の思考から学び、自分自身の考え方を振り返る。オフサイトは、日々の実践で得た経験を次の行動につなげるための、節目となる機会です。

outsightでは、ベンチャー企業のリアルな経営課題に向き合い、経営者から直接フィードバックを受ける他流試合を通じて、自分なりの思考プロセスを磨く機会を提供しています。正解のない課題に向き合う力を高めたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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