現状を変えたくてベンチャーに飛び込んだ2ヶ月半のリアル。〜ベンチャーの最前線で実感した、自ら考え、動き出す楽しさ〜
2025年度から、三菱HCキャピタル株式会社(以下、MHC)で導入している「レンタル移籍」。1年間という期限つきでベンチャー企業に参画し、新天地で新たな経験を積む制度です。社員が社外での実践経験を通じて視野や経験の幅を広げるとともに、自らのキャリアについて考え、自身の成長や次の挑戦につなげる機会として位置付けています。2026年4月から「レンタル移籍」に挑戦している移籍者に、移籍先のベンチャーの方と一緒にご登場いただき、現在の業務や経験、その中で得た気づきなどについて伺いました。
今回の記事でご登場いただくのは、新卒で入社し、10年目を迎えた川口賢太郎(かわぐち・けんたろう)さん。国内でのレンタル事業の企画・推進、半導体製造企業向けリース営業、海外カスタマー事業の企画立案など、さまざまな業務を経験し、自身のキャリアを棚卸しする中で「もっと顧客に近い立場で事業開発に挑戦したい」という思いが強くなり、「レンタル移籍」への参加を決めたそうです。
移籍先は、*ミッションクリティカル領域へのAI導入をめざす株式会社コーピー。移籍から2ヶ月半が経ったタイミングで得た経験や今後期待していることを、川口さんとコーピーの事業開発責任者・石井亮(いしい・りょう)さんに伺います。
*ミッションクリティカル領域とは:会社の成長や事業継続に欠かせない重要領域のこと。
(※本記事は2026年6月に取材したものです)
目次
手触り感のある業務に触れ、事業開発の知見を得るためのレンタル移籍
ーー川口さんは、これまでに事業企画や市場開拓に携わってきたんですね。
川口:はい。ゼロイチで何かを立ち上げるというよりは、新しく立ち上がった事業をスケールさせていく業務が多かったです。
最初の配属先が、半導体業界の専門知識や経験を持ったキャリア採用の方々が中心となって事業をつくり上げていくミッションを持った部署だったこともあり、新しいものを広めていく面白さを入社当初に知ることができたんです。そこを軸として、さまざまな経験を積んできました。
ーーその中で「レンタル移籍」に立候補されたのは、何かきっかけがあったのですか。
川口:1年ほど前にキャリアを振り返る機会があり、「何が楽しかったかな」「この先、何をやりたいかな」と考えたときに、事業開発が思い浮かびました。ただ、そのためには、私はまだまだ顧客に向き合う現場での第一線の経験が足りないので、現場に近い手触り感のある業務に挑戦したいと思ったんです。
同じ頃に「レンタル移籍」があることを知り、社外での経験を積むのであれば早いほうがいいと思い、すぐに当時の上司に相談しました。ありがたいことに、背中を押していただけたんです。

ーー10年近く勤めたMHCを飛び出し、外に出ることに不安はなかったですか。
川口:私はもともと楽観的で、常に「なんとかなる」という思いで取り組むタイプなので、不安はあまりなかったです(笑)。先に移籍を経験された方の話を伺う機会もあり、移籍中のことを想像しやすかったので、安心して立候補できました。
石井:川口さんを見ていると、「大企業から移籍してきた」というマインドはあまり感じないんですよね。積極的に取り組んでもらっています。
ーー石井さんも、川口さんのチャレンジ精神を感じ取っているのですね。移籍先は、どのように選んでいきましたか。
川口:移籍候補のベンチャー企業を大きく分けると「ゼロイチで立ち上げるフェーズ」と「スケールさせていくフェーズ」のいずれかにある中で、私は後者で経験を積みたいと考えていました。
また、せっかく他業界に飛び込むなら、将来性のある先端領域の専門的な知識や経験を得て帰りたいという思いもあり、テクノロジー系の企業の方々と面談させていただきました。
その中で出会ったのが、コーピー代表の山元浩平さんです。エンジニアとしての経験や知識の豊富さに加え、経営や営業の最前線に立つ山元さんの言葉には、一つひとつ重みがあり、引き込まれました。特に、ミッションクリティカル領域へのAI普及に懸ける強い想いに共感し、その挑戦に当事者として関われることに大きな魅力を感じ、コーピーを志望しました。
ーー石井さんは川口さんの上司として一緒に働かれているかと思います。移籍が始まってまだ2ヶ月半ですが、川口さんの第一印象はいかがでしたか。

石井:抜け漏れがなく、しっかりしている印象で、今も変わっていません。ビジネスの進め方が整理されているのは、大企業での経験からくるものだろうなって感じますね。安心して仕事を任せられます。
業界が変わっても「顧客と向き合う姿勢」に違いはない
ーー大企業からベンチャーに移籍し、ギャップに感じたことや苦労はありましたか。
川口:顧客や案件の規模感や労働環境に対するギャップはあまり感じなかったのですが、業務で使用するツールが異なるので、慣れるまでに2週間程度はかかりました(苦笑)。
一方で、組織文化には違いを感じています。先ほど石井さんに「抜け漏れがない」と言っていただきましたが、裏を返すと「とにかく動いてみる」「スピード感を意識する」というベンチャーならではの文化と私のスタイルはまだ少し距離があるのかなと。どちらがいい悪いではなく、移籍中はベンチャーのスタイルを意識していきたいと思っています。
石井:確かに、最初はツールの違いに苦労しているように感じましたが、今はツールにも当社の雰囲気にも慣れてくれたようで、まったく問題なく取り組んでくれています。
ーーちなみに、川口さんはどのような業務を担当されていますか。
川口:GTM(Go-to-Market)という、市場開拓に関する業務全般を担当しています。マーケティングはもちろん、案件を獲得する営業や案件化した後の伴走などにも携わっています。
コーピーは、製造業や社会インフラ領域を中心に、課題に合わせて最適なAIソリューションを提供しています。決まった型がない分、こうした無形商材の営業の難しさを痛感しているところです。目に見える製品がない中で、顧客がまだ気づいていない活用法を考えて提案し、納得感につなげていくのは本当に難しいなと。
石井:顧客によって活用の仕方も変わるので、難しいところですよね。AIや顧客の業界に関する情報などは、どのようにキャッチアップしていますか。
川口:顧客の情報に関しては、基本的にはAIやネットで情報収集しつつ、過去のつながりなどを振り返ることも多いです。
AI関連はとにかく流れが早いので、過去の蓄積というよりは、今現在の情報を追うことが重要だと感じています。ありがたいことにコーピーではSlackや普段の会話で最新の情報が共有されるので、そこから吸収し、わからないことは調べるという地道な方法でインプットしています。
ーー日々、アップデートしているイメージですね。移籍開始から2ヶ月半が経ち、得られた気付きについても教えてください。
川口:MHCとコーピーは異なる業界ですが、顧客と向き合う際に心掛けることは変わらないと気付きました。「顧客がやりたいこと」と「我々ができること」を整理して、自分の中で軸を持って接するという点は同じだと感じています。
ーー顧客と接する中で、MHCでの経験が活きた部分はありましたか。
川口:コーピーの顧客は大企業が多いのですが、決裁までのプロセスをなんとなく想像できるという点は、大企業にいたからこそだと思います。先方のペースに合わせて提案ができているのかなと。
一方で、私自身が大企業の顧客となり、大企業とやり取りする側の気持ちも理解できたように思います。MHCに戻ってからは、顧客の気持ちや立場も考えながら接することができるのではないかと感じています。
個々の裁量が大きいベンチャーならではの「とにかく動いてみる」というマインド
ーーこれから残り10ヶ月の移籍期間で、石井さんから川口さんに期待していることはありますか。
石井:どれだけ売上につなげられるかといったところですね。一般的にベンチャーは“新しいことにチャレンジする企業”というイメージがあると思いますが、同時に売上を立てなければいけないというシビアな面もあります。その部分の経験を積んでもらえたら、互いにとってプラスになると思います。

(左は株式会社コーピー 事業開発責任者の石井さん、右が移籍者の川口さん)
川口:私としても、コーピーの素晴らしいソリューションをいかにスケールさせていくか、という点に尽力したい思いがあります。チームの皆さんと同じ目標、同じ視点を持って、売上を獲得していきたいです。
ーー期待に応えてくれそうですね。そんな川口さんの変化は感じていますか。
石井:当初は「これ、やっていいのかな」みたいな遠慮があったと思うんですが、今は「ここまでやってみよう」とガンガン動いてくれているように感じます。僕やメンバーが指導したわけではなく、自己学習されているので、今後さらに加速するでしょうね。
お願いしている業務の範囲も広いので、どんどん率先して取り組んでほしいです。川口さんにのびのび活動してもらうためにも、僕が許容する覚悟を持たないといけないなと(笑)。
川口:自覚がない部分でしたが、私が動けるようになったのは、チーム全体に「考えていることをアクションに移す」という文化が根付いているからだと思います。すぐ近くにメンバーがいて相談しやすい環境でもあるので、仕事の仕方も含めてアドバイスをいただいています。
ーー川口さんの存在や変化が、会社やチームにもたらしている影響などはありますか。
石井:川口さんのように幅広い業務を掛け持つポジションは、社内では特殊なんです。だからこそ、川口さんがチーム間の架け橋となって調整してくれて、物事が円滑に進むようになったと感じています。非常に助かっていますよ。
「自分で考えて行動するほうがやりがいがある」その思いが新天地での“成長”につながる
ーー「レンタル移籍」では*メンターが付き、定期的な1on1なども行いますが、川口さんにとってはどのような存在ですか。
*メンターとは:移籍期間中に移籍者の成長・活動を支援する伴走者のこと。
川口:メンターはIT業界ですごいキャリアを歩まれている方で、私の今の業務に近い経験もされているので、具体的な相談にも客観的で冷静な意見をいただけて、とても助けられています。安心感を与えてくれるような存在ですね。
ーー大きなつまずきはなさそうですが、それでも不安や葛藤はありますよね。石井さんからフォローされることはありますか。
石井:僕としては、川口さんに気を使わないようにしているんですよ。レンタル移籍者だからと意識して「これとこれをやってください」とお願いする形を取ると壁ができてしまうというか、移籍の意味がなくなる気がするんです。だからこそ他のメンバーと変わりなく接しています。
川口:ありがたいですね。個人的にも、決まったことをやるより自分で考えて行動するほうがやりがいを感じられるので、コーピーの環境は自分に合っていると感じています。

ーー「レンタル移籍」という場には、どのような人材がマッチしそうでしょうか。
石井:「今の職場が縦社会すぎる」「身動きが取りにくい」など、制約があってもどかしいと感じている人は向いていると思います。ベンチャーという自由な環境で、やりたいことを実現できるかと。自由を求めると責任も伴いますが、1年という期限があるので、実力を試すには持ってこいの制度だと思いますね。
川口:石井さんがおっしゃる通り、「自由にやりたいことと向き合いたい」「力を試したい」という方に合っていると思います。1年間、社外の刺激的な環境で集中して取り組めるので、よりスピーディーに経験の幅を広げられると実感しています。私自身は「顧客に近い立場で事業開発に挑戦したい」という思いで手を挙げましたが、現場で顧客と向き合う中で着任からまだ2か月半ほどですが、本当にたくさんの経験が積めています。少しでも挑戦してみたい気持ちがある人はぜひ積極的にチャレンジしてみて欲しいです!
Fin
協力:三菱HCキャピタル株式会社 / 株式会社コーピー
インタビュー・文:有竹 亮介
