自律する人は、どうすれば増える? NTTドコモ×旭化成に聞く「人が動き出す組織」のつくり方
「自律人材を育てたいけれど、なかなか行動につながらない」「手挙げ型の施策を用意しても、参加するのはいつも同じ人」――。
自律人材や次世代リーダーの育成に取り組む中で、そんな課題を感じている人事・人材開発担当者も多いのではないでしょうか。
2026年7月23日、株式会社ローンディールは「自律共創リーダーの見つけ方、育て方。― NTTドコモ×旭化成、人と組織を動かす実践者に聞く90分」を開催しました。
登壇したのは、株式会社NTTドコモ 総務人事部 キャリアデザイン室 室長の室住篤子氏と、旭化成株式会社 人事部 人財・組織開発室 室長の三木祐史氏。モデレーターはローンディール共同代表の大川陽介が務めました。
それぞれの取り組み紹介から始まり、後半は互いの実践への質問や参加者からの問いも交えたクロストークへ。「自律」をどう捉え、どう行動につなげるのか。3人の対話から見えてきたものをレポートします。
目次
「ひとりで学ぶって、つらいし続かない」
最初に登壇した三木祐史氏が紹介したのは、旭化成が人財戦略で掲げる「終身成長」と「共創力」です。

三木氏が考えるキャリア自律とは、自分のやりたいことだけを追求することではありません。自分の希望と、組織や周囲からの期待。その両方を踏まえて自分なりに意味づけし、仕事や学びに取り組んでいくことだといいます。
そのために旭化成が大切にしているのが、「みんなで学ぶ」という考え方です。

三木: 自律的に学ぶと聞くと、結構孤独な感じがするんですよね。ひとりで学ぶって、つらいし続かない。隣の誰かが頑張っている、あそこが何かやっていそうだ、あいつが面白いと言っていた。そんな刺激があると、「自分もやってみようかな」と思える。みんなの力で自律を支援することが、会社として目指す姿なんじゃないかと考えました。
旭化成では、従来の階層別研修から、他者と一緒に学び、刺激を受け合う「ラーニングコミュニティ」への転換を進めています。
三木氏の講演を聞いた大川も、この言葉に反応しました。
大川: いやー、これは面白いですね。「自律って孤独だよね」というのは、なんかわかる気がします。「自分で自律して」と言われる感覚に対して、むしろコミュニティがあるからこそ自律する、というのは、僕もとても共感します。
参加者にもチャットへの書き込みを呼びかけ、「他の人がどう感じたかを見ながら、自分との違いを学ぶ。これもまさにコミュニティラーニングですよね」と大川。講演で語られたテーマが、そのままイベントの場でも実践されるような展開になりました。
「満足度90%だから、来年もやろう」でいいのか?
続いて、室住篤子氏がNTTドコモのキャリア自律支援について紹介しました。

NTTドコモでは、目標を定める段階から、自分を磨き、実際にキャリアに挑戦するところまで、さまざまな施策を用意しています。

特徴的なのは、施策を実施するだけでなく、「本当に行動につながったのか」をデータで捉えようとしていることです。
室住氏の話を聞いた三木氏は、クロストークに入ると開口一番、率直な感想を口にしました。
三木: 情報量がいっぱい入ってきて、「めっちゃすげーな」という感覚で聞いていました(笑)。特にすごいと思ったのが、定量化、可視化ですね。キャリア自律の必要性を9割くらいの人が認識している。一方で、行動できているのは約50%。このギャップをちゃんと可視化しているのがすごいなと。

そこから話題は、「人材育成の効果をどう測るのか」へと広がっていきます。
室住: アンケートで「満足だった」が90何%だから、「じゃあ来年もやりましょう」って、それだとその後に続かないですよね。本当にそうなのか、と。私たちは「何のためにアンケートを取るんだっけ?」「その先に生かすためには、どんな内容を聞けばよいんだっけ?」という観点で設問を考えています。
分析も一度で答えが出るものではなく、何度も繰り返しながら、行動や生産性との関係を探ってきたといいます。
すると三木氏も、
三木: めちゃくちゃ共感しますし、勉強になります。うちもなるべく研修の満足度ではなく、自己効力感や有意義度といった、その後の行動につながる指標を重視しています。
と応じました。
異なる会社で試行錯誤してきた2人だからこそ、「研修をやった」「満足してもらった」で終わらせないという共通の問題意識が見えてきました。
研修だけじゃない。「コミュニティ」を意図してつくる
クロストークでは、「人を育てるために何を用意するか」という話も深まりました。
三木氏は旭化成の取り組みについて、研修などのコンテンツだけではなく、コミュニティそのものを設計する重要性を語ります。
それを受け、大川はこう話しました。
大川: 人材育成というと、「どんな研修をやろう」「どんなプログラムにしよう」と、どうしても中身に目が向きがちですよね。でも、研修を用意するだけではなく、人と人がつながり、互いに学び合えるコミュニティを意図的につくっていく。それも人材育成の大事な視点なんだなと思いました。
自律を求めるからこそ、一人にしない。
誰かの挑戦が見えたり、考えを話せる仲間がいたりすることが、次の行動を生み出す。両社の実践を重ねながら、そんな議論が交わされました。
手挙げ型だと、「いつも同じ人」にならない?
ここで、参加者から実践的な質問が寄せられます。
大川: 手挙げ型の施策は、もともと意欲の高い方が集まりやすい面もあると思います。まだ手を挙げていない「挑戦者予備軍」に対しては、どんな働きかけをしていますか? 本人なのか、職場なのか、そのあたりも教えてください。
三木氏は、旭化成で選択・公募型の育成施策を増やした際の取り組みを紹介しました。
三木: 本人に伝えるだけではなくて、上司側にもしっかり伝えています。上司がキャリア面談の中で「これを受けてみてはどう?」とコミュニケーションできるようにすることがベスト。本人が受けたいだけではなく、ちゃんと受け入れられる土壌をつくりながら応募してもらう。両面の周知と、興味を喚起するコンテンツをちゃんとつくる。ベーシックですけれど、大事だと思っています。
大川: そもそも「知らない」って人、多いですからね。いやー、素晴らしい。基本をしっかり、ということですね。室住さんはいかがですか?
室住: うちでは「キャリフェス」と呼んでいる取り組みがあります。1か月間をフェスのような期間にして、社員が業務の合間に好きなタイミングで好きなコンテンツを聞くことができます。毎日いろいろな施策を紹介したり、実際に参加した社員に「参加したらこんな経験を得たよ」と登壇して発信してもらったりしています。社員が自分のWILLを起点に学び、行動につなげる「docomo academy」も、そうした機会の一つとして紹介しています。
「この日だけでも参加すれば、いろいろ聞けるよ」という場をつくり、まず知ってもらう。そこから「この施策をやってみようかな」「そんなものがあるんだ」と思ってもらうきっかけをつくっているといいます。
制度をつくって待つのではなく、まず知ってもらう。そして周囲からも背中を押せる状態をつくる。ここでも両社それぞれの工夫が重なりました。
「仕組みはいっぱいある。でも使えていない」
対話がさらに盛り上がったのが、タレントマネジメントの話題です。
NTTドコモが社員のスキルや経験を可視化する取り組みを紹介すると、三木氏は思わず、
三木: スキル体系の考え方は、めちゃくちゃすごいなあ、ドコモさん、と思いながら聞いていました。
大川: 蓄積を感じますよね。
一方、室住氏から返ってきたのは、意外にも「仕組みがあるだけではダメ」という話でした。
室住: 仕組みはいっぱいあるけど、何にも使えていません、みたいなのはずっと「よくない、よくない」と言ってきました。我々の特徴としては、総務人事部の中にTech担当をつくったんです。数年前にこれをつくったことがとても結構大きかったですね。
大川: すぐ相談できますもんね。
人事施策、データ、テクノロジー、コミュニティ。話題は次々と広がり、予定していた時間を超えて対話が続きました。
自律共創リーダーを育てるための「正解」が一つ示されたわけではありません。それでも、2社の実践を行き来しながら見えてきたのは、自律を本人の意欲だけに委ねず、学び合える関係や、行動につながる仕組みをどうつくるかという問いでした。
「自律してほしい」と社員に求める前に、自分たちの組織には、誰かの挑戦に触れたり、小さく一歩を踏み出したりできる環境があるだろうか。
そんな問いを持ち帰る時間となりました。

「docomo academy」7期、今秋スタート
イベントでも紹介された「docomo academy」は、2026年秋から始まる7期より、ドコモグループ以外の社外企業にも本格的に門戸を広げます。
ローンディールも共創パートナーとして参画し、NTTドコモと共同で企画・設計・運用を実施。企業の垣根を越えて多様な人材が集い、参加者が自身のWILL(意志)を起点に小さな行動や越境を重ね、組織や社会へ挑戦を広げていく6か月間の「越境実践型」プログラムとして展開します。
開催期間は2026年10月頃〜2027年3月頃。
最大500名のうち、社外参加枠200名を募集します。
企業規模を問わず、法人単位で参加できます。
申込締切:2026年9月18日(金)
「docomo academy」7期の詳細・お申し込みはこちら
ーー<参考情報>ーー
「docomo academy」7期 募集概要
開催期間:2026年10月頃〜2027年3月頃(約6か月間)
開催日時:毎週金曜夕方、2〜3時間程度
実施形式:オンライン(Zoom)
募集枠:最大500名(NTTドコモグループ300名、社外参加企業200名)
対象者:自社や社会をより良くしたいという意志や想いを持つ方。新規事業担当者に限らず、営業、企画、技術、管理部門、若手、管理職など幅広い層が対象です。
応募条件:所属企業の承認を得ていること。法人単位でのお申し込みとなります。また、ZoomおよびSlackを利用できる環境が必要です。
参加費:60万円/人(人数割引あり)
申込締切:2026年9月18日(金)
お申込み・お問い合わせ:[https://dcma7.loandeal.jp/]

